シュヴァリエ剣士学校で
第1話
「さぁお待たせ致しました!いよいよ夏の選抜決勝です!」
アナウンサーの声が会場に響く。
今日は今後の人生を大きく左右する夏の選抜決勝。勝者は、王家の近衛兵として仕える権限が与えられる。
しかし、俺の本当の目的はそれではない。
ロッカールームで一人、刀夜が椅子に座っていると誰かが入ってきた。担任の
「刀夜、プレッシャーをかけるつもりはないが、全てを出してこい」
と声を掛けてきた。
「分かりました、ありがとうございます」
それくらいしか返す言葉が見つからない。試合のこと以外何も考えられないほどに緊張していたのだ。
「まずは高等部三年!
ロッカールームのスピーカーからはアナウンサーの声、会場の方からは対戦相手の伊達の入場と共に、観客の声援が聞こえてきた。
刀夜は愛剣を片手にロッカールームを出て、会場へと続く廊下を歩いて行く。
「そして高等部二年、草刈刀夜の登場!」
刀夜が入場すると、刀夜に冷たい視線が送られた。
刀夜はそうなることを分かっていた。この学園で、とある理由から蔑まれていたからだ。
そう、刀夜の目的というのはここで勝って、今まで見下していたやつらを見返すことだ。
会場のど真ん中で伊達翔は堂々と立っていた。
「2年坊主がこの伊達翔様に本当に挑むとはなぁ、棄権すると思ってたぞ!」
観客も刀夜を嘲笑う。
落ちこぼれ、馬鹿、さっさと死ね。聞き飽きた言葉が観客席から聞こえる。
「伊達先輩、俺はあなたのような人には負けたくない」
余裕そうな表情の伊達は、更に口元を緩ませた。
―Ready Fight!!!!!―
開始の合図と共に刀夜は、愛剣「ノヴァ」を鞘から抜き速攻を掛けた。練習やシュミレーション通りだ。
この勝負もらった!
伊達の腹部を斬り裂く。何が三年だ、大したことないな。しかし、違った。
伊達は平然と剣を構え立っている。
そして刀夜の腹からは血が出ていた。
「なんで…」
「あれぇ、知らないのかい?僕の固有スキル、スペリオルカウンターを」
スペリオルカウンターだと?聞いたことがない…。
「これは自分へのダメージを軽減し相手に攻撃をそのまま返す技だ」
伊達の情報が俺に入ってこないのは立場上当然だが…。今までその技を隠してここまで来たのか!俺を嘲笑うために!!!
「ほら来いよクソガキが!それとも負けを認めるか?」
行ったら俺が攻撃を食らう、でも、負ける訳には行かない!
刀夜は伊達が許せなかった。
刀夜は剣を持ち、急所を外し伊達を斬り刻む。勿論、伊達を斬った場所がそのまま自分に斬り返される。
痛すぎて吐き気がする。しかし、刀夜はその手を止めなかった。
「無様だな!どんだけ僕を斬ったってお前があの世に近くなるだけだぞ〜」
うるさい…!
「いい加減リタイアしろよ」
「何だあの馬鹿剣士」
「だっさ」
こいつら…!!
もう少し耐えれば!!!
「じゃあ僕からも行かせてもらうよ、草刈くん!」
来るか!まあ都合がいい。
「闇夜に集え、シャドウハンター!」
伊達の詠唱だ。
刀夜は勝利を確信した。
「かかったな!この時を待っていたんだ!閃光の灯火、スーパーノヴァ!」
伊達の魔法は、影の世界と言われる場所から放たれる無数の矢を放つもの。
対して刀夜のは…。
「うぁあああぁぁあ!!!」
伊達の悲鳴が聞こえる。
「焼き尽くせ、フレアノヴァ!」
魔法の火力をさらに上げる。
「やめて…くれ…」
「勝者、草刈刀夜!」
アナウンサーが刀夜の勝利を告げた。
一瞬の静寂の後、ざわめきで会場が包まれた。
刀夜の魔法は、一試合で一回しか出せない超高火力全体魔法だ。伊達がスペリオルカウンターで魔力を使い果たしたところを見切っての攻撃だった。
伊達と刀夜は治療室に運ばれた。
こうして刀夜は最強の地位を手に入れたのだ。
次の日の朝、刀夜は目覚めた。
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