第19話:ヘビーボア狩り
「やったー! レベルが上がったわ!」
「私もです!」
「おーおめでとう。また強くなれたな」
草原でホーンラビットをある程度狩り終わった後、姉妹はレベルアップに喜んでいた。
これで2人揃ってレベル5に到達した。
「ふむ。レベル5になったか。ならそろそろいいかな」
「何の話よ?」
「丁度いいと思ってな。今日をもってホーンラビットを卒業だ」
「や、やっと終われるのね……」
「だ、大丈夫?」
「平気よ。夢に出てきそうなぐらい狩り続けてたけど慣れたわ」
「あはは……」
さて。次はどいつにしようかな。
ハンターウルフでもいいが……うーん……
あ、そうだ。
「なら森に行ってみるか」
「森? 少し離れた場所にあるあの森?」
「そそ。あそこには今のお前らにピッタリのモンスターが居るはずだ」
「ふふん! 今のあたし達なら負ける気がしないわ! どーんと来なさい!」
「まぁ一部ボス級に強いやつもうろついているんだけどな。倒すのにレベル20ぐらい必要なやつが」
「「え……」」
2人の笑顔が固まる。
さすが姉妹だ。表情がそっくり。
「安心しろ。俺が付いている。なんとかしてやるさ」
「で、でも強いんでしょ? 大丈夫なの?」
「滅多に出会わないから平気だって。むしろ出会えたらラッキーだぞ」
「そんな幸運いりません!」
「とりあえず森に向かうぞ。日が落ちる前に帰りたいからな」
「だ、大丈夫なのかなぁ……」
不安そうにしていたが、そんなことはお構いなしに森へと進んでいった。
「到着っと……」
無事に森へと到着。
ここは孤児院に居た時にも訪れた場所だ。
「んじゃモンスター探すぞ。さっきの草原と違って視界が悪いからな。周囲を警戒しとけよ」
「そういえばなんのモンスターなのか聞いてないわよ?」
「ああそうだったな。探すのはベビーボアっていうやつだ。ホーンラビットの3倍ぐらいデカいやつだからすぐ見つかると思う」
「わかったわ。一緒に探しましょ」
「うん」
それから森の中に進むこと数分。
少し離れた所にモンスターの姿を発見した。
「……居た。遠くにいるあいつがベビーボアだ」
「あれ? 2匹いるわよ?」
「しかも大きさが違うんですが……」
ベビーボアのすぐ隣にはさらに大きいモンスターが立っている。
これはラッキーかも。
「親子連れみたいだな。小さい方がベビーボアだ。大きい方がその成体である…………『ヘビーボア』だ」
「ちょ、ちょっとあんなに大きいなんて聞いてないわよ……!?」
「ホーンラビットの10倍ぐらいありそうなんですけど……」
ベビーボアは小型バイクぐらいの大きさだが、ヘビーボアは軽自動車並みに大きい。
2匹が並んでいるとその大きさが一目瞭然だった。
「俺はあのデカいほうを相手する。お前らは小さいやつを倒せ」
「ま、まさかあんな大きいのと戦うわけ!?」
「いくらなんでも無茶じゃないですか?」
「大丈夫だって。俺を誰だと思ってるんだ。あの程度には負けたりしないよ」
「で、でも……」
何か言いたそうにしていたが、無視して前に出た。
「さーてやるか。俺が最初にデカいやつを引きつける。その隙にベビーボアを倒すんだ。いいな?」
「え……」
「フィーネ。ゼストを信じましょ。あたし達はあたし達で出来ることをやればいいんだから」
「……うん。そうだね。じゃあお願いします!」
「おうよ」
話が終わると同時に走り出す。
当然目標はヘビーボアだ。
「いくぞ!」
「……!?」
接近すると同時に攻撃。俺の拳がヘビーボアの体にめり込んだ。
「ピギィィィィィ!」
「ほらこっちこい!」
すぐに離れるとヘビーボアが俺を睨んできた。ヘイトがこっちに向いたようだ。
「どうした? かかってこいよ!」
「プギィィィ!」
ヘビーボアは俺に向かって突進。
それを回避した後、離れた所にいる姉妹を眺める。
「やぁ!」
ラピスが残っていたベビーボアに矢を放つ。すると矢はカスヒットしたようだ。
だがそれを受けてベビーボアのヘイトはラピスに向いたみたいだ。
「いくわよフィーネ!」
「うん!」
2人が動き出した。
俺はヘビーボアの攻撃を避けつつその様子を見ることにした。
「ちょ……こいつ速いわよ!」
「ひゃぁ!」
ベビーボアがラピスに向かって突進していくが、それをギリギリで避ける。
「お、お姉ちゃん!」
「大丈夫よ! あたしが引きつけるからフィーネはスキルで援護して!」
「う、うん!」
避けながらもラピスは弓を握り、ベビーボアを狙い撃っていく。
「くっ……当たれっ!」
矢を放つと見事に命中。
「プギィッ!」
「や、やったわ!」
だがベビーボアはすぐに体勢を立て直し、再びラピスに向かって突進してきた。
「ま、まだ生きてるの!? しぶといわね!」
すぐに矢を構えて撃つが……かわされてしまう。
「ッ!?」
どんどん距離を詰めてラピスに向かってくる。
あの状態だと矢を補充して狙う前に到達してしまうだろう。
そのことはラピスも気づいているはず。
「……そうだ! 食らいなさい!《マジックアロー》!」
あれは矢を装填しなくても撃てるスキルだ。
スキルで作り出された矢が瞬時に現れ、素早く放った。
「プギッ……!」
見事に命中し、勢いあまって地面を転がるベビーボア。
「……いくよ! 《ファイヤーアロー》!」
その隙を逃さずフィーネがスキルを放った。火の矢は5本あり、それらは全て命中した。ずっとチャンスを狙ってチャージしていたんだろう。
ベビーボアは地面に倒れたまま起き上がることは無かった。
「や、やった! 倒したわよ!」
「うん! やったねお姉ちゃん!」
「フィーネのお陰よ! やるじゃない!」
「お姉ちゃんが動きを止めてくれたからね。だから当てやすかったもん。お姉ちゃんのお陰だよ」
「やるじゃん。初めてにしては上出来だ」
「そ、そうかな? えへへ……あっ! ゼスト危ない!」
ヘビーボアの突進を回避しながらそんな光景を眺めていた。
「おっと。んじゃこっちも終わらせるか。かかってこい」
ヘビーボアは俺に向かって全速で突進してくる。
だがそれを避けるつもりは無かった。
足に力を入れて踏ん張り、迎え撃つ準備を済ませる。
そして俺に当たる瞬間――スキル発動。
「《
「ッ!?」
スキルがクリーンヒットし、ヘビーボアは衝撃で吹っ飛んだ。
しばらく苦しそうにもがいていたが、やがて動かなくなった。
「おっし。これで終わりっと」
「「…………」」
「ん? どうした? 2人ともありえないものを見たような表情してるぞ」
変なやつらだ。さっきまで喜んでいたのに静かになってしまった。
「……あ、うん。確かに心配要らないわね……」
「す、すごいんですね……」
「ま、この程度に苦戦するほど弱くないさ」
無事に倒せたようでなにより。
特に問題ないみたいだし、このまま続行しても平気かな。
そう思って歩き出そうとした瞬間のことだった。
ズシン…………………………
「……あれ? 地震?」
ズシン……………………
「地面が揺れているような……?」
ズシン………………
「な、なんかどんどん大きくなってない?」
ズシン…………
「お、お姉ちゃーん!」
ズシン……
「!! な、なによあれ!?」
「え?」
ズシン!
「んなっ!? おいおいマジかよ……」
離れた所から木々をなぎ倒しながら近づく物体がいた。
「まさか本当に遭遇するとはな……」
「ね、ねぇ! なんなのよあれは!?」
「あ、あんな大きいモンスター見たことないですよ!?」
「俺が言ってたのはあいつのことだよ」
そいつは見た目はヘビーボアとほぼ同じだった。
違うとすれば、信じられないぐらいの巨体だということ。
そいつの正体は――
「あれはヘビーボアの変異種――『グレートボア』だ」
「ブオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォ………………!!!!」
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