第27話「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで・・・・・・」
放課後になって石上くんが現れない、なんて事はなくなんならすでにワタシのことを待っていた。
「ああ、よかった。来てくれたんだね、奏音ちゃん」
「約束だしね」
「あ、はは・・・・・・それで、その・・・・・・」
「なに?」
ワタシはさっさと終わらせたいからそっけなく答える。
「ええと。良ければ、ボクとお付き合いをしてください!」
遠く野球部の誰かが『カキーン』と気持ちよくボールを打った音が聞こえたような気がした。
「ありがとう。けど・・・・・・ごめんなさい」
ワタシは決めていた通りはっきりと断る。
「は・・・・・・な、なんで?」
「なんでって。あなたのことが嫌いだからよ」
ワタシの声は石上くんにもちゃんと聞こえただろう。ワタシは彼のことが嫌いなのだ。
「は・・・・・・ぁ?なん、で」
「ちょっとは自分で考えたら?」
ちょっとワタシも腹がってきた。
「なんで・・・・・・なんでなんで」
「・・・・・・」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで・・・・・・」
彼は本気でわからないといった様子で頭を抱える。ワタシは彼の様子を見て・・・・・・限界だった。
「――な」
「あ・・・・・・?」
「ふざっけんな! 何でワタシがお前のことが嫌いかわからないの!筋金入りのバカなの?!」
「なんで・・・・・・?」
今なお本気でなぜワタシが怒っているのか理解していないようだ。
いや、ワタシが怒っていることが分かる時点で評価してあげるべきなのかもしれない。
「お前がっ! ワタシの小説をクラスに教えたんからよ!」
「なんで・・・・・・なんで教えちゃいけないんだ? ボ、ボクは・・・・・・!」
「あなたの意見なんか聞いちゃいない! ワタシは・・・・・・っ!?」
ワタシは次の言葉を紡ぐことができなかった。
石上くんがワタシに襲い掛かり口元をふさいできたからだ。それだけではなく、ワタシは思い切り地面の上で下敷きにされ上に彼が馬乗りになる。
「違うっ! ボクは馬鹿にする気持ちなんてなかったんだ! 君が書く小説が素晴らしいと思ったからみんなに教えたんだ! キミのことが好きだったから! キミから好かれるために努力をしたんだ! なあ! ボクと付き合え!」
彼は口から手を放し胸倉をつかんで必死な目で訴える。
ワタシは・・・・・・怖くて力が入らなった。
この状況が何よりも恐ろしくて、もう何をしたらいいのかわからない。
頬が冷たいものを流れたのが分かった。
「なあ! なあっっっ!」
彼はいまだにワタシの胸倉をつかみ訴える。
「泣いているのかい・・・・・・? 大丈夫だよ。ボクがぬぐってあげるからね・・・・・・」
彼の日焼けの薄い、白い指がワタシの頬を撫でる。
いやだ、触らないで。
そんな声も出ない。抗う腕に力がこもらない。
ああ、ああ、嫌だ。
助けて。
「そうだ。こういうのはどうかな?」
彼はそういうと掴んでいた胸倉から手を放し――下の・・・・・・ワタシの胸に触れた。
「ああ・・・・・・ああ・・・・・・いいねえ・・・・・・」
「ひっ・・・・・・!」
「どうしたんだい?」
「あっ・・・・・・」
もう駄目だ。もう、あきらめて、もう・・・・・・。
『奏音!』
どこかで、おにーさんの声がした。それが幻聴なのか、本当にすぐそこにいるのか、それさえもわからない。
ただ、おにーさんの声にハッとさせられた。けれども、現状は何一つ好転しない。
「・・・・・・けて、たすっ」
片手でなお触り続け、もう片方の手で口元をふさがれる。
「もしかして助けを呼ぼうとした?ダメだよ、ボクらはこれから付き合うんだから・・・・・・助けなんか呼ぶような間柄じゃあないだろう?」
そういう彼の瞳は狂気に染まっている。
ワタシの胸を触り続けていた手は、徐々に下の方へと這うように下の方へ伸びていく。
その時だった。
「僕のかわいい妹になにしてるんだてめぇええええええええええええええええええええええええええっっっっ!」
ワタシの上にいた彼が蹴り飛ばされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます