藤次郎-17

「ここに二名。監視の継続。残りは俺に続け~。二時間で戻る」


藤次郎の村にカシラ達追手が総勢20名。今は、藤次郎の家を近場の高台から見張っている。


「ここの集落へ延びる道は三本だ。一本は西からここに来た道。残るは二本。東に向かう道と北に向かう道。三班各六人にわかれて街道を一時間進め。半重郎たちがやられたのなら何処かに痕跡があるはずだ。俺なら山間の間道で待ち伏せをかける。いずれにしてもあいつの性分なら村のすぐそばで襲うだろう。こらえ性が無いからな。


よし!散開しろ」


半重郎たちが消息を絶って一週間が経った。カシラは半重郎が藤次郎の村で何かに巻き込まれたとみている。領地の外での事であれ、カシラの一団はいとも簡単にこの地まで移動してきた。基本的には旅人、商人、芸人を装い決められた地に集合するだけだ。当然、ここまでの偵察を出しているのだが。


カシラの班は来た道をまっすぐ先に進む道だ。東へと抜ける間道である。半重郎たちが館を立ったタイミングなら、この村で接触しているはずだとカシラは読んでいる。


「ほらな~。見てみろ! ここだ」


カシラは蛇のような目を細め笑みを浮かべて地面を指さしている。


「それじゃぁ~。この辺り。そうだな~。そこっ! そこの下見てみろ!!」

カシラの指さす下には見覚えのある黒装束が転がっていた。


「こりゃあ~酷い。酷い負け方だ。お前たち見て見ろ背中を刺され。首をはねられ。腹をきられ~。はんじゅうろ~。どうした?? 首の内から外に傷がある? はぁ~。おしゃべりがすぎたのか~。

どれもがまともに戦えていない。太刀での一突きによる急所への一撃。こりゃぁ~。藤次郎は想像以上の手練れだ。心して置け。さもないとこいつらの二の舞だぞ~」


そう言って、カシラは六つの躯を前に一歩、歩み出て合掌する。


「ご苦労だったな。お前達の仇は俺が必ず取ってやる」


唇を噛みしめながら後ろを振り返り、


「お前らお別れをしろ。丁重に埋葬してやれ」


カシラは一団から離れて上を仰ぎ見ていた。

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