漆場 一

その頃、靜華は吉右衛門の会敵した場所からそう遠くない場所で霧の反応の中に見知った人物を探し当てていた。


「爺っち! 見つけたで! やっぱりお前なんやな。全部の黒幕は」


「見つかってしもうたのぅ。これはこれは」


「とぼけんなや! ウチには無駄や! 白状しぃや」


「ひひひ。そう怒りなさんな。儂はお前様の力を見たくてな。それでいろいろと試させてもらっただけなのじゃ。おかげで少しばかり勉強させてもらえたぞ。儂の力は見た力を自分の力とする事ができるのじゃ。ひひひひ」


「それで、ウチらの行くとこ行くとこで……ウチの力がどんなものか見るためだけにあんなにぎょうさん人を殺したんか!」


「殺したのは儂ではないぞ? あ、あぁ、殺したのもあったな。新しい力を直ぐに試して見たくなってなぁ。それ以外はお前様も殺したであろう?」


「うるさい!」


「しかしなぁ、最初の巫女殿から受け継いだ力は心を読むだけだったが、そのおかげで随分役に立った。おかげで今では、法皇様の懐刀とまで言わるようになってな。だがのう、そうなるともっと別の力が欲しくなってしまうものなのだな。そこに、お前様の噂を聞いてな。お前様を見ていると最初に会った巫女殿の御力どころではなくてな、その力が欲しくなったのだ」


「精が何を言う! ウチの元で退治してくれるわ! おとなしく口を閉じて目でも瞑っておれ!」


「お? お前様。人間ではないとお見通しですか? さすがですなぁ。ですがな、最初の巫女殿も初めは威勢が良かったが最後は姉さま、姉さまと言って消えて言ったぞ。今度の巫女様は如何かな? ひひひ」


唇を噛みしめ鋭い眼光を放つ靜華が右手の人差し指と中指を行徳に向け奴の時間を止めにかかった。


「こうであろう?」


そう言うと行徳が既に同じ格好を取り靜華の動きを止めていた。


「な……」


「驚いたか? お前様が儂に見せたお力の全てとは言わぬが儂も使えるのだぞ。ひひひひ。

儂にも、力があるのだ。もっとも、お前様方のような力では無いがな。いやぁ、ここまでなるのには時間がかかったのぅ。何百年かかったかのう、それこそ地面を這いずるような卑しい存在から自我が芽生えて言葉がしゃべれるようになって……自分の力に気付くまで、本当に長かった。今ではどうじゃ、降天の巫女を儂が止める事が出来るまでになった。気分がいいのう。

どうじゃ? 儂如き地虫に弄ばれる気持ちは?これからどうやって取り込んでくれようかのう? ひひひ。ついでに教えておくとな、儂を止めようともそれは出来ないぞ。そんなものはとっくに克服したわ!」


と言った行徳は靜華の頬を撫でている。

行徳の身体から黒い霧が生じ靜華の身体を包み込んでいく。

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