第3話
王立学園 ローゼンバルグ
貴族、平民、関係なく実力があれば誰でも入学が出来る、王家が建てた学園。
俺とリディは17歳で3年になる。
来年には卒業だ。
そして、メディアーナは2年生だ。
今年は……
何か、良くない何かが起きる予感だ。
俺は、あのお茶会の日から、リディの家の事情を調べた。
影を使って……
1週間という短い間だったが、色々な事が分かった。こんな短い間で分かることを、なぜ俺は今まで調べなかったのだろうか。
まず、リディが表情をなくした理由。
それは、1年ほど前からのようだった。
俺は公務があるし、リディは王妃教育があってお互い忙しく、会って話す機会など年に数回程度だった。だから、不仲説が出てしまった上に、メディアーナが付き纏ってくるため、浮気説まで出てしまったのだ。
政略結婚とはいえ、俺達の仲は悪くなかったのに……何故かと思えば、メディアーナと彼女の両親が率先して噂を流していたそうだ。
リディの無表情は、彼女の家の事情によるものだった。メディアーナを俺とくっつけたい両親と、彼女をよく思わない人達によって毎日のように悪意ある言葉と虐めにより表情をなくしたそうだ。
(はぁ、俺は何も気付かなかった。表情が無くなり始めたのは1年前……それまでは笑っていたのか…最低だ、婚約者なのに)
影の報告書を読みながら、俺は考える。
メディアーナの豹変か……
確かに俺の記憶にある彼女は、あんな女じゃなかった気がする。
しかも、リディに対し『悪役令嬢』と言った言葉も引っかかる。
そして自分は『ヒロイン』これに一体なんの意味が?
学園での彼女は、俺の側近や教師にも手を出していると聞く。まぁ、体の関係にはなっていないようだが…時間の問題だろうな。
彼女の心の声だが、あれからもずっと聞こえてくる。姿が見えていれば、離れていても問題ないらしい。
やはり、あの不思議な子猫が原因としか思えない。お茶や菓子はリディも食べていたし、そのリディには俺の心の声が聞こえてないみたいだったからな。
でも、お陰でリディの本心を知ることが出来た。神の悪戯でも、気まぐれでも感謝しかない。
明日から学園生活が始まる。
リディの王妃教育は万事問題なく、あと1年で終わるそうだ。この1年が過ぎれば、俺とリディは晴れて結婚する事になる。
とても気分が良く、顔がにやける。
執務室の扉をノックして、数人の側近が入ってきた。
「なんだ?」
表情を引き締めようとするが、中々に難しい。そのせいで、バレた。
「何か、いい事がありましたか?ヴェルグ殿下」
「ヴェル、最近、楽しそうだよねぇリディアーナ様と何かありました?」
アーキスの鋭い発言に一瞬ギクッとした。
それを見逃す側近達ではなかったがため、勝手に話が進んでしまった。
「……おい」
「やっぱり、リディアーナ様の事かぁ。綺麗で美しく、それでいて可憐さを併せ持つ麗しき
「おい」
「馬鹿言え、お前みたいな軽薄な男なんぞ見向きもされんだろ」
「馬鹿なことを言ってないで仕事をしなさい」
「お前だって、気になるだろうエルバート」
「おい!」
少し大きめの声で止めに入れば、みなが俺に注目した。
「リディの事は何も言うな」
何故か最後は恥ずかしくて、尻すぼみしてしまった。顔が熱くなるのが自分でわかった。
あの日からリディのことを考えると、すぐこうなる。
彼女の事で、こんな風になった事など今まで1度だってなかったのに……。
「エルバート、アーキス、ラフィン、お前たちに頼みがある」
真剣な顔に戻り側近の名を呼べば、私に向き直り膝を付き
「はっ」
「リディアーナを守れ」
この一言だけで、彼らには伝わるだろう。
ただの護衛では無い、彼女に危害を加える全てから守れと言った事を。
彼女とて社交界に出れば、悪意ある言葉など日常茶飯事だ言う事は理解してるだろうし、それに対抗する術も身につけてるだろう。
俺のこの行為はただの自己満足だ。
それでも、俺は守りたいんだ。
彼女の本心を聞いたあの日から。
「はっ、殿下の御心のままに」
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