第95話:姉妹と混浴
俺達はレオンさんに手配してくれた馬車に乗り、無事に家に戻ってきた。
久々ともいえる我が家は何とも言えない安心感があった。やはり自分の家は落ち着くな。購入してよかったと思う。
そんなことを思いつつ、部屋でのんびり過ごし日が暮れていった。
その日の夜のことである。
俺は1人でゆっくりと風呂にでも入りたいと思い、風呂場へと向かった。
それから脱衣所まで辿り着き、ドアを開いた。
すると――
「…………ッ!?」
「!! ゼストさん……!」
「あ……」
そこには服を脱ごうとしている姉妹の姿があった。
……やっべ。
「ご、ごめん! ちゃんと確認するべきだった! すぐに出ていくよ!」
「待って!!」
急いで出ていこうした瞬間に背後からラピスの声が聞こえてきた。
「な、何だよ」
「あのね……その…………なんというか……あの……」
「お姉ちゃん……? どうかしたの?」
「その……い、一緒に入らない……?」
「え……?」
うん? 何と言った?
なんかとんでもない事が聞こえてきたような……
「お、おい……自分が何言ってるのか分かってるのか?」
「お姉ちゃん!? どうしたの!?」
「だ、だって……あたしは何も恩を返せてないから……背中を洗うぐらいのことはしたいのよ」
「ラピス……」
なるほどそういうことか。
ラピスなりに悩んでいたということかな。
「フィーネだってそう思うわよね?」
「そうだけど……」
「もしかしてゼストは嫌なの……? あたし達と一緒に入るのが……」
「いやそういう問題じゃなくて……」
さすがに男女が一緒に入るのは問題があるだろう。それが分からないほど幼くはないはずだ。
年頃の女の子なんだから、裸を見られたくないと思うんだけどな。
「つーか本当にいいのかよ? 俺が一緒だと落ち着かないんじゃないのか? 男に見られるのは嫌じゃないの?」
「そ、そんなこと無いわよ! それに、あたしはスタイル良くないし……おっぱいも無いし……」
「だ、大丈夫だよ! お姉ちゃんはこれから成長するはずだし! もっと大きくなるよ!」
「そ、そうかな……?」
「まだまだ大きくなるって!」
ラピスはまだ成長期なんだし。胸元が平らなのは気にする必要ないと思うんだけどな。
こんなことは口にはし難いけど……
「というかフィーネはいいのか? 俺と一緒なのは嫌じゃないのか?」
「そ、そんなこと無いですよ! 全然嫌じゃないです!」
「でも恥ずかしかったりしないのか?」
「そうですけど……ゼストさんになら見られても平気ですよ。それに……」
「それに?」
「私の裸を見ても面白くないでしょうから……」
そういって、悲しそうに自分の胸元を眺めた。
フィーネもラピスとほぼ一緒の体形だからな。だから自信が無いんだろう。
「自信持ちなさいよ! フィーネだっていつかおっぱい大きくなるわよ!」
「そ、そうかな……?」
「さっき言ってたじゃない! これから成長するはずだって。だからフィーネも立派に育つはずよ! なんたってあたしの妹だもん!」
「お姉ちゃん……!!」
…………これに関してはノーコメントとさせて頂く。
「ほ、本当に一緒に入るのか? 俺は時間をズラしてもいいんだけど」
「あたしは気にしないってば。みんなで一緒のほうが楽しそうじゃない!」
「むしろ一緒に入りたいぐらいですから……」
「え? そうなの?」
「あ……そ、その……私もお姉ちゃんのお手伝いしたいと思ったんです!」
「そういうことね」
どうやら本当に平気な様子。
もしかしたら兄妹みたいな感覚なのかもしれない。だからあまり抵抗が無いんだろう。2人とも兄が欲しいって言ってたしな。
というわけで一緒に入ることになった。
さすがにそのままという訳にはいかず、全員タオルで体を隠すことにした。
そして風呂場に入り、体を洗うために椅子に座った。
すると2人とも近くまで寄ってくる。
「じゃあ背中洗っちゃうわよ! ゼストは何もしなくてもいいからね!」
「お、おう……」
「フィーネは右側ね。あたしは左側でやるから。これなら一緒に出来るわ」
「うん。じゃあいきますね」
そして2人は泡立てたタオルを手に取り、俺の背中をゴシゴシと洗い始めた。
「どう? 痛くない?」
「丁度いいよ。もう少し強くしてもいいぐらい」
「じゃあ少し力入れてみますね」
あ~………………いいなこれ……
程よい力加減で背中が洗われていく。これは予想以上に快適だ。
自分でやるより楽だし、何より手が届かない所まで行き渡るから気持ちいい。
やばいな。これは癖になりそうだ。
今日だけじゃなくて定期的にやってもらおうかな。
「ん~……ねぇ。両手広げてよ」
「え? 何で?」
「ついでに腕も洗っちゃうわよ! ほら早く」
「お、おう……」
言われるがままに腕を広げると、それぞれゴシゴシと洗ってくれた。
ラピスが左腕を、フィーネが右腕を持って撫でるように手を動かす。
ここまでされると少し恥ずかしくなってくるな。
まるで上級貴族がやってもらってるような光景だからな。あくまで偏見だけど……
これはこれで楽でいいんだけど……やはり手に届く範囲は自分やったほうがいいかな。
そんな事を考えているとフィーネの手が止まり、とんでもないことを言ってきた。
「そ、それじゃあ……今度は前の方も洗いますね……!」
「えっ……いやいや待て待て。そっちは自分でやるから!」
「だ、大丈夫です! 目は閉じていますから!」
「いやそうじゃなくて!」
さすがに前は恥ずかしいってレベルじゃない。そこまで人に任せるつもりもないし。
というかフィーネってこんなこと言ってくるような性格だったっけ……?
「本当にそこまでしなくていいから! 俺ばかり洗うんじゃなくて、自分たちも洗ったらどうだ?」
「そうね……もうだいぶ綺麗になったみたいだし。この辺でいいかしら?」
「うん。後は自分でやるから大丈夫だよ。ありがとな」
「よかった。今日だけじゃなくてまたやってあげるからね! 必要になったらいつでも呼んでくれてもいいからね!」
「お、おう」
それからは皆それぞれ自分で洗うことになった。
そして軽く流した後に、皆で一緒に湯船に浸かることになった。
「ふぅ~……いい気持ちね~」
「あったまるね~」
「…………」
俺は何となく気まずくて、背を向けて浸かっている。
タオルで体を隠せているとはいえ、さすがにジッっと見ているわけにもいかないしね。
「う~ん……」
「どうしたの?」
「やっぱりもう少し大きくならないかしら。リリィのおっぱいが羨ましいわ……」
「リリィさんはとっても大きいもんね~」
「半分でいいから分けて欲しいわ……」
「でもあんまり大きいと大変みたいだよ? リリィさんも重くて邪魔だって言ってたし」
「ん~……確かに動き辛そうね。それでも一度体験してみたいわ……」
「お姉ちゃんならいつか叶えられると思うよ」
背後からそんな感じの会話が聞こえてくる。
それからしばらく湯に浸かり続けていると先に2人が上がっていき、風呂場から出ていった。
残された俺は体を広げてリラックスしていた。
やはり俺としては、1人でのんびり入るほうがすきかな。
たまには他の人と入るのも悪くはないと思うが、基本的には1人で入りたい派だ。
もう十分体も温まったし、そろそろ上がろうかな。
そう思って風呂から上がり、出口に向かう。
そしてドアを開くとそこには――
「……? フィーネ? そこで何を――」
「うひゃぁ!!」
「うおっ!?」
ビックリした……
ドアを開けてすぐ目に入ったのはフィーネの背中だった。
先に風呂から上がったからもう部屋に戻ってるかと思ってたんだがな。既に着替え終わっているし。
だからこそ何でまだ居るのか気になって声を掛けたら、驚かれたから俺も驚いてしまった。
「ど、どうしたんだ? 何でまだ居るんだ?」
「え……いや……あの……その……」
「……ん? どうして俺の服を持っているんだ?」
「……ッ!?!?」
フィーネは何故か俺の服を両手で抱えるように持っていた。
「俺の服に何かあるのか? そんな大事そうに抱えてどうしたんだ?」
「あの……これは……その……違くて……あぅ」
みるみる内にフィーネの顔が赤くなっていく。
「…………」
「おーい? フィーネ?」
「…………ご……ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
「お、おい!」
すごい勢いで出て行ってしまった。
一体何だったんだろう?
というか何で俺の服を持っていたんだ?
まさか服も一緒に洗うつもりだったんだろうか。
よくよく思い出してみるとフィーネを見た瞬間は、服に顔を埋めていたような気がする。
もしかして……においでも嗅いでいたんだろうか?
……いやまさかな。
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