第42話 悪役令嬢の終幕 2

「いいえ…私の全てはリチャード様のものですわ」


リチャード様の金の髪が日の光を浴びて、キラキラと輝いている。


「全て?」


「私の…これからの人生の全て」


鼻がふれあい、くすぐったさに少し目を伏せ

クスクスと小さく笑ってしまった。


そろりと瞼を上げると、私を熱く見つめる


リチャード様の空色の瞳でいっぱいだった。



「ローズの心も?」



引き寄せられる。



「心も…です」



「それって…」



どちらの瞼が先に閉じられたのか


唇にふにっと…固い…感触が…



「許す訳ないでしょうが…!!!!!!」


そのまま何者かの手に口をふさがれ、抱きあげられ後ろに隠されてしまった。


何者か…お兄様ですわね。この声と匂いはお兄様ですわね!


「な!お前、今のは空気を読めよ!側近だろう!」

「空気を読んだからこそ止めたんだ!うちの子はまだ16です!破廉恥な!」


お兄様の後ろに隠されてしまったが、これでよかったのかもしれない。

私ったら…私ったら…!!


思わず顔を両手で隠し呻いてしまう。


ここが自分の部屋だったらのたうちまわってしまうほど恥ずかしいですわ…!!


「もうすぐ17だろう!」

「ええ!婚姻可能な18までまだまだってことです!節度を保ってください!」

「キスぐらい良いだろう!」


やめてくださいぃぃい!!

そんな大声で!キ、キスだなんて!


もう穴があったら入りたいわ!掘る!?掘ります!?


「良いって言いましたぁ!?ローズがしてくださいとでも言ったんですかぁ!?どうせリチャードが無理やりしようとしたんでしょう!余裕のない男は嫌われますよ!」

「いや、ローズもして良いと…いい…雰囲気だった!!」


た、たた確かに自然に瞼を閉じ始めてましたけど…っ!?


「もう…やめてください…恥ずかしさで死んでしまいそうです…」


なんて拷問なの!これでは恥ずか死刑よ!


「ローズが死んだらすぐに迎えに行くから入口で待っておきなさい」

「なにまた不謹慎でありえないこと言ってるんですか」

「俺とローズなら早めに殺されるかもしれないから、計画は大事だろう。なんと言っても、魔王と悪女だものね」


そうなのだ。わたくしが稀代の悪女と噂されると同時にリチャード様も弟の婚約者に横恋慕し、隣国の婚約者を手にかけ弟まで…と噂されているのだ。


「リチャード様が魔王なのはわかりますが、それなら私も悪女よりももっと強そうなものがいいですわ」


お兄様の背中の影からなら、だんだん平気になってきたので

背中に隠れながら、史上最高の悪役にふさわしい名前の希望を挙げる。


「ふふ、欲張りだね。…そうだな、女魔王…魔女…悪の女帝…難しいな」

「困りましたわね…こう、バーン!と悪役の頂上のような名前がいいですわ」


お兄様を真ん中に、魔王と悪役令嬢の秘密会議だ。


「お兄ちゃんは二人が…心配だよ…」


~ 完 ~

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