18.作戦会議
やらかしたぁぁぁぁぁぁ「何が大切で特別なライバル」だよ。今思い出すと無茶苦茶恥ずかしいな!! あの時の雰囲気もあってクサいセリフをはいてしまった。というか、ライバルってなんだよ!! いや、まあ、ライバルなんだけどさ。でもさ、あのタイミングで……里香が弱っているときに気持ちを伝えたりするのは違う気がするんだよな。里香の家についた俺は洗面台を借りて顔を洗い、ルーティーンをする。よし、落ち着いたぞ。
リビングに入ると、中華料理の刺激的な匂いが俺の鼻腔をくすぐる。ウーバーイーツ便利だよな。食卓には美味しそうな回鍋肉とほかほかのご飯と中華スープが並べられている。部活の後に何も食べていないこともあって空腹がやばい。だが並ぶ料理を見て少し違和感を覚えた。
「あれ? 餃子はないんだな、里香この店の餃子好きだろ、いつも頼んでアホみたいに食べてたじゃないか」
「失礼な奴だな。人を食いしん坊みたいに言うんじゃない。今日はそういう気分じゃなかったんだよ。ここの回鍋肉は絶品だし、それだけでいいかなって……さっきいい雰囲気だったし、もしもの時に口臭いとか思われた嫌だし……」
俺の言葉に里香はお茶を注ぎながら唇を尖らせて答える。なぜだろう、まだこいつ少し顔が赤い気がするんだが……というか後半小声だったから全然声が聞こえなかったんだが聞き返したらなんか怒られそうな気がする。まあ、そういう気分の時もあるんだろう。餃子たべたかったんだけどな。とにかく今は作戦会議だ。
「それで、灰崎君の成績ってどれくらいなんだ? 特進クラスだから結構上位だとは思うんだが」
「さあ? 冷静に考えて名前もロクに覚えてないやつの順位何て覚えてるわけないだろ」
そりゃあ、そうか、でも、こいつは俺の順位は覚えてくれているんだよな。そう思うと少し嬉しい。というか里香が灰崎君に興味が無さすぎてちょっと可哀そうになってきた。でも、今はそんなことを言っている場合ではない。まあ、灰崎の成績はバスケ部の友人にでも聞けばわかるだろう。
「テストは金曜日だからあと一週間か、テスト週間で放課後は部活ないから勉強には付き合ってもらうぞ」
「当たり前じゃないか、大和がよければお昼も付き合うよ。それにしても学年一位の天才美少女に勉強を毎日みてもらえるなんて大和は嬉しいだろ」
「美少女ねぇ……」
「ふーん、そういうことをいうのか、前に顔と頭だけはいいって言ってたじゃないか。私の顔は大和の好みなんだろ? 素直に喜べよ」
そう言って、彼女は意地の悪い笑みを浮かべる。実際は顔だけじゃなくて性格も好みなんだけどな。それにずっと一緒にいれるというのは素直に嬉しい。それはさておきだ。これまでの里香の勉強はいわば基礎力を上げるための勉強だった。今回はテスト用にある程度範囲を絞る必要があるだろう。
「じゃあ、あとはどう勉強するかだな、国語は今まで通りでよいとして問題は数学と英語だ。里香的には今回どこらへんが出ると思う?」
「え? そんなのテスト範囲を全部覚えればいいじゃないか? 英語の文法なんて教科書を一回見れば大体わかるし単語は常に覚えとけっていってるだろ、あと、数学何て方程式の基礎を覚えればあとは応用でなんとかなるじゃないか」
想定外だ!! こいつ天才すぎて何の参考にもならないな!! 最近催眠術使って着たり、メイド服着たりしているから忘れていたけどスペックが違いすぎる。きょとんとしている里香に対して、俺は絶望するしかなかった。とりあえず、これもバスケ部の友人にも相談しようと思う俺であった。
「御馳走様、後かたずけは俺がやるよ」
「今日は別に作ったわけじゃないからね、私も手伝うよ」
そうやって俺達は二人で台所に並んで、食器を洗う。とりあえず、なんか同棲カップルみたいだなぁと思っていると、何やら里香がちょっとにやけながらぼそりと呟いた。それは俺がちょうど水道を止めたタイミングだったこともあって、やたらとはっきりと聞こえた。
「もしも、一緒に暮らしたらこんな風に過ごすのかな。なんか幸せだな……」
「里香って時々恥ずかしい事を言うよな……」
「え……今のは……うう……さっき、大和がかっこいい事を言ったからだからだよ……責任とれよな……」
俺は顔を真っ赤にしながらつい軽口を叩いてしまう。里香も本当に無意識でつぶやいたようで、俺の返事に驚いたように目を見開いた後、顔を真っ赤にしてにらみつけるきた。でも、なんだろう、その顔はすごい可愛らしかった。そしてそのまま、俺達は見つめあう。彼女の表情はいつもの意地の悪い笑顔ではない、拗ねたように唇を尖らしているけれど、その表情はまるで何かを求めているようで……責任か……ああ、わかっているぞ、お前の言いたいことはな。
「里香、俺は絶対灰崎君に勝つからな!! かっこつけた責任はとるぞ」
「ああ、もうこいつは……いや、はっきり言わない私も人の事は言えないんだけど……」
「そういや、珍しくリップクリーム塗ってるけど、何かあったのか?」
「うるさい、そんなことはいいからテスト勉強の事を考えろよ……なんでこいつはどうでもいい事に気づくのに気が利かないんだ……」
結局その日は今後の方針をはなしているうちに撫子もやってきたので、三人で雑談して解散となったのだが、帰り際になぜか拗ねた顔の里香にヘタレとか言われてしまった。でもさ、告白とかそういうのは勝負に勝ってからだ。くだらない俺のエゴっていうのはわかっているけれど……ちゃんと勝負に勝って、里香の隣にふさわしいんだって証明してから先に進みたいんだよ。
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