第2話 ファウスト

神 =

ねえ、お前。お前は、どう思うかね? この少年の話を。少年は、自分は 狂人ではないと、言い張るんだが。

閻魔=

申し訳ございません。わたくしには、はっきりとは分かり兼ねます。

神 =

どうしてかね? その頭脳明晰さにおいて、右に並ぶ者なしと言われるお前に分からぬとは。

閻魔=

とんでもございません。わたくし如きが、そのような。おからかいになっては困ります。あのファウスト一人、騙すことが、いえ論破できなかったのでございますから。

神 =

あのファウストは、何もかもを知り尽くした人間だ。さしものお前でも、無理であろうよ。


 深く頭を下げられた閻魔大王に対し、神さまがその肩に手をかけられて慰めておられるようでした。身体を縮こませながら、何度も何度も頭を下げられています。時折見せられる苦痛に歪んだお顔が、なんとも痛ましくさえ感じられます。


閻魔=

ありがとうございます。

さてさて。一体、人間世界には、真実などと言うものがあるのでございましょうか? その時代では正しい事であっても、後の時代になると誤りだとされる事が、多々あるようですし。

神 =なるほど、それも一理あることだな。では、お前はどう思うかね?


閻魔=

わたくしでございますか? 神である貴方さまがご判断に迷われている事に具申するなど、おこがましいことでございます。ですが有態に申しまして、永遠の真理などいように思われます。人間世界は勿論のこと、恐れ多い事ですが、この天界におきましても。

神 =

ほお、この天界にもかね?

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