第57話 嫁改造計画4
ひゅんっ.....
ヴェルディエントの転移によって、魔王城に帰還した。
「じゃあ、早速ラムたんさんを完成さ...『ドチャっ!』ん?..さ、せようか...?」
アレックスが到着するなり喋り出した途端、途中でトマトが潰れたような情けない音が聞こえた。
音が聞こえた方を見てみると、何かが倒れていた。
ピクピクと動く、手足。
灰色の肌、尖った耳、白銀の長い髪。
「あ?お前、なんでここにいる?」
ヴェルディエントが近づき、倒れた人物の前髪をわしゃっと掴み、顔を上げさせた。
嫁の完成を心待ちにしていたところに、自室にいるはずのない者がいて、イライラとしたので乱暴に扱う。
顕になった顔をみると、ジェ・スーだった。
どうやら不在中に会いにきて、ここで待っていたところに転移で現れたヴェルディエントの威圧で潰れたらしい。
「ヴェルディエント様!お願いがありんす!!」
威圧によって、体が床に張り付いてしまったジェ・スーだったが、酷い扱いにもめげずに、苦しみながら声を発した。
片眉をクイっとあげながら、めんどくさそうにヴェルディエントがこたえる。
「なんだ?」
「魔力が欲しいでやんすっ!アンデットを生み出す水晶も壊され、眷属2体とも、人間なんかに対処されんした!
更なるスピードの増強と眷属を増加させとうでござりんすっ!」
「ダメだ。」
必死な形相での懇願も、腕を組み仁王立ちをするヴェルディエントにすげなく断られた。
ジェ・スーは絶望と驚愕に染まった。
「ど、どうしてでありんすか!?
ヴェルディエント様も人間を恨んでいたでありんしょう!
わっちに魔力をさらに譲渡していただければ、より広範囲に眷属を闇夜に紛れさせて人間を駆逐できるでありんすよっ!」
「事情が変わった。」
「事情でありんすか??」
「ああ、そうだ。事情だ。」
「そ、そんな.....。」
ワナワナ震えるジェ・スーだったが、諦めなかった。
必死に言い募り、魔力を乞う。
「で、でも!!
わっち、今どうしても殺しとう人間がござりんす!!
金髪碧眼のそこそこな乳を持ったクソ女がいるでやんす!
わっちを蔑む目が、廓の姐さんみたいで我慢なりんせん!
わっちの可愛い眷属の動きにもムカつくほどピッタリ着いて来て、ひょいひょい避けんすよ!
しかも、挙句の果てにはムチなんかで眷属を吹っ飛ばすようなゴリラなんでありんすよォォォォ!!」
「..........。」
「だってよ?ゴリラで、そこそこなおっぱいのネフィさん。」
「...スイカに比べれば、確かにそこそこだけど....。
でもさー、見てよ!アレク!この張りがあって垂れてない美乳をっ!」
ギュニュギュニュと自ら胸を揉み上げ、アレックスに見せつけ迫る。
むにゅむにゅ....、ぱふぱふ....。
アレックスは無意識にぼーっと見てしまったが、はっとすると身体を勢いよく逸らし、ネフィから距離をとる。
「も、揉むな!!恥じらえっ!
えぇっい、胸を押しつけるなっ!!女の恥じらいをどこに捨てて来た!拾ってこーい!」
「うーん、貴族籍と共にポイッと燃えるゴミに捨てて来た?
もう、燃えちゃってるはずだから拾えないよ〜♪」
「なら、燃えカスを拾ってこーい!!
俺が!状態復元魔術で、戻してやる!!
つーか、そもそも貴族の時から恥じらいなんてなかったよなっ!?」
「あー、そうだったかも?
うーん、じゃあママンのお腹の中に置いて来たのかなぁ。」
「はぁ、そうだな。そもそも前世の時点であったのかも疑問だが....。
今世のネフィには生まれつきなかったつぅ線が濃厚だな....。」
「はは、だ〜よ〜ね〜♪」
笑い事じゃねぇよ?見た目詐欺がひでぇ。
俺の(仮)彼女、品がなさすぎて、俺が恥ずかしい。
別れたい....。
心臓から汗が飛び散りそうだ。
そのとき、はぁぁぁぁ〜っと大きなため息が聞こえた。
見ると、ヴェルディエントが、額を覆ってゲンナリしていた。
どうやら、アレックスとの約束を守って、説得をしているようだが、聞き入れてくれないようだ。
「確かに、俺は人間を憎んでた。美醜で差別をする奴らに辟易していたからな。
だが、あいつらに言われて、俺も悪かったところがあったんじゃないかと、ほんの少し思ったんだ....本当に僅かの僅かだが。
マジで、ほんの少しだけな....。
今は、人間全てを恨まなくてもいいんじゃないかと思い始めてる。
それに!人間を恨んでる場合では無くなった!
最優先事項が変わったんだ。
アレックスが人間を無差別に殺さないなら、俺の人生の生きがいと言ってもいい、『嫁』をくれると言ってくれたから!
だから、俺は...。
認識を改めた!!
無差別に人間を殺すのは金輪際止めだ。」
「な、な、なんてことでありんしょぉぉぉ!!
誰でやんす!ヴェルディエント様を唆したのは!
アレックスって誰でやんすかぁぁぁ!!」
ジェ・スーは、床に磔られた顔をグギギっと無理やりずらすと、離れた場所で傍観していたアレックス達を視界にとらえた。
そして、グワッと、目を見開いて叫んだ。
「あんたらぁぁ!!なんでここに居るでやんすっ!!」
すると、ネフィはニヤつき揶揄いながら返事をした。
「え〜、なんでだろう?ひみつぅ〜♪」
こっちは切実なのに、ネフィのふざけた態度と回答に、ジェ・スーは、憤慨する。
「...こ、こ...のっ、中途半端おっぱい性悪女ぁぁぁ!!」
「なっ!スイカのバケモノのくせに!!
中途半端って何ー!?
そこそこより表現が悪くなったぁ!ありえなーい!
あんたなんか、あり過ぎて逆に引かれるんだからねっ!
私の大きさくらいが一番いいんですぅー♪」
ぎゃーぎゃーと、胸の大きさで口喧嘩をする女性陣に対し、
(くだらない....。おっぱい、おっぱいうるせぇ。この世界には大和撫子や花も恥じらう乙女はいないのか....。)
と、アレックスがこっそり嘆く。
「「アレク(お前さん)は、どっちのおっぱいが好き(でやんすか)!!」」
飛び火ぃ〜っ!!話しかけんな!
「知るか!俺から見れば、胸なんか単なる女体の付属物だ!!
胸は、赤ん坊のための母乳が出るところで、大きい小さいは乳腺の発達の結果!大きけりゃ、母乳の道が多いってだけだ。
しかも、ただ多いだけじゃダメなんだぞ!
細けりゃ、詰まって乳腺炎になるんだからな!熱が出るんだからな!
だが、そんな時は俺の解熱鎮痛薬で解決!テッテレ〜♪
はっ!違う、ドラえもんになってる場合じゃなかった!!
いいか、2人とも!?問題は大きさじゃねぇ、乳腺の太さが大事だ!!
乳腺の量が少ない小さい胸でも、細い乳腺じゃなければ母乳はしっかり出るんだ!わかったか!?」
はぁはぁと息がきれるほど思いっきり主張したアレックスだった。
そして、その言葉を聞いた結果。
今までぎゃーぎゃーと争っていた空気がおさまり、一つになった。
「胸に興奮しないなんて....。だから、童貞なんだよ.....。」
「枯れてるでやんすか?
お前さん、実は人間じゃありんせん??
悪魔でさえ、そこまで女体に興味ないってことないでやんすよ?」
「医学的にしか見れないのか?アレク、お前、大丈夫か?
胸は、究極の宝石だぞ?」
残念な男を見る目でアレックスはまじまじと見られた。
女二人に至っては、隠すことなく視線は股間だった。
不能じゃないかと、逆に心配されていた。
「うるせぇ、ほっとけ!好きになったやつの胸を全力で愛でるからいいんだ!
つーか、勃つからな!EDじゃねぇぞ!
まじまじと見んな!そこの痴女ふたりっ!!」
えー....。と、半目で疑いの目を向けられる。
なんだかんだ、仲良いなお前ら....
アレックスは勘弁してくれと独りごちた。
やがて、ごほんっと、ひとつ咳払いをしたヴェルディエントがジェ・スーに向かって、口を開く。
「とりあえず、これから俺の嫁を完成させなくてはならない。
そして、人間を滅ぼす力はもう分けない。
だから、ここにいる意味はもうないな?ジェ・スー、兄の元へ戻れ。」
ヴェルディエントが告げると、パチンとジェ・スーの姿が消えた。
転移で、どこかに飛ばしたらしい。
アレックス達は、ジェ・スーの乱入で止まっていた嫁改造計画を再開する。
「さて。では頼むぞ。」
「まかせろ。」
アレックスは、魔石を嫁の臍部分に設置した。
既に嫁の体は、魔法陣を幾つも組み込んだ魔石製に改良してある。
その周りは、モチモチのシリコンゴムで覆ってるので固くはなく、肌触りは最高だ。
ここに37度の温風の魔法陣が合わされば、人により近づく肌触りになるだろう。
アレックスは、生成の魔法陣を嫁全体に広げる。
おネエさんが入った魔石を融解して、既に作ってあった巨大な魔石体と繋げていく。
『生成魔法陣展開。
....真空形成....
..10^5Pa.....10^2Pa...10^-1Pa...10^-5Pa。(よし、超高真空状態完成、維持)
...魔石加熱。(おネエさんが入った魔石の縁だけ溶かして...。よし溶けた。段々圧力を戻して冷やして完了だ。)
...圧力上昇...10^-1Pa..10^2Pa...10^5Pa...最終成形。..真空解除!』
ピカっと光ると、つなぎ目もわからない綺麗な滑らかな巨大魔石になった。
どかしていた臍部分の皮膚も被せて加熱し、表面を綺麗に戻す。
すると、臍部位に、コロンと丸い魔力を流すための魔石スイッチを残した嫁が完成した。
まるで、臍ピアスだ。
「これはこれでエロいな....。」
「お気に召したようで何よりだよ。じゃあ、とりあえず俺の魔力を流して起動するな。うまくいったら、俺の魔力を全て抜く。」
「抜く??なぜ?」
「魔力の反発が起きて、燃えるから。」
魔石の中に二人の魔力が入ると、せっかくの幾つも入れ込んだ魔法陣の紙が燃えてしまう。
あーでもないこーでもないと議論しながら大量に入れ込んだ魔法陣が燃えたら目も当てられない。
「ねぇ、でもさっきヴェルディエントが契約した時魔石に魔力が入ったよね??」
「あー、それは問題ない。憑依させる関係の魔法陣全て燃えても、使い切りだから。燃えて定着してるから、おネエさんはちゃんといるぞ。」
「起動させて、問題なく動くのを確認したら俺の魔力を抜く。そのあとは、ヴェルディエントの魔力で、魔石を満たすんだ。
これから魔力を供給するのは、ヴェルディエントだからな。」
じゃあ、やるぞとアレックスはポチっと出ている魔石部分に手を置いた。
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