第17話 空腹を消す

 空腹との戦い。それこそがダイエットの一番の苦しみと言えるのではなかろうか?


 先ほど『空腹は恐ろしくない』や『当たり前の事であって異常事態ではない』と言ったばかりだが、やはりそうは言っても空腹というものは少なからず苦しくも耐えがたい状態なのは間違いない。


 そして、そんな空腹が消えてなくなればいいと思う人は少なからずいる筈だ。


 皆が忌み嫌う空腹のあの辛さは、人体が飢えてしまわないようにする為の言わば防御反応だ。


 そんな防御反応が無くなる、またはあまり感じなくなる、なんてアイテムがあるとしたらそれはダイエットを行うにあたってぜひとも利用すべき必須アイテムではなかろうか?


 私もつい先日そんな素晴らしいアイテムの存在を使用人の娘から教えて貰ったばかりなのだ。


 それでは発表しよう! 空腹を抑える便利アイテム、それがこのーーーー



《豆乳おからパウダー》だぁぁぁ!

 


 この豆乳おからパウダーという物は、以前ジェラールが進んで食べていた豆腐を作る工程で生まれる物だそうだ。


 歯応えも何もないあいつから空腹を抑える便利アイテムが生まれたというのだから驚きだ。


 歯応えの無い奴が産み落とした歯応えのある奴みたいな……うむ、自分で言ってて意味が分からん。


 とにかく! この豆乳おからパウダーという物を食事に取り入れる事で不思議と空腹感が抑えられるのだ。


 それを知ってからというもの、私は毎日のように豆乳おからパウダーばかりを必死に食べ続けーーーーなんて馬鹿な事はもうやらない。


 それではダメなんだ。


 それだけは絶対にやるべきでは無い。


 必ずーー失敗するから。


 では、私はどのように豆乳おからパウダーを使用しているのか?


 以前、私は朝食のメニューを、


《何もつけない焼いただけの食パン》


《ブラックコーヒー》


 この二品に決め、毎朝決まった量の食事をする事にした。


 だからこの、ブラックコーヒーに豆乳おからパウダーをティースプーン1杯入れて飲んでいるという訳だ。


 特に味のクセといったようなものは無く、私はすんなりと受け入れる事が出来た。


 ここでついつい欲張って、スプーン2杯3杯と追加してしまうと大変な事になるから注意してくれたまえ。


 うむ? どうなるか? 


 はっはっはっ! まぁ、百聞は一見にしかず。やってみてもいいのではないか?


 でだ、そんな朝食を数日間続けていると不思議なことにお腹が空かなくなってきたのだ。


 食パン1枚とコーヒー1杯しか飲んでいないのに、だ。


 私の予想では、おからパウダーが水分を吸って胃の底に溜まっているからではないかと思うのだ。


 胃の底にそこそこの重量を伴って溜まっているから、満腹感を得ている的な……。(シャレではないぞ?)


 満腹感を得ている。

 

 だからお腹が空かない。


 食べ物の事が頭から離れる。


 不必要な飲食をしない。


 摂取カロリーを抑えられる。


 次第に胃が小さくなる。


 そもそも、食べられる量が減る。


 必要な物しか食べられなくなる。


 必要な物を、必要な時に、必要な量だけ。


 気が付けば私は出来ていたんだ。


 ローレライにあの日言われた、あの言葉が。






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