第5話 解熱鎮痛剤ができました。
それからしばらくして、錬金術の本を片っ端から読んで研究をすることにした。
ネフィが残した本には錬金術の本がなかったから、全部新たに購入した。
今までのお金のほとんどが消えた。
だが俺は、研究には資金をケチらない!
まずは、長年俺を悩ましている頭痛薬を作るんだと意気揚々と研究を始めた。
その頃には、ネフィから手紙が届くようになった。
なになに?
『拝啓 アレク!
元気だろうか?私は、身体的には元気だ。
しかし、困ったことが起きた。乙女ゲームのシナリオがどうもずれている....。
登場人物も背景も概ね一緒なんだが、
....実は、犬がいないのだ!!
騎士科にいたイケメンの犬が存在しない!なぜだぁぁぁぁっ!
今は、ちょっとテイストが変わった犬がいるのではと思い騎士科の野郎ども200人を観察中だ。
無事に見つかるように祈っていてくれ。夏には戻る!
君の味方ネフィより』
うん、騎士科のイケメンは無事に逃げたのか。よかったな、名も知らない犬よ。このまま見つからないことを祈る。...アーメン...と十字をきった。
というか、しばらく会ってないうちにものすごく口調が荒れたなぁ。中身ゴリラなんだから、口調は令嬢でいないとダメじゃん。もう女成分は見た目だけだな。
うん、ネフィはネフィで頑張れ。
さ、錬金術で頭痛薬を作ろう♪
まずは、前世に漢方薬になぞらえて薬を作ってみよう。
♪タンタンタンタンたん、タンタンタンタンたん、
タララララララタンタン♪と頭の中では3分クッキングが流れている。俺はご機嫌だ!
では、今日の材料は
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・細茶
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っぽいもの・・・セリ科のものなんだが、覚えてないので根っこを乾燥させたりして代用。
錬金術の本での薬効が似ていたので多分大丈夫だ!
これらを根や葉っぱ、実を部分ごとに乾燥させたり茹でたりして下処理をします。
今日は時間がないので出来上がってるものがこちらに用意してあります。
じゃーーん。
これらを机の上に置いて、生成の魔法陣に投げつける!
投げる!投げる!更に投げる!
ここからは魔力のゴリ押しだ。
『粉砕。.........撹拌......。加熱。大体50度?....抽出。残留物瓶封入。防腐....完了』
おお〜っ!
今日のお料理の出来上がり!
“
ふふ、では頂くとしよう!
あれ、どのくらい飲めばいいのかな?
あんまり大量に飲むのは甘草が入ってるからまずいよなぁ。
うーん、とりあえず小さじ半量から飲むか?
実食っ!!
スーッと鼻にハッカの匂いが通って、じわっとお腹が暖かくなって、最後に頭痛がシュワっとなくなった!?
はぁ?なんだこれ!前世より画期的だ!
なぜだ?魔力の恩恵か?
実験しよう!まずは、今までの顧客の頭痛持ちの人に試してもらおう!
では、出かけよう。
で、結果としてはものすごい効き目だった。その後、慢性頭痛に悩まされていた人たちが約1週間前後頭痛が出なかった...。
なんて画期的。
比べてみると一般的な錬金術の頭痛薬よりも効果があった。これはレシピの違いか?
「アレク!薬も作りだしたんだって?さすが何でも屋だなぁ。」「アレク!こないだの湿布よかったよ。ばあさんの腰、すっかり良くなった。今度できたら教えてくれよ。買いに来るから!」「今、何か薬ないの?」と街に出ると声をかけられることが増えた。概ねみんな友好的だ。
薬の需要があるのはわかったが、材料の調達がいかんせん時間がかかる。
早朝だったり、深夜だったり、季節のものだったりするので、一つの材料に二十四時間365日必要だ。
これでは作れる薬に制限がかかる。
錬金術は等価交換だからなぁ。何もないところからは生まれない...。
せっかく魔術があるんだから、ドラ○もんのグルメテーブル掛けみたいに思ったものが出てこないもんかなぁ。
うーん、前世の化学式を魔法陣に書き込んだら出てこないかな?
例えば〜。
アセトアミノフェンを生成の魔法陣に描いてみよう。
...C6H4(OH)NHCOCH3だから、フェノール基でしょ、4番目にアミノ基くっつけて....無水酢酸をくっつけるから...アセチル化してこうなってこうっ!
『C6H4(OH)NHCOCH3生成!!』
ピカっ!と魔法陣が光ってさらさらとした粉が床に降り積もった.....。
え?なんか生まれた!?えっアセトアミノフェンできた??
よし、もう一度薬を生成してみよう。
今度は、瓶を用意して....生成の魔法陣展開。
『C6H4(OH)NHCOCH3生成!瓶封入。...防腐...完了。』
ピカっ!...できた。
人体実験だ!さあ、新しい扉の向こうへ!!...うん、落ち着こう。
たくさんの人に無料で治験に参加してもらった。こないだの川芎茶調散よりも即効性はないものの、熱が確実に下がった。
何もないところから生まれたから効きがゆっくりなのか、それとも工程が不明瞭なので曖昧な効き方になったのか?
とりあえず、さらに研究を重ねた。
その結果、ある程度工程を正確にすることで効果が上がることがわかった。
結局、前世になぞらえて、ニトロベンゼンから市販のアセトアミノフェンが生成される反応式で作ることに妥協した。
ニトロベンゼンを還元して強塩基の水酸化ナトリウムと反応させて...アニリン化を確認してから無水酢酸でアセチル化して....合成! という反応を魔法陣の上で描きながら解熱鎮痛剤を作った。
アセトアミノフェンなので子供にも安心して使える。よって、発熱中の子供達にも使った。
すると、瞬くうちに熱が下がり子供たちの笑顔が見られた。
「薬のおかげで今は熱が下がってますが、体はまだ疲労してます。薬の効果がなくなったらまた熱が出るかもしれないので、2日間は安静に過ごしてくださいね。何か発熱以外の気になることがあればすぐに教えてください。」と、前世薬剤師の鉄板服薬指導をしてみた。
懐かしい、この感じ。
調合から投薬、服薬指導まで一人でできた!これで患者さんから嫌な顔をされずに存在できる!俺やったよぉぉ!!
よし、次はNSAIDにしよう!
アセトアミノフェンは消炎作用がほとんどないので、消炎作用があるNSAIDに取り掛かることにした。
フェノールに高温高圧化でNaOHと二酸化炭素とでカルボキシ化して...希硫酸で中和してサリチル酸を作って...無水酢酸でアセチル化で完成だから....
『サリチル酸C7H6O3、無水酢酸C4H6O3結合...。アセチル基吸着。...アセチルサリチル酸C9H8O4生合成完了..。瓶封入。...防腐...保存。』
おおっ、できたアスピリンの完成だ!
これでどのくらいの消炎作用が効くのだろう?
そんな実験と研究をしていたらネフィの夏季休暇になった。悪魔が帰ってきた...。
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