弐場 五

「この娘が俺たちを襲ったってことか。でも、何でお前が連れてくるんだ?」


吉右衛門が布団に寝ている少女を見ながら不思議そうに靜華に聞いていた。


「ん? あぁ。そこの市場で拾った。倒れてたから拾った」


靜華が少女を見ながら早口で答える。


「その辺の動物じゃあるまいし。いつ。どこで。誰が。どうした? 靜華答えろ」


吉右衛門も引き下がるつもりは毛頭ない。


「わかったわ。しゃ~ない。今朝な見に行ったんよ。昨日の寺に。そしたら、その子が一人で倒れてたんな。ほんで、生きとったから連れて帰ってきた。」


チラッと吉右衛門の顔を見てから視線を外すように外を見ると弁慶が嬉しそうに静華と少女、二人の洗濯物を洗っている。


「いや、でも、あそこには結構な数の僧兵が居たろう? それはどうしたんだ?」


「ああ、それはな。行った時には寺は無かった」


「はぁ? 何言ってんだ?」


「だから、この子の力で全部消し飛んで何も無かったし人もおらんかった」


「ちょっと待てよ。お前、あそこに俺たちの仕事が……弁慶! 弁慶!! 大変だ!!」


青ざめた吉右衛門が慌てて、庭先で一人嬉しそうに洗濯物をしている弁慶に、部屋から飛び出して事情を説明している。

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