スノーホワイト&シンデレラ

水上下波

23:15

 

 美しい所作というのは、それだけである種の魔力を備えている。繊細に造られた彫刻のように、触れることすら恐ろしくなるほどの魔力を。

 

 そんなことを想ったのは、目の前のバーテンダーが流れるようなスムーズさで、あっという間にカクテルを作り上げていたからだ。

 

「魔法みたいね」

 思わずそう呟くと、彼は不敵にほほ笑んだ。

 

「良いバーテンダーは、魔法が使えるんですよ」

「ふぅん」

「と言っても私が良いバーテンダーだ、なんてことを言いたいわけではないですけどね」

 

 話をしながらも、決してその手は止まることがない。やがて間もなく、三種類のカクテルが出来上がる。

 

「お待たせしました」

 

 そう言いながらグラスを差し出す仕草も、惚れ惚れするほどに美しい。

 指の一本一本、爪の先まで清潔に整えられていて、それだけで好感が持てる。ただ短く切りそろえただけではなく、ちゃんとヤスリがけされた爪先は、薄桃色に店内の照明を反射している。

 

「どうぞお召し上がりください」

 

 その言葉が、ゲームスタートの合図。

 私は軽くうなずいて、グラスに口を付ける。

 

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