弐場 四
「あ~。疲れたぁ」
靜華が背中に少女をおんぶして屋敷に戻ってきたのはそれから2時間後の事である。
「だれか~いらはる~?」
真っ先に靜華の声に気付いたのは弁慶だった。
「靜華様、いかがなされました?」
弁慶は靜華のなりを見て驚きすぐさま吉右衛門を呼んだ。
「靜華様が大変だ! すぐ来てくれ!!」
吉右衛門も弁慶の声の様子に普通ではない何かを感じ取り慌てて玄関まで走って出てきた。
「大丈夫か靜華!」
「あぁ~吉。ちょっと、ぼ-っと突っ立てへんでこの子」
と言うと背中に向き直り少女を見せた。
靜華は見たところ怪我などはなさそうなのだが、二人には何も理解が出来ずに棒立ちになっている。
「ちょっとな。あんたらこの子を頼む。ってことやろ察っせや! このボケ茄子共が!! ほんまでかいだけやな。二人とも。頭ん中にスが入ってスカスカなんやろな。育ちすぎや!」
顔から着物までまっ黒な靜華が玄関先で二人に罵声を浴びせてきた。吉右衛門もこの間の仕返しとばかりに
「ちょっとな、ほんな真っ黒で屋敷に上がられたんは迷惑やさかい外の井戸で行水でもして来ておくれどす」
「はぁ~。なんや? 来ないだの仕返しか? ちっさ!! 人間がちっさ!! それに、どすってなんや。ウチはどすなんて一度も使ってへんわ!! 地元の人間はドスなんて使わんのや覚えとけ! この、スイカ頭! 弁慶、ウチの着物と下履き洗ってや!!」
「お前、地元じゃねぇだろう! それに、なんで弁慶を使おうとしてるんだよ」
「見て見なはれや! このバカでかい方はもうハアハア言うとるわ!! ご褒美やもんな? 弁慶」
吉右衛門が弁慶を見ると確かに赤面しながら嬉しそうだった。
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