第20話 治療院②
「ア、アアアレックスさっんっ!先程ぶりです!」
戻ってきたリダリアは、顔がまだ赤い状態だった。
(さっき、恥ずかしくて逃げたのに。
一時間もしないうちに再会って、どういうこと!?
神様は私に試練を与えすぎよぉぉぉ。
はっ、もしかしてこれは諦めるなっていう天啓なのかしら?
それなら私やるわっ!恋の運命をぶち破ってやるわっ!)
リダリアよ、ぶち破るのは『困難の壁』だ。
恋の運命をぶち破るのは、『失恋』だ。
リダリアの恋は、叶いそうもない。
「リダリアさん、先程ぶりですね。
すいません、寝ずに働かしてしまって。疲れたら、言ってください。」
「はい、だ、だだ大丈夫っです!
目が覚めてしまって寝れそうにありませんでした!
なにを手伝ったらいいですか!?」
「とりあえず、患者の状態を見たところ褥瘡や体内外の炎症が見受けられるので解熱鎮痛剤をこれくらいと抗生物質をこれくらい混ぜて、一人ずつ服用させてもらっていいですか?」
アレックスは、薬瓶と吸飲みをリダリアに渡して投薬指示をした。
リダリアが指示通り動き出すのを確認し、アレックスも反対側から別の患者の治療をするために移動した。
顔色が悪い患者には造血剤を慎重に追加で投与していく。
「....初めての共同作業ねっ!
これは夫婦としていいのでは!?
大変、教会に行かなくちゃ!」
リダリアは妄想を爆発させながら、手際良く処置していった。
残念女子だ。
重傷者がいる部屋が終わると、今度は軽症者だ。
骨折・欠損は、魔術で治せるが目立ちたくないので放置の方向で治療していく。
体力の消耗者も放置だ。
死にはしない、寝れば治る!
欠損は、可哀想だが、俺は聖人君子ではない。
ただの薬剤師だ。
薬で治せるものだけが対象だ。
とりあえず、軽症の傷には、グリセリンと解熱鎮痛剤を合わせた簡易軟膏を塗ることにした。これで、時間が経ってない傷は綺麗に治る筈だ。
患者がたくさんいるので、効率的に治療を開始しなくてはならない。今日しか時間がない。
まず、患者を重力低下の魔術と風の魔術の重ねがけで浮かす。
次いで、前も後ろも横も隅々まで患部の確認。それを終えたら魔術水で患部を綺麗に洗い流し洗浄。
最後に、リダリアが簡易軟膏を塗って包帯を巻く。
その繰り返しで、流れ作業的に治療をし続けた。
軽症患者の大半がこの状態だったため、すぐに軟膏がなくなり、生成の魔法陣で何度も簡易軟膏を生成した。
結局、薬を作りながら魔術も使って治療をしてたら、だいぶ時間がかかってしまった。
地球での子供の頃は、怪我をしたら傷口を洗って消毒し、絆創膏を貼るっていうのが常識だった。
学校の保健室で誰しも経験したことがあるだろう。
だが前世の薬剤師時代の事だが、病棟の看護師さんから傷によっては消毒してはいけないものがあると聞いて認識が変わった。
消毒液によって、人体が持ってる有益な白血球やマクロファージ(これらは、傷を塞いだり雑菌を捕食する)にも損傷が起きるらしく感染しやすくなるそうだ。
まぁ、これを聞いたのが担当病棟の飲み会の席だったこともあり、話半分であまり詳しいことは聞いてなかった.....。
だから各々の創傷にどんな治療がいいのかハッキリいって、わからない!
ははっ、すまないな、患者さん達......。
よって、みきり発車になったが、いざとなれば、俺には回復魔法がある!
死なない限り大丈夫だ。(....多分。)
そんなわけで、今回は消毒はせずに傷口を洗い流すのみにとどめた。
とりあえず簡易軟膏で傷口を無くせば、新たな感染を防ぐことが出来るだろうっ!
アレックスがそんなことを考えながら何人にも簡易軟膏を塗っていると、傷が治るときに黒い小さな塊が出る創傷があることに気づいた。
これはなんだろう??とりあえず回収する。
そのまま何人も観察していくと、そういう患者は総じて発熱があることがわかった。
つまり、この小さな黒い塊は、傷口にあったバイ菌であるという考察をした。
簡易軟膏さん、凄くないですか?傷を治しながら、バイ菌も吐きだすなんて!なんていい子なんでしょう!
なのでこれは、その場で消し炭にした。
これで大部分の患者は、治療完了だ。
あとは、咳や鼻水などの風邪の諸症状に至っては、俺の魔力を含んだ鎮咳薬、去痰薬、抗アレルギー薬を化学式で生成して服用させた。
そして、速攻で元気になったのでお家に帰した。
ベッドと助手が足りないからな。みんな帰れ〜。
アレックスは、『魔力ってホントすげーよなぁ、瞬間的に治るって便利だわ〜』とつくづく思ったのだった。
結果、治療院にいた患者のほとんどが帰っていった。
残ったのは、骨折した者と起き上がることができない、体力がない患者だけだ。
俺、凄くないか?医者っぽくない?
めっちゃ感謝されてる〜!!
神様〜!!
転生させてくれてありがとう〜!!
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