第27話 [果たし状]




 昨日は早めに寝たので今日は早く起きれた。


 弁当に昨日炊いたご飯と生姜焼きを詰め込み、学校へと向かった。



 学校につき、下駄箱を開けると何やら紙が入っていた。



「む?なんだこれは……」



 その紙は折りたたんであったので開いてみると、文字が書かれていた。



『今日の放課後、一年生校舎の屋上に来てもらう。決闘を申し込む。逃げる事は許されない』



 匿名かつ命令とな……。舐めた真似してくれるな。



 教室へつき、自分の席へと座った。



「強也おはよー……ってそれはなんだ!?まさかラブレター!?」



 朔が興奮した様子で俺が持っていた髪を奪い取った。



「———って……これ果たし状じゃねぇか!!」


「なんなんだお前は……まあそういうことだ。俺が直々に叩き潰してやろう……」



 くくくと笑いながら俺はそう言った。


 クラスメイトが多数見ていたが、一人だけ違う視線で見て来ている人がいた。


 そいつは田辺なんとかではなかったが、見つけることができなかった。



「お前ら席つけー」



 先生が来たことで朔もクラスメイトも自分の席についた。



 田辺なんとかは昨日の作戦が失敗したからなのか、顔に精気が宿っていなかった。



 なので今日はちょっかいがなく、そのまま昼ごはんの時間になった。



 そして……定番となっている静音がやってきた。



「強也……食べよ……」



「やっぱりあの二人って……」

「まあイケメンだし仕方ない……のか?」

「でも本人たちは否定してたよね」

「まあでもどっちにもまだチャンスがあるから!」

「そうよね!」



 何やらクラスメイトが一瞬だけざわついていたが、すぐに収まったようだ。



「強也……今日は一緒に帰れる……?」



 アホ毛をハテナマークにしてから、ワクワクしているのかゆらゆらと揺らしていた。



「うーーむ……。微妙だな」


「……?どういうこと……?」


「実はな!こいつ決闘申し込まれたんだよ!」



 朔が割り込んで入ってきた。



「決……闘?」


「うむ。朝下駄箱にこれが入っていてな」



 俺は果たし状を机から取り出し、静音に見せた。



「本当だ……強也、本当に行くの……?」



 アホ毛は心配そうに垂れ下がって震えていた。



「もちろんだ。ちょうど退屈していたしな。心配することではないぞ」


「そう……じゃあ私も見にいっていい……?」


「もしかしたら巻き込まれるかもしれないからやめておいた方がいいぞ」


「………わかった………」



 静音は残念そうにし、弁当を食べ始めた。

 今日も試食してもらったが、生姜焼きも好評だった。



 そして何事もなく放課後。



「そんじゃあ強也気をつけるんだぞ!怪我とかするんじゃないぞ!!」


「うむ、じゃあな」



 朔も部活へ行ったので、俺も屋上に向かうことにした。



 屋上まで階段を登っていると、観戦者を来させないためなのだろうか、二人の男が立ち塞がっていた。だが俺はすんなり通してもらえた。


 ドアを開けると、人影が二つ見えた。



「来たか……」


「お前が俺に決闘を申し込んだやつか?」


「そうだ」



 確かこいつは……同じクラスの“桜花 唯咲おうか ゆいさき”。



 見た目は小柄で珍しいピンク色の髪色をしていた。

 髪型は確か……ショートボブといったか?その髪型で、右のもみあげを伸ばしてそこに緑の紐を蝶々結びにしてつけていた。

 目は大きく、まつ毛が長かったが、右目には縦の傷跡があった。


 女子のような見た目だが、こいつは男だ。制服も男物だったし、体育も同じクラスだった。



「それで、なぜ俺に決闘を申し込んだ?」


「それは……この決闘が終わったら話す……」


「———そうか……。ところでお前は誰だ」



 俺は桜花から外し、もう一人いた男の方へと視線を向けた。



「僕の名前は“麼橆 太郎”もぶ たろう!しがない新聞部です!審判役をやらせてもらうからね!」



 この男……驚くことになんの特徴もないのだ。特徴がなさすぎて、“特徴がない”というのが特徴といえばいいか……。



「一応知ってると思うけど、桜花 唯咲について話すよ。彼はあの有名な“彼岸桜式刀術ひがんざくらしきとうじゅつ”の使い手で、県大会はもちろん!世界大会にも進出しているすごいクラスメイトだよ!」


「ほう……」



 太郎がわかりやすく説明をしてくれた。



 なかなか楽しめそうだな。“彼岸桜式刀術ひがんざくらしきとうじゅつ”とやらも知らない存在だから楽しみだな。



「じゃあこれを」


「む」



 太郎からなんの変哲も無い木刀を渡された。


 これで決闘、ということか。


 俺は相手に全力で決闘をして欲しかったので、少々煽ってみることにした。



「くくく、負けた言い訳は思いついたか?」


「あなたこそ……負けた顔はさぞかし面白いんでしょうね」



 互いに煽り、剣を構えてスタートを待った。


 俺と相手は剣道の一般的な構えの“中段の構え”をして、決闘が始まるのを待った。


 剣道の開始前の謎のアクションはやらなかった。結構雑なのだな、桜花とやらの性格は。



「えー……コホン。ではこれより、最神 強也対、桜花 唯咲の決闘を始めます。よーーい………始めッ!!」



 そうして決闘が始まった。

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