カマキリ、あそぼ

闇コロ助

第1話

「カマキリ、あそぼ!!!!」


そう言って、ぼくは手のひらでカマキリをぺちゃんこにしました。


まわりの大人たちは、ぼくとカマキリをじろじろ見ています。友人であるカマキリと遊んでいるだけなのになんなんだろう。ぼくには全く解せませんでした。


カマキリとぼくは昔なじみの友人です。けれども、カマキリの寿命は人間よりもだいぶ短いので、同じカマキリとずっと友人でいることはできません。


なので、ぼくはカマキリという種全体を友人とすることにしました。友情が芽生えればどんな相手でも友人です。カマキリだってそうに決まっています。


というわけで昔と変わらず、ぼくはカマキリとめいっぱい遊ぶことにしました。


今日の遊び場は電車のなかです。


普段カマキリは電車にはいませんが、今日は気が向いたのでしょう。成虫の雄カマキリが鎌首をもたげています。歓迎のポーズです。


いつものように、ぼくは四つん這いになってなるべく低い姿勢をとりました。この姿勢をとるのには2つの理由があります。


一つ、ぼくの戦闘スタイルにこの上なく適していること。これは長年の試行錯誤による賜物です。


二つ、カマキリへのリスペクト。カマキリは人間よりもずっと小さい存在なので、いつもの姿勢だとカマキリを見下ろすことになってしまいます。ぼくは友人にたいして、そんな無礼なことはできません。


同じ価値ある命をもった生命体どうし同じ目線で向き合いたい。

ぼくはいつもそう思っています。


「せいっ」

「せいっっ!!!!」


カマキリはぺちゃんこになりました。小さな悲鳴が車内のどこからか聞こえました。【つづく】

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