第2話:現状確認
「ゼストくん!? どうしたの!?」
リーズが急いで近づいてきた。
「なんか音が聞こえたんだけど……」
「あーいや、何でもないさ」
「そ、そう……?」
一度冷静になろう。
ここがAROの世界だということはわかった。
もはや疑いようがないだろう。
だがここはどこなんだ?
こんなボロっちい場所は知らんぞ?
「えーと、リーズだったよな。ここはどこなんだ? この建物は何なんだ?」
「え……?」
「ああいや、ちょっと物忘れしちゃってな! 知らないわけじゃないんだけど、寝ぼけててボーッっとしちゃってな。リーズの口から聞きたかったんだ。うん」
「…………」
「…………」
じー………………
「そういうことなら……いいけど……」
「な、なら頼むよ!」
危ない危ない。
なんとか怪しまれずにすんだと思う。
「ここはね……私たちの住んでいる……孤児院だよ……」
「こ、孤児院だと……?」
「そう……だよ」
「ってことは、俺はずっとここで暮らしていたのか?」
「うん。私もずっと……一緒だったよ……」
「……あー。そうだったな! 思い出したよ! リーズもずっと一緒だったよな!」
なるほどな。ここは孤児院だったのか。
でもおかしいな。
AROに孤児院なんて場所あったっけか?
ずっとこのゲームをやり込んでいるが、孤児院なんて場所は記憶にない。
アプデで追加されたんだろうか。
もしかしたらどこかの知らない村なんだろうか。
何れにせよ、せめて周辺の地理だけでも把握しておきたいな。
「ここはどこの孤児院か分かるか? どこの町なんだ?」
「えっとね……ここは……〝セレスティア〟の郊外……だよ」
「セレスティア……? それって王都セレスティアのことか?」
「うん」
「…………」
近くの窓に移動し外を覗く。
…………
なるほどなぁ。
そういうことか。
すぐ近くに見慣れた地形があったよ。
ここは巨大都市〝王都セレスティア〟だったのか。
セレスティアはゲーム中でも最大級に大きい超巨大都市だ。
新規で始めたプレイヤーはまずこの場所に転送される。
そこから冒険が始まるわけだ。
これはツイてる。
もっと知らない土地だったらどうしようかと思っていたが、セレスティアなら飽きるほど訪れた場所だ。
周辺の地理はほぼ把握できた。
「ね、ねぇ……大丈夫……なの?」
「あーうん。もう平気。ちょっと寝ぼけてただけだよ」
「ならよかった……」
「そうだ。気分転換に散歩でもしてくるよ。少し歩きたい気分だし」
「え? 今から……?」
「大丈夫だって。すぐ戻るから。んじゃまた後でな」
「あ、う、うん……」
リーズと別れ、その場を後にした。
孤児院の広間にいくと、他にも何人か子供達の姿が見えた。
俺とリーズ以外にも孤児が住んでいるんだな。
まぁ当たり前と言えば当たり前か。
そんな光景を横目に外に出ることにした。
孤児院から少し離れた所で座る。
「さてと……」
これからどうしようか。
まさかゲームの世界に入ってしまうとは思わなかったな。
転生システムを利用したら本当に転生するとはな。
なかなか笑えない冗談だ。
とりあえず出来ることを確認しよう。
「ログアウト」
…………
まぁ無理か。
なんとなくこうなるとは思っていた。
「んじゃ次は……インベントリ」
すると目の前にウィンドウが表示された。
「おお。これは出来るのか」
呼び出したのはアイテムインベントリだ。
ウィンドウにはアイテム欄が表示され、様々なアイテムが収納されている。
「よかったよかった。これがないと転生した意味が無いからな」
転生システムではアイテムの持ち越しが可能なのだ。
俺が苦労して必死に集めたアイテムが無くなったらどうしようかと思ってた。
けど全て無事に持ち越せたみたいだ。
とりあえずは一安心。
勿論、中には装備なども入っている。
これで序盤はある程度は楽に進められるだろう。
「そうだ。スキルの方も試さないとな」
今は転生したばかりだからレベルは1になっているはずだ。
ステータスも初期値だろう。
だがスキルはリセットされずに持ち越すことができる。
それが転生システムの大きなメリットだ。
習得した覚えがあるスキルを使ってみることにする。
恐らく発動できるはずなんだ。
そうだな……まずは……
「えーと確か……《ファイヤーアロー》!!」
すると手のひらから『火の矢』が出現した。
「よしよし。発動した」
《ファイヤーアロー》は文字通り火の矢を生成して攻撃するスキルだ。
このスキルはチャージが可能で、このままチャージを続けると複数の矢を作り出すことが出来る。
「とりあえず1本でいっか。的は……あの岩にしよう」
少し離れた場所にある岩に向かって火の矢を放った。
矢は岩に当たると四散して消滅。岩は少しだけ削れていた。
「ま、こんなもんか」
本来ならあの岩程度なら半壊するぐらいの威力はあったはずだ。
けど今の俺はステータスがほぼ初期値になっているせいか、あまり威力が出せない。
けどスキルは問題なく使えることは確認した。
異世界に転生して少し不安だったが、これならなんとかなりそうだ。
「とりあえず孤児院に戻るか」
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