第12話 答え
「はぁっ……無い物ねだりはみっともないな」
体重計の上で、そうぽつりと呟いたジェラールは小さく肩を竦めた。
どれだけ他人の体質に羨望の眼差しを向けようと、自身がそんな体質に変化するわけではないのだ。
夢を見る暇があるのなら、現実をしっかりと直視し、対策を練るべきなのだ。
他人とは違う、
自分の体質に合った、
自分だけのダイエット方法。
それがどこかにきっとある筈で、それこそが答えが出ない問いの答えなのだ。
ジェラールがずっとずっと追い求めているーー答え。
「うむぅ……」
それよりも結局、誰なんだろう?
頭の中にぼんやりと浮かぶ、その輪郭さえも定まらない人物。
超高燃費ボディーの持ち主とは……?
そんな人物が身近にいたような、いなかったようなそんな気が……。
そもそも私とその人物とでは何が違う?
何が違うからこれほどの違いが見た目に出る?
やはり、体質か。あるいは食事の種類? 食事の内容? 個人の能力? 秘めたる才能? 私生活? それぞれの家庭の特色?
「家庭……?」
その人と私とでは衣食住が違うからこれほどの違いが出る?
その人と私は赤の他人だからこれほどの違いが出る?
じゃあ……、
この屋敷で私と共に暮らす使用人はみんな私と同じ見た目であるか?
違う。
では、親族は?
同じ屋敷で暮らす、同じ血が流れる、親子ならばどうだ?
そうだ、
彼女は、
彼女はどうだ?
彼女は私みたいに太っているか?
否。
では、彼女と私では何が違う?
ほとんど同じ生活スタイルを送っている、私の分身とも言える彼女ーーローレライ。
ローレライと私はーー
「……何が違う⁉︎」
答えの輪郭を垣間見たジェラールの胸がドクンッと激しく脈を打った。
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