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教室に講師として採用されてから二ヶ月ほどが経った。教室は無事に開講し、生徒も集まりはじめていた。私の仕事も本格的に始まった。午後二時に出勤し、最初の授業の始まる四時までに授業の準備を行い、四時から九時まで休みを挟みつつ授業を三回行う。これが、私の新しい毎日だ。
「どうですか、慣れましたか?」
山内さんが声をかけてきた。私は少し悩みつつも、
「おかげさまで」
と返した。山内さんはその答えで満足したのか、すぐに自分の仕事を再開する。確かに、仕事の時間や必要な書類の作成などの雑務には慣れてきた。だが、一つだけうまくいかないところがあった。
「先生、物を浮かしてよ!」
ある時、児童クラスの男の子が私にお願い事をしてきた。私は難なくやってのけたが直後、すぐにその場で倒れ込んでしまった。体のあちこちが痛くて苦しくなる。
「先生! 大丈夫?」
教室が混乱する。私は体が痛すぎて返事ができなかった。しばらくして体の痛みが落ち着いたところで、同僚の先生が側までやって来た。
「先生、大丈夫でしたか?」
「……大丈夫です」
私はすぐにその後の授業を取り止めた。体が思うように扱えない。事故のせいとは言え、私は自分の体の状態に納得がいかないのだ。
「仕方ないですよ……、まだ事故から一年も経ってないですし」
後日、事故の時からお世話になっている先生からもこう言われてしまった。私は自分が情けなくて思わず、
「……じゃあ、どうすればいいんだ」
と呟いていた。それが聞こえたのか、先生は優しい顔つきで私の目を見た。
「魔法がちゃんと使えなくても、あなたはあなただ。それは決して変わらないことです」
先生のその言葉にはさっきまでとは違う、芯みたいな物が通っていた。その言葉は私の心に大事なことを訴えかけてきている。どうすればいいのだろうか。結論が出ないでいる。
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