第2話 女教師のパジャマは反則です
僕が通っている私立蒼雲学園は、そこそこ生徒数が多く、そこそこ高い偏差値を誇り、そこそこ部活動が好成績を残し、そこそこ色んな人間が揃う、そこそこの高校だ。
僕はその蒼雲学園の2年生である。
そして、今年から僕のクラスの数学を担当する事になった先生が、いま目の前にいる
そこそこの高校には勿体ないくらいの美貌と抜群のスタイル、クールな性格で、生徒教師問わず学校中の男から注目されている。
更にふと見せる優しさがカッコいいとの事で、女子からも憧れの存在として人気を集めている超人である。
そんな冴木先生が同じマンションの、しかも真上の部屋に住んでいたとは。
これは神の起こしたもうた奇跡か。
と思ったがただ同じマンションだったからって何がある訳でもないね。
いや、ブラジャーが落ちてきた時点で奇跡は起きていたのかもしれない。
「え、えっと……もしかして貴方、うちの生徒…なのかしら?」
僕が"先生"と呼んだことから推測したんだろうね。
「はい、そうです。2-Aの長谷川です。
「あら、Aクラスなのね。気付かなくてごめんなさい。」
「いえ、まだ1度しか授業も受けていませんし、仕方ないですよ。僕も最初は気付きませんでしたから。」
まだ2年生になったばかり。
数学は昨日が初めてだった。
「そう言ってもらえると助かるわ……あっ、その…」
冴木先生は自分の格好を思い出したらしく、恥ずかしそうに小さく俯いた。
もっと恥ずかしいものを抱えているはずだが、それは忘れているようだ。
「…先生って、意外と可愛いパジャマ着てるんですね。」
「い、意外ってなによ……別に良いでしょ。」
「いえ、クールな先生だって噂を聞いていたので。授業でもあまり笑顔を見せませんでしたし。」
あまり、どころか全くであったが。
「……まぁ、私にはこういうのは似合わないものね。」
僕の言葉に何か思うところがあったのか、冷めた表情でそう言った。
その顔は学校での冴木先生を彷彿させるものだった。
僕は慌てて言葉を返す。
「い、いや、似合ってない事ないですよ!めちゃくちゃ似合ってます!」
「お世辞はいらないわ。」
冷たく切り捨てる冴木先生の言葉に、僕の中で何かのスイッチが入った。
冴木先生の瞳を真っ直ぐに見据え、思うがままに喋り出す。
「お世辞じゃありません!フワフワの生地も先生の大きな猫目と相まってまるで兎みたいに可愛いですし、水色と白のボーダーも先生の綺麗な黒髪が映えて最高です!」
「え、あの「それに!」……」
学校の女神に嫌われたくない一心で、思ったことを次々と垂れ流す。
「先生はスタイルが良いから着せられてる感もなくて可愛いんだけど大人っぽいし、モコモコでわかりにくいはずなのにちょっと胸が強調されてるのが反則的っていうか!」
「ちょっ、長谷川く「さらに!」……」
「ほっそりとした綺麗な首筋とフワフワパジャマの対比が美しすぎてどっかの美の女神様も嫉妬間違いなしだし、普段の先生とのギャップが可愛すぎてあざとくて尊くて!!」
「も、もうやめ「あと!」….う、うぅ……」
「良い匂いするし色気もやばいし歳上の魅力溢れ出てるし良い匂いするしめちゃくちゃ可愛いしエロいし綺麗だし!!あとめっちゃ良い匂いするし!!」
さっきの御下着様の香りに引っ張られているような気がするが、きっと気のせいだ。
「うぅ…もうやめ「まだまだ!!」…やめてってば!!」
「うぉっ!………あ、は、はい。すみませんでした。何か興奮してしまいまして。」
「う、うん。いや、その………気持ちは、伝わったわ。」
恥ずかしそうに俯く冴木先生。
顔から湯気が出そうになるくらい赤くなっていた。
でも嬉しそうに頬を緩めてニマニマしている。
そこは紳士らしく見ない振りをした。
「え、えっと…色々と変なこと言ってすみませんでした。」
冷静になったらセクハラ紛いな事も結構言っていた気がする。
捕まらないよね?
「う……だ、大丈夫よ。恥ずかしかったけれど……その、嬉しかった…から。」
………なにこの人、可愛すぎない?(半ギレ)
思わず禁断の恋に踏み込もうとして踏む前にバッサリ切られるところまで一瞬で想像しちゃったんだけど。
「……何か、先生の気に障るような事言っちゃったかもしれませんけど、さっきのに嘘はないですから。全部、僕の本心ですから。」
「う、うん……それはなんとなく伝わったわ……ありがと、ね。」
「い、いえ……。」
お礼言われちゃったよ。
「むしろ、ごめんなさい。急に怒ってしまって。」
落ち込んだ表情。
やっぱり怒ってたんですね。
「それは僕が悪いですから……ちなみに、良ければ何が悪かったかとか聞いても…?」
もう怒らせたくないし、同じ轍は踏みたくない。
「……私、クールだとかなんとか…中身まで見た目で判断されるのはあまり好きではないの。」
見た目クールな自覚はあるって事だね。
「そう、なんですか。」
これ以上はまだ踏み込めない。
先生の表情からそれを悟った。
でも何かがあったんだろうな、とは思う。
「……さて、私はそろそろ帰るわね。……改めて、ありがとう。」
冴木先生は帰る間際、ブラジャーの存在を思い出して頬を赤らめ、お礼を言った。
「いえ、気にしないで下さい。それでは……」
さようなら、と言おうとしたその瞬間。
くぅ……と気の抜けるような可愛らしい音が鳴った。
お腹が鳴った?
さっき夕食を食べたばかりだし、もちろん僕ではない。
「っ………」
羞恥に顔を赤らめ涙目で俯く先生の姿。
………反則や。
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