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私は未だに魔法を求めていて、その訳は私がずっと魔法が大好きだったからだ。幼い頃に見たマジックショーに魅せられて、それが忘れられなくて、何かあった時も助けられ続けて、私はいつの頃からか魔法使いを夢見るようになった。
そんなことを考えながら病院からの帰り道、人通りの多い場所を歩いていると、私の足元に小さな女の子がぶつかった。女の子は見る限り一人のようだった。
「ごめん、大丈夫だったかな?」
私は女の子に声をかけた。すると女の子は不安そうな声で、
「……大丈夫」
と返してくれた。私はひとまずこの子を親の元に届けるために話を聞くことにした。
「……名前、なんていうの?」
「ミカ」
「ミカちゃんか。一人で歩いていたけど、どうしたのかな?」
「パパとママとはぐれちゃった……」
「そうだったんだね」
「パパとママ、どこにいるんだろう」
ミカちゃんは今にも泣きそうな顔をしていた。私は掌から小さな火を出した。今の私でも簡単にできる魔法の一つだった。
「すごい! おじさん、魔法使いなの?」
ミカちゃんは一瞬にして元気を取り戻した。彼女の目線は私の掌の火に向かって一直線だった。
「そ、そうだよ」
私は歯切れ悪く自分が魔法使いだと認めてしまった。前よりも魔法が使えない私は、はたして魔法使いと名乗ってよかったのだろうか。
そうしているうちに向こうの方から慌てた様子で一組の男女が駆け寄ってきた。
「うちの美香がすみません」
美香ちゃんの両親のようだった。
「私は大丈夫ですよ。さあ、おじさんは帰るよ」
「ありがとう、おじさん!」
ミカちゃんは笑顔で両親と一緒に帰っていった。その笑顔を見て私は思い出した。私もああやって魔法に魅せられたのだ。魔法がどんどん好きになって、いつか誰かを楽しませたいと思うようになった。だから私は魔法使いになったのだ。
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