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「まあ、その話題を考えても仕方ないでしょ。世論は法案を通したくないという意見に傾いてきたし。」


 仕方なしに朱美は咲也に言った。咲也もそれに対して悔しくも同意せざるえなかった。


「だけどさ、あの魔術自体は使えるんだろ?」


 少し間が空けて、咲也は朱美に尋ねた。


「そうよ。魔術を使うこと自体は簡単よ。ただ、それが合法か違法になるかは不透明だけど。」


「それって、論文とか有るか?」


「探せばあると思う。」


「なるほどね……」


 咲也は納得した様な表情を浮かべる。朱美はこの時、自分が何か恐ろしいことを言ってしまったのではないかという考えが頭を過ったが気にしないでおくことにした。


「こんな時間か。じゃあ、また。」


「じゃあ、また。」


 時計を見て、朱美はその場を離れた。そこに咲也だけが残り、彼はその後も物思いにふけているのだった。



 数時間が経って、咲也はデスクのパソコンである論文を読んでいた。読み終えると彼は手から魔法陣を作り出して、それをデスクに置かれている時計に向ける。表示されている時刻は夜の十一時ちょうど。魔法陣を向けてみたが、時は進み続けていて、彼が手にはめた腕時計と同じ時刻を示している。彼は不満げな顔を浮かべた。その後も彼は何度か、魔法陣を広げた手を時計に向けた。二十分程が過ぎた頃、時計の時刻は彼の腕時計の二分前で静止していた。魔術を使うことに成功したのである。


 咲也は成功した後、論文のタブを閉じてからパソコンの電源を落とし誰もいないことを再度確認してから退勤した。



 朝になり、いつもの様に咲也は出勤し、デスクへと向かう。そして、いつも自分よりも先に出勤している先輩の坂上先生に挨拶をした。


「おはようございます。坂上先生」


「おはよう、足立先生」


 坂上は観葉植物に水をやりながら、優しく返した。咲也も荷物を広げながら

話を続ける。

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