第83話:倒し方

「に、逃げるわよ! いくら攻撃しても倒れないモンスターなんて勝てっこないわ!」

「そ、そうだね……」

「リリィ! そいつは無視して逃げるわよ!」

「お、おう……。先に離れてて! アタシが食い止める!」


 2人は逃げようとしてその場から離れようとする。

 しかし俺は逃げ道を塞ぐように立ちふさがった。


「おい。どこに行く。まだ終わってないだろ」

「今の見たでしょ!? リリィが全力で切り刻んでも元通りになる相手なのよ! あたし達では勝てないわよ!」

「全身燃やしても再生するみたいなんです。これ以上はどうしたらいいのか分かりません……」

「切っても燃やしても死なないモンスターなんてどうやっても勝てないわよ!」

「やっぱり私の実力不足なんでしょうか……」


 2人とも初めて戦うタイプのモンスターに衝撃を受けたのか、すっかり弱気になっていやがる。


「俺は言ったはずだぞ。お前らの実力なら勝てるはずだと」

「で、でも今の見たわよね! どんなに攻撃しても元通りになるなんて反則よ! あれは不死身のモンスターに違いないわ!」

「いいや。不死身なんかじゃない。お前らで倒し切れるはずだ」

「これ以上どうやればいいのか分からないわよ……」


 俺は嘘は言っていない。3人なら十分勝てるだけの実力はある。


「何度攻撃しても死なない? じゃあやり方が悪いんだ」

「やり方って……他にやり方なんて思いつかないし……」

「いいか? 相手をよく見ろ。しっかり観察しろ。他の奴らとは何が違う?」

「違い……?」

「複雑に考えるな。もっとシンプルな発想をしろ。全体をよく見るんだ」


 言われて2人は巨大スケルトンを眺める。

 リリィはまだその場で対峙しているが、さすがに攻撃の手を止めて様子見をしている。


「…………あっ」

「? どうしたの?」

「もしかして……」


 フィーネが何か思いついたらしい。

 すぐにリリィに向かって叫び始める。


「リリィさん! 背中にある物を壊してみてください!」

「フィーネ? どうしたのよ急に」

「うんとね。あの背負ってる物が気になったの。他のモンスターであんなの付けてるの見たこと無かったし。もしかしたら何か関係あるんじゃないかと思って……」


 フィーネはあの背負っている十字架が怪しいと踏んだわけか。

 しかし……


「だ、ダメだ! あれもぶっ壊そうと思ったんだけど全然壊れない! 固すぎてキズ1つ付かないんだ!」

「そ、そんな……」


 リリィの言葉でガッカリするフィーネ。思惑が外れたらしいな。


「リリィさんの力でも壊れないとなると他にもう……」

「あの背負ってるバッテンがそんなに大事なの?」

「あれのせいで何度も蘇るんじゃないかと思って……」

「ふぅ~ん……」


 3人の中ではリリィが一番攻撃力が高いからな。それでも壊れないとなると諦めるしかあるまい。


「どうしよう……」

「ん~……あれが邪魔なんでしょ? だったら取っちゃえばいいんじゃない?」

「取っちゃう……?」


 ラピスの言葉にハッっとするフィーネ。


「……そうだ!! リリィさん! 壊せないなら直接もぎ取ることは出来ませんか!?」

「あれを奪っちゃうのか?」

「そうです! 一度倒した後でいいので、蘇る前に手で取っちゃってください!」

「! 分かった!」


 リリィは聞いてからすぐに大剣を構えて相手に突撃した。

 何度も倒せていたので動きはスムーズなものだった。


「これでっ……どうだ!」


 巨大スケルトンは斬られて倒れ、もはや何度目になるか分からない撃破に成功した。

 そして倒れた相手にすぐ近寄り、十字架を掴んだ。


「これだな!」


 掴んだ状態で力を入れて引き剥がそうとする。

 すると、鈍い音と共に十字架が持ちあがった。


「ど、どうだ……?」

「「…………!」」


 倒れている巨大スケルトンに対して3人が凝視する。

 そしてすぐに変化が現れた。


「……! 見て! 消えていく!」


 地面に散らばっていた骨が宙に拡散するように消えて去って行った。リリィの手に持っていた十字架も同じように消えていった。

 3人はその光景を見て固まっていた。


「「「………………」」」


 そしてようやく殺し切ることが出来た事実に気づいたのか、それぞれ顔が明るくなっていった。


「や……やったわ……これでもう復活することはないわよね!」

「う、うん。消えちゃったからもう出てこないと思う」

「おー! すげー! 全部消えちゃったぞ!」


 皆それぞれテンションが上がり大喜びしている。

 不死身だと思われてたモンスターを倒せたんだから無理も無いか。


「正解だ」

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