第104話:混浴争い
盗賊共は全員王都まで引き連れて、衛兵に引き渡すことにした。道中に襲われたことを全て話すと、衛兵達も納得して引き取ってくれた。
ぶっちゃけ賊なんか生かしておく価値は無いしモンスターの餌にしてもよかった。けどエンペラーとやらはテロを計画しているみたいだったし、それらの情報を吐かせるためにも取り調べを受けさせるほうが有益だと判断した。
奴らの結末なんて運が良くて鉱山に永久就職。悪けりゃそのまま極刑だろう。
いずれにしろ、盗賊共が二度と自由になることはあるまい。
そんなこんなで一通り終わらせた後にようやく家に帰ることができた。
「ふぅ~……なぜか変に疲れたわね~……」
「だね~……」
2人とも家に入ってからすぐに座ってしまった。
比べてリリィは疲労を感じさせないぐらい平然としていた。しかし少し様子がおかしい。
「ん~……」
「どうしたんだ? そんなに手を見つめて」
「まだまだ強くならないとダメだなーって思ったんだ。あの時に力負けしなければもっと戦えたはずなのに」
「あー……」
ミノタウロスの攻撃を真正面から受けていたからな。その時に武器を弾かれたのが悔しいんだろう。
「まぁリリィより強いモンスターなんていくらでも居るよ。その悔しさをバネにしてさらに強くなればいい。まだ発展途上なんだから強くなる余地はあるさ」
「……うん。そうだな。もっと強くなってどんなやつもぶっ飛ばせるようになってやる!」
「うむ。その心意気だ」
リリィは落ち込むこともあるが、立ち直りも早くて心強い。こういう性格のほうが頼りになるし、こっちとしても安心だ。
「それにしても汗かいちゃったわ……」
「私も……走ってたからね……」
「……あっ。そうだ!」
ラピスは立ち上がって俺のほうに近づいてきた。
「ねぇねぇ。これからお風呂に入ろうと思ってるんだけど、ゼストも一緒に入らない?」
「……え? 俺も?」
「だってゼストも汗流したいでしょ? だったらあたしが洗ってあげるわよ!」
「ゼストさんの汗……」
「どう? どうせ後で入るんだから一緒に入らない?」
確かに俺もさっぱりしたい気分ではあるが、無理して一緒に入る必要も無いんだけどな。
前みたいに背中を流してくれるのかな。
「ねぇ一緒に入りましょうよ! フィーネもいいわよね?」
「…………え? う、うん。そうだね」
「ほら! フィーネもこう言ってるわけだし。どう?」
「まぁ……そこまで言うのなら……」
「決まりね! じゃあ準備するわね!」
ラピスはそのまま風呂場に向かおうとするが……
「じゃあアタシも一緒に行く!」
「え、ええええ!? リリィもあたし達と入るの?」
「うん! 賑やかなほうが好きだし! みんなと一緒に入りたいと思ってたし楽しいはず!」
「ダ、ダメよ! リリィはダメー!」
「えー! 何でだよー!? どうしてアタシだけダメなんだ!?」
「だって……それは……」
ラピスはリリィの胸元を羨ましそうな目で見つめる。
「う~………………やっぱりダメー!! ゼストと一緒なのはダメー!」
「えー!? だから何でなんだ!? ズルいぞ!」
「とにかくリリィはダメなのー!」
「何でだー!? 納得いかないぞー!」
その後もしばらく言い争いは続き、結局俺を抜きにして3人で入ることで決着がついた。
俺はベッドの上に寝転がって孤児院のことを考えていた。
あの盗賊の言うことをまともに信じたわけじゃない。ただ単にキッカケとなって思い出していただけだ。
……そうだ。
久々に、あの子に会いに行こうかな……
――――――――――――――――――――――――――――――
近況ノートにAI作成による各キャラクターのイラストを載せました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます