χορός
試金
第1部 九天不可測
01 糾歌前夜
そんなことをして何になる、という例の言葉が、襲いかかってきそうになる、のを、
そんなんで
飲酒運転で殺された人はいっぱいいる。しかし喫煙運転で殺された人は有史以来いままで一人もいない。だから喫煙は飲酒よりも善良で健康的で公序良俗にかなった
醤油派か塩胡椒派かなんてしゃあしい問答を繰り広げるやつらが未だにいるが、疑いの余地なくブラックペッパーが正解である。そもそも卵は味をつけて喰うものじゃない。カラーひよこじゃあるまいし。プラスチック製の食器をスポンジでこする音はひよこのさえずりに似て……いない。まだ耳が醒めていないか。かけるか何か。いや、そんな時間はない。それより
mic check 1, 2. Yes yes y'all, and you don't stop. Keep on y'all, and you don't stop. MC93 in da place 2 B.
キュウゾウ。それはわたしの名前じゃない。わたし以外の、どこかの誰かの名前だ。この名前で出すのはわたしのものじゃない。わたしの栄誉はそこにない。それでいい、それでこそいい。誰かに届くとは限らない。しかしきっと別のものにはなってくれる、ついにわたしのものだとは言えなくなって、顔も名前すらも失って。
わたしの言葉は誰のものでもない。誰が言ったのでもいいんだ。もちろん、あなたでも。あなたが一体どこの誰をさすのかさえ、わからなくても。誰の言葉でもいい。本当に大事なことは、誰が言ったっていいはずなんだ。いつの時代のどこの偉人たちの名言集だとか、くそくらえだ。そんなものを集めて何になる。私は何も言わない、誰が言ってもいいこと以外は。こうしてまた始められる、誰かが偶然にやめたことの続きを。続きを始める。始めよう。
変転の詩 (The song NEVER remains the same)
第30回 執筆:
当時三四歳の大江健三郎は、『なぜ詩ではなく小説を書くか』と題された随筆において、「詩の言葉の能力の不在によって、ついに詩とはならなかったもの」を「あらためて小説の言葉によってとらえなおすことをめざして様ざまな努力をした」ことについて語っている。引用しよう、「小説を読みおえたあと、閉じられた本は、落花生の殻の堆積のごときものである。ところが詩は、真にそれを読んだ者にとっては言葉の実質と機能がそのままひとかたまりの錘となって、肉体=魂のうちにしっかりくいこんでしまうのである。そこで、詩には、読みおえるということがない。いったん人間が詩に遭遇すると、その出会いはつねに進行中である」。
端的に詩を「燃えるトゲ」に
まことに、驚嘆すべき洞察である。問いの立て方自体が非凡であるのはもちろんのこと、小説の言葉に安らぐことへの峻拒をもって「魂の死である狂気にたちむかうための支え」として詩を位置づけるとは。このエッセイが西暦にして一九六九年、まさに七年前にキューバ危機を
お送りしたデモは。「お送りした」はおかしいだろう。自分の行為に美化語を使ってどうする。せめて「お送り致しました」「お送り申し上げました」だ。はい、拝聴しました。いかがでした。実務的な面でひとつよろしいですか。仮歌はありましたが、オケはこれから手直しが入りますか。いえ、あれで完成形です。なるほど。それ以外は特には。そうですか、では詞のコンセプトについて、なにかご不明な点などありますか。企画書には目を通しました。そのうえでいくつか質問が。どうぞ。この「とろ~りさらさわ触感」というのは、どのような意味ですか。ええと、そのままの意味です。そのままとは。あの、あくまでキャッチコピーというか。これ自体に大した意味はないですよ。キャッチコピーにこそ意味がなくてはならないと思うのですが。差支えなければ、このコピーライティングを担当された方のお名前を教えていただけますか。真意を問い合わせたいので。でなければ、作詞家としてもイメージが掴めかねます。あのね、
母性的。優しい。女性らしく。
こんなに言葉が雑な奴らのために、私は言葉を使わなくちゃいけないのか。
ごめんバイトくん四人くらいもらっていい? おーあのさ、あそこのさ、一九番ゲートの階段の上のとこあるでしょ? そうそう。あっこにイントレ建てるからさ、先にこの台車のジャッキ全部並べといてほしい。ジャッキって何ですか? えーとね、あーそこの君きのうもいたよね? はい。じゃあ君あと三人連れてね、あっこに。通路に並べていいからそうそう。よろしく。
だってほら、日本で初めて野球場でのコンサートやったのって西城秀樹じゃんね。さいじょうひできって誰ですか? えっ知らない? 聴いたことない? うわー、世代だなあ。
エイムズのバイトさーん。全部で
コンサートがあるたびに人工芝
電話くらい
本題。なに。さっさと本題入ろうよ、電話で話す時みたいに。ねむいんですーこっちはー。すう、と一呼吸置きながら、右手の薬指で顎筋をつうとなぞっている。あっめんどくさい話になる
あなたのね、作ったもの──このあなたというのは、
率直に訊くけど。
とっぴょうしが、なさすぎるよ。笑わずに言えたことをほめてやりたい。よばれたって誰に。いかなきゃいけないって何処にさ。それにあれを作ったのはキュウゾウであって、わたしじゃない。持ち帰ってもらう必要があるってさっき言ったでしょう。その言い方もわかんねえんだよ。なんで普通に言わない。と、やってしまった。これは、言っちゃいけないことなのに。普通に言え、わかりやすく説明しろ、という類の、
ふう、と一息。どう応えるべきかな。うん、やっぱこう言うしかないな。買いかぶりすぎだよ。買いかぶりっていうのは適切かもね。私はあなたの、一切金にならない詞を褒めてるわけだから。ぶははは、いきなり言葉尻おっかけまわすな。でもそういうこと、逆転してるの、ここでは、あなたのと──わかったわかった。嬉しいよ、すごいって言ってくれるのは。でもさ、それとさ、
私は具体的に市場価値のことを言ってるの。もしね、私が書いてるような詞が見向きもされなくなって、あなたのような詞ばかりが価値を持つようになったら、どうする。そんな日は永遠に来ないから安心していい。これは仮定の話だから何を言ってもいい。ああもう、これだからな。こういう癖がある人だ。自分の価値を減殺するために無闇に仮定法を使う。悪い癖、とは言えない。しかしそれは一種の押し売りじゃないか、自分を下げるために相手を上げるなんて。あまつさえ、自分しか持ってない才能を相手に見出してあなたは私より優れているなんて言うんだからたまらない。
じゃあ。お互いの饒舌をまず
沈黙。
もう書けない、って思ったの。語調が急に変わるのは、今日何度目かだな。もう書くわけにはいかないって思ったの、今まで通りには。作詞家やめるってこと。正確には違う。でも今まで通りの書き方を今すぐやめなきゃいけない、って、あなたの詞を読んでたら……キュウゾウのね。キュウゾウは──
その「なぜ」を
この時間帯なら大通りよりも区役所通りのほうがタクシー拾いやすいから、と大雑把に道筋を示し、見送る。がたん、とドアの音が妙に重く感じる、のを、疲れのせいに、する。ぬるくなった湯呑みの内容物を喉に流し、ベッドに倒れ込む。
あ、ひとつ大事なこと言い忘れたな。もう書くわけにはいかないって思った、今まで通りには、ってさ。それだよ、
まず、基本的なことから確認するね。近代小説の始まりを告げた『ドン・キホーテ』。あの小説は明らかに騎士道物語のパロディとして書かれてる。παρω の δια、並行する言葉として。知っての通り、セルバンテスは騎士道物語に引導を渡すためにあれを書いた。金輪際あんな馬鹿らしいものに惹かれる人がいなくなるように、って。でも、セルバンテスは明らかに騎士を愛してたよね。そう。貶めて嘲笑して突き放したはずの騎士に対して、それでも隠しようのない何かが
そもそも、騎士道小説の源流である
そうして南仏におけるトゥルバドゥールの事跡は灰燼に帰したけど、文体は死ぬことなく残った。一三世紀、ムルシア生まれのイブン・アラビーという名のスーフィーが、女性への愛を唄ったの。抒情詩集『渇望の解釈者』、神と現象界をつなぐ普遍的
ちょっと寄り道しましょうか。そもそもなぜダンテは『神曲』をトスカーナ方言で書いたと思う? 帝国の真正なる言語、ラテン語で書くこともできたはずなのに。彼はラテン一神教の栄光をうたっていた。しかし、自分の作品は俗語で書いた。結果としてローマは後に世俗国家として分裂してしまうことになる。つまりダンテは愛する世界を自分自身の言葉で引き裂いた。なんだか、すごく似てるね。セルバンテスと。
話を戻しましょうか。まあね、西欧人でも日本人でも、イスラームとユダヤを都合よく無視したうえでヨーロッパこそがギリシア=ローマの正当な後継者だって前提で話を進めてる人間って、だいたい馬鹿だよ。九世紀から一二世紀にかけての大翻訳活動がなければ、ギリシア=ローマの叡智は伝えられることなく潰えていた。一二世紀までのヨーロッパ共通語ってアラビア語だったんだから。そしてさっき言ったように、南仏はアラビアとの特異的な混淆地点として、トゥルバドゥールの「愛」を産み育てた。ダンテに着想をもたらし、セルバンテスに憎悪をすら抱かせたあの「愛」を。そして「愛」を伝えるための手段は歌だった。
だからね、歴史的に考えて、小説の文体の基礎をなすのは散文よりもむしろ、歌だってことになる。詩ではいけないし、かといって完全な歌になってしまうことも許されないという、謎の闘いが始まったの。謎って言っちゃっていいの。謎だよ。こればかりは合理的に説明がつかない。だって、小説って未だに体系的な学問の対象にされたことがないんだよ。そりゃそうだよ、体系的な学問てのは一八世紀以降のゲルマンだけの自家薬籠だもの。かわいそうなヘーゲル。彼がなぜあれほど詩を、歌を、小説を、つまり藝術を侮蔑したか、わかるでしょ。怖かったんだよ。それは彼の体系の果てにあるはずのゲルマン的国家とは無縁のものだから。混ざっちゃってるんだから、ラテンだけじゃない、イスラームとユダヤの血までもが。トゥルバドゥールの歌がそこに鳴り響いたら、ヨーロッパなるものがそもそも混血だったってことがばれちゃうんだから。だからあれほどまでに詩を、歌を、小説を、侮蔑した。
ジョイスはこのことを完璧に理解してたよ。彼が最初に出した詩集の名前を思い出してみればいい。最後に出したあの小説の名前も。あんなに音楽してた作家っていないんだよ。小説は詩歌と無縁ではありえなくて、しかし詩歌そのものであることもできない、そんな背中合わせの苦闘のありさまを一番よく解ってた人だった。そのうえで彼は書いた。何を。神話から逆算された人々の卑小な営みを、そして世界史を。ダンテとヴィーコの影響から出発した、しかし彼らの昇天にも循環にも
まとめようか。ダンテ、セルバンテス、ジョイス。新たな文学の形態が生まれるとき、そこには必ず新たな世界が生まれている。歴史的にも、政治的にも。そして小説の文体とはとりもなおさず歌であり、その響もしは現体制の維持者たちに恐怖をもたらし、ついには殺し殺される、血みどろの戦争さえも引き起こしうる。南仏のトゥルバドゥールたちがアルビジョア十字軍に虐殺されたように。
だからね、
そうだった。いつもこうだった。熱に浮かされたようなことを、しかし異様に実証的な歴史的事実とともに、老婆が編み針でひとつひとつ毛糸を織り上げるようにして。
だから、わたしは、振り落とされたんだな。ついていけなかった。結局のところ、わたし自身は歌にはなれなかったから。覚悟が足りなかったんだよ。そうだ、思えばあのときあんな問いを投げた時点で、すでに運命は決まってたんだ。
理論の、ていうか、理屈の話はわかったよ。でもさ、
あの問いに彼女がぶつけた答えの意味を、わたしは未だに理解できない。そもそも答えですらなかったから。質問文に質問文で答えるのは反則だ。しかし、これは誰の言葉だったか──「答えから問いを生み出しうる者だけが、藝術家と呼ばれるに値する」。そうだ、
『桃太郎』って、凄い小説だと思わない?
あとは台車まとめて全部入口に逃がしといて。トラック来たら、チラシ折りのバイトくん半分動かして出してもらうから。あーい。
ねむいなー。だからってカフェインに頼りたくないしな。うわ、コカコーラもエナジードリンク出したのか。ガラナ入りコーラて。なんかみんな必死だなー、あ、すいません。ぶつかっただけ、だよね。あれ? 見憶えが。この子、昨日の。ファンカデリックの。
ねえさん! ねえさん? 今日も入ってたんすね! いやー、良かったす! うん、仕事だからね。
と、挨拶のような雑談のような
あの、
おつかれーっす。えとね君ね、休憩行っていいよ。え? いいのいいの二回めで。キョードーの人の指示ですって言えばいいから。こういうのはね、上手にサボんなきゃいけないの。はい。ういっす。通路あっちね。
開演前のこの感じって何だろうね。とくに興味あるグループでもないのにな。そわそわしてるうちにこう、そう、こーやって始まるんだよね。さあ仕事だぞ漁火ちゃん、こっからは見えないけど。て、うわ。いきなりこんなんか。キック割れまくってんじゃん。お。おお、オールドスクールだねえ。かっけー。ファーサイドっぽい。ああ、やっぱ掛け合いやってくれるクルーって最高だな。 Yes yes y'all, あはは。そこ客に唄わすんかい。
えー、こんなRケリーっぽい独唱バラードもやるんだ。レベルたっか。いまヒップホップとR&Bが一番よくできる国だとは聞いてたけど、ここまでかあ。お、あ、これ漁火ちゃんじゃんね。うはははは、弾くねえ。安直かもしれないけど、オリアンティっぽい。うめー。これ原曲にあるパートなのかな。気になる。
あはい、いま二階です。いや、はい。はい戻りますんで。んーアンコールまでは無理だったか。君、そこの。うんもう少ししたらお客さん出てくるからドアお願いね。トイレ退席のひとの案内もね、よろしく。ちくしょー、音だけだってのにかーっこよかったなー。これは漁火ちゃんグッジョブだろー。撤収前に挨拶する時間あるかな。あるわけないな。メールで言うしかないかー。今から案文練っとこ。
件名:ねえさんです。
どうもどうも。覚えてるかな、先日名刺いただいたキョードーのリュウです。ライブ、おつかれさまでした!無事終わってよかったね。音漏れしか聞こえなかったけど、えらいかっこよかったです。映像できたら送ってくれるって話だったけど、ようつべであのグループの曲いくつか聴いてみたら思った以上によくて、もう普通に買おうかな。
きのうは音楽業界でやっていけてる人のお話聞けてうれしかったです。やっぱりかっこいいね。わたしもう20年くらい前のヒップホップしか聴いてなくて、最近の音楽にはすっかり疎くなっちゃったんで、なんかイイのあったら教えてね。
それじゃあ。
追伸:ほんと手指の事故には気をつけてね。わたしの友達にも交通事故に遭って演奏できなくなったドラマーとか、いるから。
件名:Re:ねえさんです。
メールありがとうございます!
うっかり名前すらきき忘れてたってことにいま気づきました(ू˃̣̣̣̣̣̣︿˂̣̣̣̣̣̣ ू)リュウねえさんもおつかれさまです。音漏れだとしても演奏聴いてもらえてうれしいです( *ˊᵕˋ)✩‧₊˚
きのうは打ち上げで飲みすぎちゃって、さっき起きたんですけど、あんなに音楽のことばっか考えてる人たちの仕事に携われてよかったなーってほんとに思います。これから博多の専門学校でクリニック仕事ですけど、あたしもあれくらい力を与えられたらいいなー。
リュウねえさんヒップホップお好きなんですね。日本のヒップホップもいけますか?もしご存知だったら恥ずかしいんですけど、キュウゾウって名前知ってます?まだあんま有名じゃないトラックメイカーでラッパーなんですけど、ヤバいですよ!あたし、さいきん移動中いつもこれ聴いてます。サウンドクラウドのアドレス貼っときますね。ねえさん絶対これ好きですよ!
喫煙所で吸いたくない日ってのは、どうしてこう定期的に来るかね。人ぎらいなわけないんだけどな。
お。何。人だかり。オクトーバーフェス、には早すぎるよな。中洲ジャズ? へー、今年から
出演:オバラゴーハラバンド。知らないな。オバラとゴーハラどっちが名字でどっちが名前なんだろ。どっちもか。ホール&オーツ的な。デュラン・デュラン的な。違うか。て、え、何これ。ステージ、しか、ないじゃん。えっ、あれがオバラゴーハラバンド? デュオなの? ジャ、ズ……? フォークじゃんか。うわーぬるい拍手。えっステージ降りちゃったよ。おわり? おつかれーよかったよって、何それ。ありがとございましたあ。さあ次の挑戦者あ、いらっしゃいませんかあ。なんだこれは。はーいあたし! あたし行くっすー。あ。れ。ねえ漁さん火じゃなちゃいんすじゃかーん!! 何してんの。あ今日もサポート? 出るの? いや違うすけど、ねえさん今日この会場の設営すか? 違うけど。飯屋さがしてたらここに来ちゃって、とか言うのは流石に憚られる。タバコ休憩すか。うん、まあね。外でしか吸いたくないときあるじゃん。そすか。あたし吸わないんでわからんすけど。そうだ折角なんで観てってくださいよ、いまオープンマイクやってるんすよ。オープンマイク? 自由参加ステージ、ってことだよね。そうす。なんとかバンドが出るってタイムテーブルにはあるけど。その予定だったらしいすけど、なんかバンマスの人が空港でしょっぴかれたらしくて。なんで。大麻所持で。マジか。なんで知ってるの。じつはあたしあのバンドのドラマーと知り合いで、その縁で観に来たんすけど、来たらしょぼーんとしてて、そんで経緯訊いたっす。で、結局バンドに支払われる予定だったギャラが丸々浮いて、代演お願いしようにも前の出演者みんなハネてて、これもうどうしようもないってんで、こうなったらオープンマイクで終演予定時刻までやって、この場に集まった観客の人気投票で一位になった
ビートならあるじゃない。なんでいんの。いつからいたの。とこっちが問う前から、
使い方。どうすれば。やるのか。やるのか? たしかにわたしが作った曲だ。構造は心得てる……けども。これはキュウゾウの曲だろう、そこに乗る詞は、わたしのものじゃない。そんなものを公の場でやっていいのか。オープンマイクだとしてもそれは──いや、逆か。わたしものじゃないから、好きにやっていい。わたしのものじゃないなら、それは──
漁火ちゃん。はい! ギターでね、『Hit It and Quit It』のリフをね……
お、準備整いましたか? それでは八組目の挑戦者! お名前をお願いします! と、ふいの
ふしぎだな。わたしの部屋の中でしか鳴ってなかった音楽が、こんなところで。いや、違うか。それは常に、起こっているか。誰かのイヤホンの中で、ラップトップの上で、あるいは音源すら無くても鼻歌で──そうだ、この曲のヴァースはこう始まる──It goes 1, 2, 3, 4,
あ。やば終わりかた決めてなかった、と思った瞬間に
あれなんの曲? シャザムしても出てこない。ファンク? ヒップホップ? 直接訊いたら。キュウゾウでしょ。の、カバーでしょ。でも声似すぎじゃん? 本、人? 無いだろ。えっ男でしょキュウゾウって。どう聴いても違うだろ。そもそもサンクラのプロフィールに female って書いてあったろ。うそ? 書いてないよ。キュウゾウの曲のリミックス勝手に上げてるアカウントでしょそれ。そうだっけ。なんか
ねえさん、キュウゾウだったんすか……?
これ、歓声か。そうか。ステージに立ったら、こう、なるのか。やっちゃったのか。漁火ちゃんと目を合わせられない、から、いきおい
そういうことか。
お前、誰だ。
客席から。誰かの声だ。問われて然るべき当たり前の。そうか、君も、他の誰であってもいい者としてここに来たんだな。わたしとおなじように。誰であってもいい。そうだな。そうあっては、答えないわけにはいかない。
MC93 in da house.
休憩時間中に何やってんだお前。すいません。いや、休憩時間中だからいいじゃないですか。よくねえよ。撤収作業前にひとステージ終えてくるスタッフがどこにいる。はい。そうですよね。
ところで、ほんとにお前なのかこれ。ポリカーボネート製のスマートフォンケース、の中の画面に、インスタグラムの動画が明滅している。画角は揺れまくり音声は割れまくりの動画でも、その映像が
ああ、バズってるくさい、ですか。バズってるって何だ。わだいになってる的な。この「いいね」ってのの数からしたら相当なんじゃねえのか。そうですね、いっぱいついてますね。まさか撮られてるとは思ってなくて。客席見えてなかったのか。まあ……わたし集中しすぎると周りが見えなくなるつうか……知ってるよ。フォークリフトの運転見てりゃわかる。そんなに事故りそうな運転してますか。まあな。普段からな。
で、どうなりますかわたし。クビですか。しねえけどよ。そんかし、ひとつ訊きたいことがある。はい、どうぞ。っんー、と、電子タバコのカートリッジを灰皿に沈めながら
本当にとか言われても困ります。初めはこんな感じ、このまま。だって、歌にした時点で、それはもうわたしの言葉じゃないです。責任持たなくていいってことか。違います。誰かを傷つけるかもしれない、ひどい勘違いをさせてしまうかもしれない、って意味では責任は持たなくちゃいけない。でも、わたしが持ちたくないと思ってるのは、責任じゃなくて著作権のほうなんです。ますますわからないって顔。知るもんか。叩き込む。つくってて──書いてて、唄ってて、これは絶対にわたしがつくったものじゃないな、こんなことできるはずがないな、もうわたしのものとは言えないな、って瞬間が、必ずあるものなんです。みんながみんなそうかは知りませんけど、少なくともわたしにはあります。ふん、それで。だから、だから──唄ってしまったということは信じてないってことだし、でも信じてなきゃ唄いようがないってことです。弾切れ。沈黙。飛躍かな。飛躍してるよなこれ。唄いようがないってことです、これに対して、なぜって問われたら、もう答えられないな。幸いにして、古市さんはそれ以上詰めはしなかった。わっかんねえ。ぐーっと伸びをしながら。すいません、ふふっ。何笑ってんだお前。すいません、ふっ、ふふ。いやあ、ばかなことやったなと思って。そうだな。ばかだな。はい。ふうっ。
そんなんだから金貯まんねえんだろ、って言われた。まあね。おん。確かね、
明日の
しかしまー、あー、一日休み前夜のひとり飲みってのはどうしてこう至福かねー。チルだねー。自由の勝利。飲もうぜガンガン。仕事のメール返しは明日でいいよね。あもう
うわあ。
こういう時、
【受話】。
お前だろ。お前あれだろ。平田だろお前。プロレスネタ通じる生徒がいなくて寂しくって電話かけてきたんですか先生。違うわ。お前、インスタでえらい出回ってる動画のやつ、あれお前だろ。知ーりーまーせん。どこかの誰かが撮って上げた映像の責任なんかわたし取ーれーまーせん。なーに知らばっくれようか俺の名前勝手に使いよってからに。お前の名前、じゃ、ねーよ! わたしの
はあっ、と携帯電話越しに
ふうっ、とまた溜息。とりあえず、元気そうだな。うん。どっちがどっちを気遣ってんだか。まあ、あれとつるんでた頃より声も明るくなったし……よかったよ。心配してなかったと言ったら、嘘になるよ正直。重いよ急に。そしてどんだけ深いんだよ傷が。言っとくけど、
このふうっ、はたぶん呆れなんだろうな。それでいいよ。お互いに呆れて突き放しあえるくらいが。ところでこれ、何だっけ。何の話なんだっけ。
でもさ。何。お前がどんな音楽やってるにしてもさ。うん。歌詞、「
通話時間9:48。うわ、そんなに話したか。こんなグダグダな長電話したの久しぶりだな。
件名:なるはやで
おつかれさまです。
ねえさん調子どうですか?特定されたり身バレしたりしてますか?あたしは福岡旅行の先々で特定されまくってます!ただ、あれのおかげで新規のレコーディング仕事が8件くらい来たので、結果的にはおいしかったです♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪あと、賞金の30万はローンの支払いに消えました。
で、今日なんですが、天神のヤマハの教室に遊び行ったんですけど、そこで知り合った人がいまして。名刺もらったんですけど、どうもあたしとねえさんとこくぶさんと直接話したいってことらしいんですよ。とりあえず名刺の写メつけときます。知ってます?有名なひとなのかな?あたしは稼げそうな話なら乗るつもりですけど、ねえさんとこくぶさんの意向教えてくれたらありがたいです。
つまりね、以上のことを踏まえてね、僕はディオニュシア大祭を政治的制度として、今の日本に復活させたいと思ってるの!
と、聞き取れた。聞き取れたが意味はまったくわからない。言葉遣いが乱雑なわけじゃない、発音も明瞭としている、表情もにこやかで友好的に話す人の言っていることがまったく理解できないという事態は、率直に言って怖い。
そうですか。と、こちらとしては言うしかなくなる。どうしようか
RyuDaMadafaka の発言:
とりあえず検索したけど、Dyslexiconって会社の、今度できる日本支社?の代表取締役らしいよ。なんの会社かねこれ。
xxISRBxx の発言:
著作権管理? とはちょっと違う、なんかのデータの取り扱い、みたいなこと言ってました。
HakaruK の発言:
著作権じゃなくて、世界中の楽曲に関するデータベースの入力と管理を単独で行ってる会社。創業はシンガポールだったかな。
RyuDaMadafaka の発言:
おーあs
RyuDaMadafaka の発言:
おーさすが業界人。
HakaruK の発言:
名前くらいは聞いたことあるでしょう? 半年くらい前に、 Dyslexicon の製作した MWM ってデータベースが Spotify に売却されたってニュースになってたでしょう。米国ドル換算で15億、だったかな。
xxISRBxx の発言:
MWMってどういうシステムですか?
HakaruK の発言:
システムというか、流通している音源すべてのパーソナルデータ網羅を目的とするデータベース。たとえば、著作権保護のみを担う ASCAP のデータベースには作詞・作曲・編曲者名の記録義務しかないけど、 MWM にはレコーディングに参加したミュージシャン、レコーディング・ミキシング・マスタリングに参与したエンジニア、サンプリングソースの権利保持者、サンプリングソースのサンプリングソースの権利保持者、サンプリングソースのサンプリングソースの楽曲のレコーディングで使用されたとされている機材の品番、さらにはそれらの楽曲に対して起こされた過去の訴訟まで、無限の項目がある。つまり制作過程とか法的処理とかゴシップとか、著作権以外の情報もメタデータとして収容されるデータベースってこと。
xxISRBxx の発言:
それがなんでSpotifyni
xxISRBxx の発言:
なんでSpotifyに売れたんですか?
HakaruK の発言:
ブラウジング効果を導入して聴取スタイル自体の刷新を図った、というのが大方の意見。
xxISRBxx の発言:
ええと、ブラウジング効果って。
HakaruK の発言:
複数の書架を漫然と渉猟していた利用者が、主に偶然によって、自分では思いもかけなかった資料に行き着くこと。図書館学用語。サブスクリプションで音楽を聴く行為自体が、検索検索また検索で、とっくにマンネリだったでしょう。そのアクセスの様式自体を刷新するためにうってつけのデータベースが、 MWM という名前で既にあったってわけ。そりゃ買うでしょう。
RyuDaMadafaka の発言:
つまりあれか。ハプニングを起きやすくしたってことか。
HakaruK の発言:
簡単に言えばそう。
xxISRBxx の発言:
じゃあ、音源管理を職種とするIT企業、って見ていいわけですよね?まともなかいしゃ?
HakaruK の発言:
音源管理というか、ほとんど文献学に近いけどね。企業としてはまともと見ていいと思う。というか、悪評の立ちようがないものねこんな業種。
RyuDaMadafaka の発言:
なんでその代表取締役が天神にいたんだろうねえ。
HakaruK の発言:
むしろ東京で会うよりも至当でしょう。福岡は東京より大陸や半島に近いのだし。もし東南アジアから東アジアの市場に取り入りたいなら、その玄関口は地理的に福岡ということになるでしょう。空港から市街地にも近いしね。
RyuDaMadafaka の発言:
東インド会社みたいじゃん。
HakaruK の発言:
それは長崎。
xxISRBxx の発言:
まとめていいですか?じゃ、面白そうだしとりあえず会ってみるってことでいいですか?場所と時間はこっちで指定していいらしいんで。国府さん、明日のろくじに出発ですよね?そのにさんじかんまえに空港の店で落ち合う、ってことでいいですか?
HakaruK の発言:
PM4時頃なら問題ないと思う。あと「國分」。
RyuDaMadafaka の発言:
わたしもそれでいいよ。あしたまた連絡とろうか。ま、あんま期待せずにゆるく行こうよ。よっぽどヤバそうな人がきたら通報すればいいんだしさ。
果たしてヤバそうな人が来たのだが、その質は通報して済むような安易なものではなかった。
名前はもう考えてあるの!
なるほど。私としては一通り飲み込めました。ふたりは? キラーパスやめろ心臓に悪い。あたしもだいたいわかったす! アガるほうが絶対イイし、そのアガりをもう社会の? 政治の? ほうまで持っていきたいってことっすよね? 正確には、歌や踊りがそもそも社会的で政治的なものなんであって、そうじゃないと考えるのはやめようぜってことよ。それを大々的に打ち出すイベントを、世界規模でいま開催中ってこと。なるほどお。いまの会話だけだとふつうの音楽人みたいだな。ねえさんいかがっすか? え。わかるだろォーッ? わかります、わかりますけども、その
どう思う?
杜 琴璽
なんて読むんだよお。「もり きんじ」すかねえ。日本人名ではないでしょう。中文か、あるいはサンスクリット語源の東南アジア系言語に無理やり漢字の音を当てたか。そもそも名刺渡したらふつう名乗るよなあ。ふつうの人ではなかったすよ。まあね、単に狂ってる人なら簡単なんだけどなあ。だってIT企業の日本支社の代表取締役っすよ。それで問題なくやれてるわけでしょ。うーん。少なくとも、今この国で起業だベンチャーだグローバルだと息巻いてるタイプの人間と比べたら、胡散臭さは微弱なくらいだったけどね。そうかあ? これに参加して、たとえ肝心のイベント運営が大失敗したところで、私たちに累が及ぶことは無いわけでしょう? 契約上。いや、まだそれ読んでないけど……。
ていうかさ。
なんか、流れで、これからわたしたち三人が同じクルーとしてやっていくみたいな感じになってるけど。
そうでしょう。
そうっすよ。
いいのかよ。わたしが独りで勝手にやってただけだよ、MC93として。批評的にも興行的にも成功なんて目指してないよ。そんなノリのやつに乗っかっていいのかよ。
愚問。何日か前に話したばかりでしょう。もう同じではいられない、って。
沈黙。
同じことだよ。
でも、私は乗るって決めた。いつまでもここに留まっていられるわけがないんだから。そのために会いに来たんだから。乗るでしょう? あなたも。
もちろんっす! デカいことできそーなのがアガるし、なにより
沈黙。
あなたはどうなの。
どうなの、っていうか。いやね──いいんだけど、面白いと思うけど。ひとつだけ、気になることがある。
何。
似過ぎてるんだよ。あの人が言ってたこと、数年前に
沈黙。
ふじらって、誰すか。
沈黙。
だからね、
憶えてたとはね。
忘れられるもんじゃないしねえ。
歌と言葉にかけられている抑圧を解放して、この世界を覆す。確かに似てるかも。だからといってね、あの
沈黙。
ああ。これか。この状態か。
『桃太郎』って、凄い小説だと思わない?
そうだね。ようやくあの言葉の意味がわかったよ。歩いてたらついてくる、ってわけだ。きびだんご持って歩いてさえいたら、家来はついてくる。てことは、わたしら今から鬼を
ねえ、
つまりあなたに刻印されている姓は、かつて九州南部から奄美・琉球にかけての地帯で、東シナ海・太平洋の両方にひらけた文化の混淆が在ったことを示しているの。そのことを忘れないでね。島津による琉球への侵入は西暦でいえば一六〇九年、クロムウェルのアイルランド侵略と同時期。そして二次大戦以降のアイルランドで何が持ち上がったか、さらに今スコットランドで何が企てられているか、その反動としてイングランドで何が起こっているか。この島国の状況と引き比べて、具体的に考えてみたらいい。そうすればわかるはず、この島には雑多な血がいっぱい混ざっていて、正当で高貴な血統なんてひとつもなくて、そんな正しさ尊さを振り回すやつらが設えた統治なんて、いくらでも覆しようがあるってことが。
変転の詩 (The song NEVER remains the same)
最終回 執筆:
皆さんこんにちは。突然ですが本コラム、今回で最終回となりました。もちろん上層部の判断などではなく、私本人から直接お願いしてこのような運びとなりました。せっかくの機会ですので、今までを振り返りつつ、いつもよりざっくばらんな感じで書いてみたいと思います。
まず事務的な告知から。本コラムがスモール出版様から書籍化されることになりました。といっても私は、書籍化に際しての作業には一切携わりません。つまりゲラを直す気もなく、既出の原稿をどのように編集しどのように掲載するかも全て編集部に一任するということです。何をいい加減なと思われるかもしれませんが、印税の受取先も私個人ではなくMME本社の口座にする条件で契約したとまでバラしてしまえば、おそらく
随分ぶっちゃけるなとお思いでしょうし、あるいはここまでの文面で既にお察しの方もおられるでしょう。ですので、もう直截に書きます。私、
本コラムの連載中には、多数の反響を頂戴いたしました。社内の同業者から手厳しい意見を寄せられることは少なくありませんでしたし、回し読みで本コラムに目を通していただいた社外の読者から好意的な賛辞を寄せられることも、また少なくありませんでした。私の貧しい筆業には不相応な光栄であったと、今更ながらそう思います。
その過程で、私は社内外の同業者(つまり作詞家)の
が、ひとつだけ申し開きを述べたいことがございます。実は本コラムには、読者諸賢の皆々様でさえ指摘してくださらなかった、致命的な欠陥がございました。数々の「凡庸な職業作詞家」を、寸鉄人を刺す勢いで糾弾してもなお、私の書き方にはまだ不徹底があったのです。何か。
それは、本コラムで批判される「凡庸な職業作詞家」の中には決して
私本人もまた、本コラムで厳しく批判されてきたような、定型句ばかりでAメロBメロサビを埋め、それによって金銭を得ることを自明視していた「凡庸な職業作詞家」であったにも拘らず、ひとり
ですので、ケジメをつけようと思います。これから私は、今までの
果たしてそのようなことが(道義的にも技術的にも)成しうるのか、どうせ自堕落な袋小路に陥って終わりではないか、など様々な疑義がございましょうし、他ならぬ私自身の
それでは、長いような短いような間でしたが、ご愛読ありがとうございました。最後は私ごときの言葉ではなく、二〇世紀最大の詩人と呼びうる一人である彼の言葉を引いて、結びに代えたいと思います。
「そしてそれから またも立ち去ること 手から手をふり切って
癒えた傷口を新たに引き裂くように
そして立ち去ること どこへ? 不確かなところへ
あらゆる行為の背後にあって 庭か壁なんぞのように
無関心に立っている書き割りにも似た
無縁な暖かい国の中へ
立ち去ること なぜに? それは衝動から その
無分別から 無知から
これら一切をわが身に引き受け
なぜとも知らずに ただ
捉えたものを たぶん
これが 一つの
夜。
という『悟浄歎異』ラストシーンの書き出しは、何度読んでも天才的だと思う。できるならこういう感じで目覚めていたいものだと思わさる。そうだ、この短編も
けっきょく中島敦は、「わが西遊記」を書き上げることなく逝った。完成していたとしたら、どんな本になってたろうな。『ファウスト』とも『ツァラトゥストラ』とも別のものになっていたはずだ。昇天はもちろんのこと、没落さえも志向しない、非体系的な、ひたすらに平々凡々な。
また夜だ。煙草一箱と
わたしは追うだろうか。追おうと考えたことさえあるだろうか。まさか。追いつけるわけがない。あんな実在さえ疑わしい、
追わないよ。わたしの旅は、そのためじゃない。わたしが新たに始めるのは、辿り着くためなんかじゃない。追う者は追われる者に勝る、追われる者は追う者を待たぬ。なら、どこにいたって同じか。最初から動かない方がマシか。違うね。それは違う。煙はそんなこと考えない。ただ吐き出されては消えていく。どうせ消えるから、って話でさえない。だって煙は
じゃあ
この夜だけは。
この夜だけは。
この夜だけは。
俺は譲れやしねえ、この夜だけは。
あなたが絶対に聴いたことのない曲だなこれは。そういうものを持っている、そういうものばかり持っている。渡せたらいいなと
ただこれだけは。
この夜だけは。
譲れないさ、ここが在りさえすれば。
俺たち唯一の身の置き
この夜だけは。
この夜だけは。
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