第53話 ヴェルディエントの事情
「私の女神....。あなただけにします。結婚しましょう。」
はぁっ!?
『ちょぉぉっとっ、待てぇぇぇぃっ!!』べしっ!
「ムリ。」
アレックスは、慌てて、ネフィに伸ばされた手をはたき落とした。
ネフィの方は、間髪入れずにお断りした。
何すんだ?というようにムッとした視線をよこすヴェルディエント。
どうやら、アレックスの声にかき消されてネフィの返事が聞こえてなかったようだ。
「俺を睨むんじゃねぇよ。
お前、今、すげなく断られてるかんな?
しかも、俺のせいじゃねぇってのは言っとくぞ。
出会って速攻プロポーズする変態、断られて当然だ。
それに、お前にハッキリ言いたい.......。
すぅーーーっ....、
前世からの嫁を、あっさり捨てる奴がいるかぁぁぁ!?
とんだ浮気者だなっ、魔王!
し・か・も、相手がネフィ。
こいつ、種族人間だぞ?
お前、人間恨んでたから宵闇の森をアンデットだらけにしたんだろう?
意味不明っ、ワケワカメだ!!」
唾が飛ぶ勢いで、怒涛のツッコミを入れた。
あまりの肺活量にふぅー、ふぅーっと、肩で呼吸するアレックス。
それに対して、ヴェルディエントも負けじと、声を張り上げて反論する。
「されど、仕方ないだろう!?
俺の前世40年の経験で、嫌と言うほど女の汚い部分を見せられて!
男からも侮蔑の視線の数々....。
ウンザリだっ!!
3次元の人間なんて、性根が腐りまくってる!良い思い出なんて無いっ!!
2次元の女性に、心の拠り所を求めるってもんだろう!?
だけど、死ぬまでに一度くらい付き合ってみたかったと思ったのも事実!!
なのに、なのにだっ!
今度の人生は、悪魔!
性欲がない悪魔だっ!しかも寿命は、無限!
孤独死も嫌だったが、死なずに一生っ色恋もない悪魔生もウンザリだ!
なまじ前世の記憶があるから俺には性欲があるんだぁぁぁっ!!」
「知らねぇよっ!
性欲があろうがなんだろうが、迷惑極まりない野郎だなっ!
魔王なんだから、配下に頼めばヤレるだろう!?」
「それが、出来ないんだぁぁぁっ!!
魂の色っていう訳の分からないシステム、爆ぜろっ!
誰も俺に近寄れないんだぁぁぁ!」
がっくりと床に手をつき、項垂れるヴェルディエントだった。
おおぅ、そうだった....。威圧が凄いんだったか。
「魂の色が、一緒の生物に、今っ!
初めて出会えたんだっ!
俺は、この18年、まともに面と向かって話したことがなかった!
わかるか?この寂しさがっ!
種別が人間でも良い!
むしろ、人間とか悪魔の括りなんてもう関係ない!
俺にとっては、魂の色が一緒であることが重要なんだぁぁぁ!」
ヴェルディエントの激しい慟哭を見せられたが、アレックスは意外にも同調することもなく淡々と会話する。
孤独云々よりも、数字に興味を惹かれたようだ。
「18年??
あー....。ヴェルディエント、お前、憑依型か??
お前の体は、この世界ができた時に生まれたらしいもんな。
ある時魔力が爆発したって話も憑依なら納得だ。
そうか、もしかすると.....。
俺たちが転生して18年だから、この数字の一致は偶然じゃないのかも...。
もしかして死んだ時期が一緒か?
クリントンやブッシュの時代か??」
アレックスが、前世死んだ頃のアメリカ大統領の名前を挙げると、ヴェルディエントは勢いよく肯定した。
「そうだ!」
「やっぱり....なるほどなぁ。
こうなってくると、日にちも詳細な死亡時間も一緒かもな。
地球でその時間何かがあって、その時間に死んだ奴が全員この世界に転生している可能性もある、か.....?
実は、俺とネフィが死んだ日は、一緒なんだ。
俺は寝てる時に死んだから、流石に時間はわかんないが夜中っていうとこは一致してるんだ。
この仮説があっていれば、同じ魂の生物がまだいるんじゃないか?
悪魔にはいなかったようだが、人間や天界の神には居るかもしれねぇぞ?」
実際、地球では毎秒2人弱死んでいる統計があるため、『秒単位で一緒が条件なら、他に転生者はいないかもなぁ』っと、心の中では思っていたアレックスだったが、素知らぬ顔で期待を持たせた。
「天界のクソどもは嫌だ....。」
苦虫を潰したような顔でヴェルディエントが拒絶した。
本気で嫌みたいである。
「何故?寿命もないから、理想的だろう。」
アレックスは顎に手を添え、首を捻る。
「理想的っ!?よしてくれ!
あいつらなんて、嫌悪感しか無い!
あいつら、老若男女、日々睦み合って自堕落なアバズレ集団だぞ?」
「なんだ?お前、18年前に憑依したくせに天界の神のこと嫌悪してんのか?
自分の目で確かめてないくせに毛嫌いするのは良くないぞ?」
「知ってるんだ!
たしかに憑依は、18年前だが肉体の記憶が残ってる!
既に、元の人格との同化も済んでる。
あいつらの道徳っ、猿以下だ!」
なるほどな...。酒池肉林って感じか?
あれ?でも、誰でも構わず睦合うって、威圧はどうなってんだ?
「なぁ?天界の神さん達、威圧ってどうなってんだ?
耐えながらヤッてんのか?」
それって、非効率的だし、気持ちがいいのか苦痛なのかわからなくね?
「威圧のシステムは、天界にはない。
魔界と人間界だけだ。
天界から堕天した時に、初めて威圧や魂の色という概念が新たに生じたからな。
多分だが、世界の中心に近いほど威圧が高くなるんじゃないかと考えられる。
人間界では、威圧の威力が若干減るからな。
もしくは、創造神の気まぐれによるシステムかもしれないがな、その辺は分からん。」
なるほど。
創造神の気まぐれシステムだったら、無理だが、世界の中心からの距離云々で威圧がかかるならば、魔術でどうにか威圧無効ができそうだな。
「ねぇ。ところでさ。ヴェルディエント〜。
人間時代って、金持ちの童貞だった??」
藪から棒にどうした!?また童貞認定か!?
こいつ、地球産の男はみんな童貞だと思ってんのか?
失礼だぞ、ネフィっ!
「な、なななな、何故っ!?」
明らかに動揺をするヴェルディエントに、ん?とアレックスは首を傾げた。
「うーん、なんかそんな匂いがする。童貞臭?
それに、その魔力量。確かに、悪魔はみんな魔力が高かったけど....それでも多くて100万くらいかな?
だから、いざとなればアレクがどうにでも出来そうって思ってたんだけど....。
ヴェルディエント、桁が違いすぎるよ?
10億超えてる?なにこれ状態。」
「はぁ?10億??凄い魔力量だなそりゃ。」
「だ、だからって。それが、どどどうして、ど、童貞になるんだ!?」
明らかに動揺をしているヴェルディエント。
これは、確定なのか?
「アレクねぇ、前世、魔法使いだったんだよ。」
「地球で、魔法使い??」
「あー、日本では30歳すぎて童貞なら魔法使いになれるっていう伝説があったんだよ。
それで、俺は多分だが30歳で魔法使いになったんじゃないかと...。」
「なんと.....。お前、童貞だったのか?
ん?なんで疑問系??伝説が事実なら魔法使いになったんだろう?」
「いや。俺30になるはずだった日、寝てる間に過労死したんだ。
だから魔法使いになったかどうかの検証はできてない。
だけど、俺の魔力値が異常なんだ。
2000有れば、魔術師として最高位なのが人間の常識なのに、俺の魔力は2千万を超えてる。
しかも端数が絶妙。
前世の俺の貯金額だ。
多分、前世魔法使いになっていた結果、なんやかんやあって貯金額がそのまま、転生後の魔力になったんじゃないかって、ネフィが言ってた。」
「なるほどな....。
というか、お前、元日本人だったのか?!
さっき英語喋ってたから、同郷かと思ってたぞ!」
「あー。忘れてた。
I found you.(見ーつけた。)」
かくれんぼをしていたことを思い出したアレックスは、ヴェルディエントを指差し、ゲームを終了させた。
「とってつけたように、今更言われても....。」と、ヴェルディエントは唖然とした。
「まぁ良い。
とにかく日本人か!
オタクの聖地アーキハバーラだな!!
私も出張のたびに行っていたぞ!
特にコミケの時期は、わざわざ出張を日本に設定し、毎年満喫していた!
懐かしい.....。」
天井を見上げ、楽しかった思い出を回想するヴェルディエント。
そんな中、ネフィが空気も読まず、真顔で回想をぶった斬った。
「で? 金持ち童貞だったの?」
!!!!!!!!!!!!!
目を見開き、固まるヴェルディエント。
せっかく、話題をオタクの思い出に転換した苦労が、水の泡だった。
ネフィは、そんな様子も気にせずにぐいぐいと質問を重ねて行く。
「お店のお姉さんとも、してないのかな〜?
その魔力量ってことは、素人童貞でもなさそうだよね。
お金持ってたなら、プロに頼んだり、金目当ての女豹とかもいたんじゃないの?
なんで童貞だったの??ポリシー?」
「あー...。いや....。童て.....、じゃ......むにゃむにゃ.....。」
「ん?なんだって??」
「だから...違..」
「違わないでしょ?そうなんでしょ?」
ヴェルディエントが否定しようにも、言葉を被せていくネフィ。
イエスしか認めないようだ。
タジタジな魔王がなんか不憫だ。
もうやめてあげてくれ!
傷口が広がっている!なんか涙目になってるぞ。
「...ふぅぅぅ...(泣)
どうでも良いじゃないか....、そんなのもう....、ほっといてくれ.......。」
「ダメ。私の仮説が、あってるか確かめる!
ほら、早く!!
ヘイ(hey)、セイ(say)!!
『童貞でした。』もしくは『チェリーボーイでした。』って。セイ、セイ!」
「....もう嫌だ....。
やっぱり、俺の嫁は、ラムちゃんしかいない。
こんな明け透けな性格の女は嫌だ....。」
「なんだとぉ!
そこの元嫁を振っておきながら、元サヤに戻ろうとする根性があり得な〜い。クソやろ〜だぁ〜。
こんな都合のいい考えをする男は、100%童貞に間違いない!」
「..........。」
ヴェルディエントの表情が、すんっと死滅した。
しばらくすると、意識が戻ってきたようで、アレックスに向かって口を開いた。
「お前、アレクと言ったか?
こんな酔っ払いのおっさんみたいな下世話な発言を平気で言う女をよく恋人にできるな.....。」
はははは....、フリだけどな。
全くその通りだよ。敢えてネフィと男女の仲になる必要性なんて普通は無いよな。
アレックスは、なんとも言えない顔で苦笑した。
「ネフィは、こうと決めたらテコでも動かないんだ。
早く認めてしまった方がいいぞ。言うまで諦めない。
長引かせても、グサグサと更に言葉が胸に刺さるだけで、自分にとって害しかない。
俺も、前世も今世も童貞だから、恥ずかしがらないで良いぞ。大丈夫だ。」
ぽんと、ヴェルディエントの肩に手をつき、言葉を促す。
「うぅぅ、同志よ....。」
ガバリと手を広げて、アレックスをハグするヴェルディエント。
「やっと認めたね!
アレク!やっぱり、30歳童貞貯金説が合ってたね!」
ふふん♪と胸を張って得意げなネフィ。
「推察があってて良かったな。
だが、ネフィのせいで1人の男の矜持がバキバキに崩壊してるぞ....。可哀想に....。」
ぐりぐりと、顔をアレックスの肩に押し付け、シクシク泣いている魔王に、アレックスは背中をポスポスと叩いて慰める。
「あ〜、ヴェルディエント?
もう、前世の鬱憤をここまできたら吐き出しちまえよ。
スッキリするかもしれねぇぞ。
童貞仲間として、最後まで聞いてやるぞ。」
「よっ、アレク!おっとこまえ〜♪」
うるさいぞ、ネフィ!ちょっとお前黙っとけ!
「聞いてくれるか...?」
ヴェルディエントが、前世の人生を語り始めた。
俺の前世は、アメリカ北部ニュージャージーで生まれて育った。
頭の出来が良かった俺は、プリンストン大のコンピューターサイエンス学部に入り、人工知能ロボット関係の研究をしていたんだ。
その関係で、ITベンチャー企業の会社に就職できたんだが....。
社会に出て躓いたんだ。
仕事内容は問題なかった。余裕でこなせた....が、人間関係がうまくいかなかった。
今までの学生時代は、プログラムをいじったりロボットを作ったりして、共通の趣味の仲間がいたから疎外感を感じることがなかったんだが。
会社に所属していると様々な分野の老若男女と関わる必要が出てくるだろう?
するとだな、なんか壁を感じるんだ。
最初は分からなかったんだが、円滑に仕事が回らないことが多くて、原因を考えてみたんだ。
すると、人と人が話す時のパーソナルスペースが、俺の時だけ広いことに気づき、仕事を振られる時は、口頭ではなくメールでお願いされることが異常に多かったんだ。
たとえ、斜め前にいたとしても....。
文章だと齟齬が生まれることがあるから、こっちからデスク越しに質問すれば、『忙しいからメールで送ってくれ』って言われ、メールで送るだろう?
そしたら、すぐにメールで返事が来るんだ。
今忙しいって言っていたのにも関わらずだ。
おかしいだろう?
しばらく経って漸くわかったんだ。
俺の容姿が、業務連絡をするにも、口を聞きたくないほど気持ちが悪いと思われていることに。
俺は、プログラムに夢中になると3徹は当たり前、食事は片手で食べられるジャンクフードやお菓子。机に齧り付くから動かない。
つまり、睡眠不足と栄養の偏りで、吹き出物がよくでき肌はボロボロ、粉をふくほどで、さらに運動不足で体がデブ、総じて汚い印象を持たれてしまってたんだ。
シャワーは毎日入ってたし、毎日服も替えていたのに....。
もちろん、気づいてから改善を試みたさ。
体型は中肉中背まで落として、肌の改善もはかった。
結局、吹き出物の痕はたくさん残ったが、凹凸もないなだらかな肌になった。
そうして、少し人間関係が改善できたが、普通とはまだ程遠かった。
よそよそしさは相変わらずで、パーソナルスペースは少し縮んで解消してきたが、目が合わなかった。
そこで、どうしたらいいのか悩んだ俺は、経営者になればいいんじゃないかと思ったんだ。
部下なら、流石に上司を無視できないだろう?
そして、独立して起業することにした俺は、介護の方に力を入れた、介護ロボットの会社を設立。
軌道に乗って、業績は右肩上がり。資産もどんどん増えた。
身なりもいいものを揃え、仕事ではキッチリとしたスリーピースを着て、汚いイメージも払拭できた。
だが、会社から1歩出ると、やっぱり目を逸らされる....。
実は、俺の素もとの顔が、ブサイクだったんだ...。
え?そんな歳になって、ようやく気づいたのかって?
しかしなぁ....、人の目が気になりだしたのが、社会に出てからだし...。
身なりを整えて綺麗な清潔感ある姿を常態にしたら、うまくいくって思ってたのが、見事にハズレて....それからまた考察してきづいたから.....。
とにかく、自分の顔をマジマジと見たんだ。
だが、それまで人の美醜なんて気にしたことなかったから、見てもよくわかんなかった。
え?この人、綺麗だなとか、イケてるなとか思ったことがなかったのかって?
それがなかったんだ....。
なんせ、俺の人生は勉強とコンピューターと、それに関わるほんの少しの対人コミュニケーションしかなかったんだ。
だから美醜は必要ないだろう?
それで、自分の顔を意識し出してから、ようやく世間一般の美醜の感性を学んだんだ。
それで、俺はブサイクでキモメンと呼ばれる類だったことが、わかった。
むしろ、酷すぎて人間じゃなくモンスターと思われていたみたいだ。
そんな俺も、30歳も過ぎれば、結婚も意識する。
が、そんな醜い俺に見合いも来ないし、こっちから打診しても断られる....。
経済界のパーティとかに出席しても、コンパニオンにも避けられる始末....。
そんな姿を見て、周囲のほとんどの男は嘲笑うんだ。
聞こえるように、悪口を言われ、その場に居るのが恥ずかしくなって辛かった....。
有り余る金で整形しなかったのかって?
考えたさ。何件も整形クリニックに通ったが、肌が弱くて、どの医者からも無理だと言われたんだ。
俺は、どうすればよかったんだ?
人には優しくする、金もある、酒もギャンブルもハマってない。女も当然殴らない。人の悪口も言わない。家事も家政婦が常駐。
なのに、なぜ!誰もそばにいてくれないっ!?
たしかに金目当てで寄ってくる女もいた。
そんな女でも、俺は良かった。
なのにっ!!いざって時に、生理的にやっぱり無理ってボロボロ泣かれる気持ちが分かるか?
まぁ、それならまだいいぞ。
なんとか頑張ってみようと思ってくれたんだ。
いい女だったと、俺はつくづく思う。
何、不憫そうな顔してんだ?こんなのは序の口だぞ。
寄ってきた女が、俺の交友関係に入ってくると、金持ちで能力がある友人に、鞍替えすることなんか、しょっちゅうだ。
同じ能力なら、顔がいい方がいいしな。
それは、分からんでもない。
だが、申し訳ない顔をするんでもなく、嘲笑うような勝気な笑みをされると、怨みつらみが積み重なるってもんだろう!?わかるだろう!?
しかも、せっかく良好な関係を築けていた友人とも気まずくなる....。
とにかく人の美醜で優劣をつける人間、特に女が憎い!
だから、事故で死ぬ瞬間、生まれ変わるなら人間以外と願った。
だが、蓋を開けてみたら悪魔!
それに、生まれ変わりじゃなく憑依だ!!
意外にも程があるだろうっ!?
しかも憑依した瞬間から、誰とも近づけない・話せない・触れ合えないって、どんな仕打ちだっ!!
俺の前世、徳を積んできたとは言わないが、悪いこともせず真面目に生きて、蔑まされてもひたすら耐えたのに....どんな罰だ!!
しかも鏡をみたら、かなりのイケメン!
宝の持ち腐れっ!
なまじ人間の記憶があるから、性に関する渇望が半端ないっ!!
でも、触れないっ!
どんな拷問だ!!
べちゃっと床に倒れた悪魔に勝手に突っ込むような非道な行いはしたくないし!
...したとしても多分、虚しい....。
念話をするのも、兄のジャルジャルートと兄の契約者の悪魔だけ....。
寂しい!寂しい!寂しい!寂しい!
そんな中、やっと会話ができて、触れることもできる女が来たら、求婚するだろう!?
まぁ中身は、とんだ奇天烈女で、俺のメンタルがボロボロになったが。
話は脱線したが、寂しさから有り余る魔力で嫁を作ったが、感触が硬くて........。
ラムたんにお茶を入れさせたり、ダンスを踊りあったり、触れ合ってもいるがやっぱり硬いっ!
しかも、動かしているのが自分の魔術って.....。
自作自演....。
なっ?可哀想だろっ!?
地球では人工知能のロボットを作っていたのに、部品がない!
コンピューターもない...。
あれば、アンドロイドが出来るのに!
能力があっても部品がないこの世界....。
余計っ、辛い!
「わかるか!?俺の孤独が!人間に対する憎しみが!」
一通り、心のうちを吐き出したヴェルディエントは、ガバリと顔を上げてアレックスの顔を覗き込んだ。
「あー、孤独はわかるが....。憎しみはわかんね〜。
すまん。」
ネフィも、「人間全部が、あんたを拒否したわけじゃないでしょう?」と、否定的だ。
アレックスもネフィも、18年の孤独に同情こそすれ、憎しみには共感できなかった。
「なぜ??女は皆、俺を拒絶したぞ。男も一部の人間しか受け入れてくれなかった。憎いだろう...」
はぁ〜っと、アレックスはため息を吐いて、ヴェルディエントに諭すように話し出す。
「お前をわかってくれる奴が、前世でも少しはいたんだろう?
なのに、全員滅ぼしたら、そいつら浮かばれねぇぞ。
それに、お前は女全員って言ってたが、目が病気や障害で見えない女性もいただろう?
お前みたいに美醜に興味がない女もいたはずだろう?
そういった女性にも選ばれなかったなら、見目以外にもお前に問題があったんじゃねぇ?
人間全部を恨むのは、お門違いってもんだ。」
ヴェルディエントは泣きそうな顔で歯を食いしばる。
「あーー、あれだ。えー、うん。
憎みたい気持ちは良くわかるぞ?
だがな、人間全部を、憎まなくてもいいだろうってことだ。
だからな、宵闇の森のアンデッドを追加しないでくれないか?
ジェ・スーの説得もして欲しい。
めちゃくちゃ早い動きのアンデットは、流石に骨が折れる。
もちろん、タダとは言わない!
多分、喉から手が出るほど欲しいもんをくれてやる。」
「???」
キョトンとするヴェルディエントに、アレックスは言葉を重ねる。
「まず、お前の嫁のラムたんにシリコンコーティングをしてやるっ!!」
「なにっ!!!」
「俺は、化学式さえ描ければ生成することができる。この嫁にリアルな感触を与えてやれるぞ!」
「本当か!?ぜひやってくれ!」
目をキラキラさせて、興奮するヴェルディエント。
こうして、ヴェルディエント嫁改造計画が発足した。
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