2023.01.02 ボザロとかいうア二メ

 娘ちゃんがオススメしてきたのは「ボッチザ・ロック」というバンド系女子高生のアニメだった。


 ボッチは父親のギターを毎日6時間も練習して、いつかバンド友達を作り、ギタリストとしてチヤホヤされたいと夢見る女子高生だ。


 けいおんと比較されるが主人公の陰キャぶりと活動拠点が部活でなくライブハウスであるのが新鮮なようである。


 高校時代は俺もライブハウスに通ったものだ。POGOダンスで脳内麻薬エンドルフィンをだしてトランス常態になるのはサウナより気持ちいいのは知っている。


 鳥肌がたち脳が活性化する。あれを知らない人が多いが、ラフィンノーズとかブルーハーツは流行っていた。ポゴスティックもうちにあったのだ。


「パパの陰キャ度を測ってるんだよ」と娘ちゃんはいった。「このアニメの主人公はマジで一人も友達がいないコミュ障だから、共感できるかどうかで視聴者が陽キャか陰キャか完全に試されるのよね」


「パパが試されて何か得があるの?」


「陰キャだったら絶対オモシロイんだよ」


「……面白くても嬉しくないね」


 おっさんが陰キャ認定されて何か意味があるのかは謎だ。誰も得をしないが、声をかけてもらえるのは嬉しい。


 先日、嫁さんと嫁さんの実家に二人で行ったら義妹さんと旦那さんもいて、色々とお喋りをしてきた。


 嫁さんは自分がコロナに掛かったことも息子くんが足に怪我をしたことも、娘ちゃんが公募推薦に落ちたことも実家に報告していなかった。


 理由は面倒くさいから……だが、俺は隠し事でもないので一部始終を話した。それも義父たちに心配をかけまいと考慮して。


「……お喋りクソ野郎」

「!?」


 帰りの車内で嫁さんはそういった。そして娘ちゃんと嫁さんは口が臭いくせに実家に全部お喋りしやがって「お前ほんと面倒くさいやつだな」と俺にいった。


「……見よっかな。ぼっちザ・ロック」


 その晩、ハブられたおっさんは年末番組を見ずに女の子しか登場しないバンドアニメを全12話一気にみた。それしかなかった。


 年末のブラックな生活にブラックジョークと辛辣なやり取りが続いていて寂しかったのだ。


 はっきりいってキャラが立っていないのが痛い。ボッチザ・メタルかボッチザ・パンクにしてもっとインパクトあるキャラを出せといいたい。大人しくていい子ばかりなのでロックな部分が描ききれていない。


 陰キャぼっちが心の拠り所に楽器練習に明け暮れた、という物語。実力はあるのにセッションになると調子が合わせられない。


 そこで技術よりも大切な精神上の結びつきを学び、本当に大切な何かを見つける青春成長ストーリーを期待していた。


 確かに陰キャはどことなく娘ちゃんに似ていた。娘ちゃんにとって女子校生だけの物語に違和感はないのだ。


 俺的には同じ顔の髪色違い女子高生軍団に必然性が見い出せず、ドラムとベースはもう少しイカれた年寄りか廃人で良かったと思う。


 犬の名前がジミヘンだったが、王道展開を期待するなら有名どころのロックの神様が枕元に立つくらいの演出がほしかった。


 このアニメではロックはたんなる仲良しになるための道具でしかなく、音楽である意味がないのだ。ギターや演奏がカッコいいので勿体なくてならない。


 ゆるい感じが最近の流行りなら仕方ないことだが、物足りないという感想しかない。そして朝、娘ちゃんが感想を聞いてきた。


「6話と7話がすごく面白かった。泣けたけど最終回は肩透かしだった」俺は正直にいった。残念ながらこのアニメのピークは6話である。


「ふざけんな、全部見たでしょ!」


「う、うん」


「まだわたし8話までしか見てないのに先まで見ちゃってさ、ネタバレ感想いってくるとか信じらんないんだけど」


「えっ、そうだったっけ?」


「お前ほんと面倒くさいな!」


「……パパ、少し気絶してくるよ」


 年始休みはしばらく気絶することにします(笑)。ええ、音楽系ドラマはアニメでやる必要があるんでしょうか。


 本物のボッチはロックよりヘビメタが好きです。ジューダスプリーストとかクイーンズライクとかオフスプリング、ホワイトスネイクとかメタリカやガンズアンドローゼス。


 綺麗な歌詞のポップな産業ロックより尖ったパンクが好きです。俺はプリーストライブのジャケットのように人差し指を高く天井に向けて自分に言った。


「お許しください……本物のぼっちはヘビメタが好きとか自身に陶酔して黒歴史をカクヨムに露見するようなおっさんのことです(笑)。ぼさろは素晴らしい作品です」







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