偽人闇鬼の為人

ブリル・バーナード

第1話 悪鬼羅刹

 

< 読むときのご注意! >

・第一章は考えておりますが、それ以降は考えておりません! ノープラン!

・エタる可能性があります。ご了承ください。

・ご都合主義のハーレム作品(予定)です。

・レビュー&感想はカクヨム様の方針に従ってください。レビューは【他者にオススメ】するためのものです。『自分に合わない』、『面白くない』などと書く場所ではありません。書くなら感想欄へお願いします。


・投稿は三日に一回を予定しています!


以上、豆腐メンタルの作者からでした。

それでは、拙い作品ではありますがお楽しみください。


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―――眠らない夜の街。

 煌々と街中を照らすLEDライト。煌びやかなネオン。店内へと誘う看板。

 居酒屋やスナック、キャバクラなど夜のお店は今が稼ぎ時だ。

 夜だというのに人が街の中を行き交い、酔っぱらった大学生の集団が丁度店から出てきた。声が大きく騒がしい。

 合コン終わりらしい。しきりに女性を二次会のカラオケやさりげなくホテルや家へと誘うチャラチャラした男たち。下心が丸見えだ。

 それをどこか憐れに眺める疲れきった顔の仕事帰りの男性。現実の厳しさを知らない甘ったれたお子様とでも心の中で思っているのかもしれない。

 様々な感情が明るい夜の街に渦巻いていた。


 一人の少年が歩いている。


 黒髪に紅い瞳の少年だ。年齢は16、7歳程。高校生といったところか。日本人にしては顔の彫りが深く、一般的にイケメンの部類に入るだろう。少し眼光が鋭い。

 服装は少し着崩した黒い紋付羽織袴。紋は金糸で縫われた揚羽蝶。帯に指しているのは古式なデザインの単発式拳銃。白を基調として紅で装飾された華麗な銃である。

 白足袋しろたびに白鼻緒の雪駄せったを履き、優雅に黒い扇で扇ぎながら夜の街を静かに歩く。

 令和の時代に珍しい和服姿の少年だ。コスプレだろうか?

 周囲の奇異の視線が向けられるかと思いきや、しかし、行き交う誰の目にも留まらない。まるで少年のことなど見えていないかのように。認識できないかのように。


 光が輝くところに闇がある。明るければ明るいほど、影もまた色を濃くする。

 店と店の間。裏口がある建物と建物の狭間。表の光が届かない暗闇の世界で濃い影が蠢いた。


 どうやら、酔った男たちのナンパは失敗したらしい。

 チッと舌打ちする男に背を向けて、肌を火照らせたほろ酔いの女性が少し焦り顔でその場を離れる。しきりにスマートフォンを確認して時間を気にしている。門限か、それとも終電の時間が近いのだろう。

 彼女が闇の狭間の前を足早に通り過ぎた。

 その瞬間、影から何かが飛び出して、女性の肩に飛び乗った。赤子ほどの小さな姿だ。

 薄汚れた小さな人型。カサカサに乾いた赤い肌。骨ばった手と鋭い爪。尖った歯。そして、額から伸びる小さな角。


―――異形の化け物、鬼だ。


 一般的に子鬼、もしくは小鬼と呼ばれる存在。肌は汚れて赤黒いが赤鬼に分類されるだろう。

 鬼と呼ばれる異形の化け物は、遥か昔から嫌われ、恐れられ、時には神として敬われて崇められている。そんな人ならざる者は、現代においても人間の認識の外でひっそりと存在していた。

 女性は首に抱きついた子鬼に気付かない。重さも感じないし姿も見えない。


 彼らの存在に気付くためには、見鬼けんきさい、所謂霊感が必要である。


 存在を知られないことを良いことに、ケケケッ、と歯をむき出して愉快そうに笑った子鬼は、香水と汗、それから酒の香りが漂う彼女の首筋へと少しずつ顔を近づけていった。

 鬼は人を喰らう。昔から伝わる有名な言い伝えだ。

 尖った歯が白い肌に触れる。そして、肌を喰い千切る寸前―――何者かがすれ違いざまに子鬼を掴み取った。


『ギャギャッ!?』


 肩から子鬼がいなくなったことさえも女性は気付かない。彼女はそのまま小走りで雑踏に紛れて見えなくなった。

 何者かに掴まれ、ギャーギャーと汚い声で喚き暴れる子鬼。

 その時、男の静かな声で言葉が紡がれる。


「鬼の規律ルール、二箇条―――」

『ギャッ!?』


 子鬼を掴んだ和服を着た少年が、子鬼の顔の前に閉じた黒い扇を突き付ける。


「【その一、強き鬼が正義なり】」

『ギャ!』

「【その二】」


 少年が扇を広げた。絵柄は舞う銀の揚羽蝶。鋭く研がれた金属製の扇の縁が輝く。

 彼がその気になれば暗器である鉄扇であっさりと子鬼の首を刎ね飛ばすだろう。

 鋭い眼光の紅い瞳に睨まれて、子鬼は竦み上がった。


「【人喰いはご法度。絶対の禁忌なり】 君は死にたいのかい?」

『……ギャウ』


 大人しくなった子鬼はフルフルと首を横に振った。

 ちょっとした悪戯だったのかもしれないが、強者の殺気が籠った忠告を受ければもう人を襲うことはないだろう。

 少年は子鬼を地面へと下ろし、しゃがんで視線を合わせる。


「多少の悪戯なら目を瞑ろう。ただし、人喰いはダメだ。見過ごすわけにはいかない。君も鬼ならわかっているだろう?」

『ギャウ…………ギャ! ギャウギャウ!』


 何かを言いたげに子鬼が行き交う人間、それも女性をしきりに指差し地団太を踏む。身振り手振りで訴える。

 少年は何となく彼女の言いたいことがわかった。


「えーっと、ひょっとして羨ましいのかい?」

『ギャウ!』

「……もしかして、君って女の子?」

『ギャギャ!』

「あーごめんごめん。謝るから殴らないで!」


 小さな拳でポカポカと殴る子鬼。どうやら疑われたことにご立腹らしい。

 訳すのなら『わからないなんて失礼!』といったところか。『これだから男は……』とも言っている気がする。

 美に憧れるのは人間も鬼も変わらないらしい。

 どうしようか、と少年は悩む。


「一番は格を高めることなんだが」

『ギャ!』


 ふんす、とやる気に満ち溢れている女の子の子鬼を見ていると、ここで見捨てるのも気が咎める。

 仕方がないか、と少年は子鬼でもわかる地図を描いて渡した。

 なにこれ、と首をかしげる子鬼に少年は説明する。


「そこの地図の場所に偉大で強大で優しくて綺麗な女性の鬼が二人も棲んでいる。阿曽媛あそひめという苗字の女性たちだ。もしたどり着けたら修行をつけてくれるだろう。言っておくが想像の数百倍は地獄だぞ」

『……ギャ!』

「それでも行くか。なら、たどり着くことも修行の一環だ。頑張れ」

『ギャウ! ギャギャウ?』

「あぁ、俺の名前か?」


 コクンと頷いた子鬼の頭を、少年は人懐っこく笑いながら優しく撫でた。


「―――俺の名前は阿曽媛あそひめ羅刹らせつ。君の師匠となる美鬼びき姉妹、阿曽媛あそひめ温羅うら阿曽媛あそひめ王丹おうに義弟おとうとさ」


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