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 家に帰ると、良い匂いがして――。

 とってもご機嫌のよろしい紫先輩と、すこしむくれた愛先輩が出迎えてくれた。

 あいかわらず紫先輩は、とっても悪い笑みを浮かべていらしゃる。


「いやぁ、克斗。貴様もなかなかやるではないか、よもやあの五石家にたいして一歩も引かず自分の言いたいことだけ言って去っていったそうじゃないか」

「や、ちょうどモンスターの発生予告があったんで、それで出てっただけっすよ?」

「それだとしてもだ、いや~本当に見直したぞ」

「あ、それでお願いなんですけど。今度からモンスターの発生予告が入った時点で紫先輩にも教えますんで連絡してもらってもいいっすかね?」

「あぁ、お安い御用だ」

「う~~~! 私すっごく心配してたんだからね!」

「いいじゃないか、結果的には上手くまとめられそうなんだから」

「そうだけど! 確かにそうみたいだけど! すっごく不安だったんだからね!」

「ありがとうございます愛先輩」


 そう言って軽く抱きしめて、頭を撫でた。


「ふぇ? 今日は身体痛くないの?」」

「はい! 超楽勝でしたから! 以前の仕返し出来たみたいで気分も最高っす!」

「えっ! アレと同じのが出て来たの⁉」

「はい、5体出たんですけど、10秒もかかんないで終わったっす!」

「それはまた凄い話だな……」

「そうっすかね?」

「当たり前だろ。アレに私達は殺されかけたんだぞ?」

「そうだよ克斗君! それなのに楽勝って……」

「まぁ、一番は強力な仲間が居てくれたってのもありますけど。紫先輩のくれた武器のおかげってのも大きいですね!」

「む~! また、こんちゃんなんだ!」

「えと、抱きしめて頭なでるだけじゃダメでした?」

「ダメじゃないけど…これはこれで嬉しいんだけど……戦う事しか考えてないってのはやっぱり嫌かな」

「そりゃそうですよ。たぶん今日、もう一回くらいは出現すると思うんで」

「だろうと思ってたくさん作っておいた。ぞんぶんに食ってくれ」 

「ありがとうございます!」


 思いっきり食って、次の戦いに備えるために寝た――。







「おやおや、これは参りましたねぇ」


 手頃なモンスターのストックがなかったために数だけ増やしてみたがあまりにもあっさり終わらせられてしまい面白くなかった。

 カネルは克斗に与えた索敵能力がココまでバランスを崩すとは思っていなかったのだ。

 

「でしたら、こちらも相応の対応をしなければいけませんよね」







 日が沈み夜になりかけた頃。モンスターの発生予告があった。


【報告。本日PM7:45分にモンスター発生の予告。場所は大東駅及びショッピングセンター801】

「なっ!」


 ――二か所だと⁉


「ノエル‼ 二か所同時って事で間違いはないんだな⁉」

【肯定。レベル2に伴う難易度の上昇と判断】

「マジかよ!」


 ちっくしょう! 簡単過ぎると思ったらこういう展開もあるのかよ!

 駅の方はこの街だから近いがショッピングセンターの方がまずい! 隣街なのだ!

 とにかく報告だ!

 寝室を飛び出しリビングに行くと美味しそうな匂いがした。

 紫先輩がご飯を作ってくれていて愛先輩はテレビでニュースを見ていた。


「紫先輩やばいです! モンスターが2か所同時に出るみたいです!」

「なるほど、相手は余程人的被害を出したいのだろうな……で、場所は、どこになる」

「この街の駅と隣街の801です!」

「ちっ…時間は?」

「7時45分です!」

「愛衣出来てる分だけでも克斗に食わせてやってくれ! 私は電話だ!」

「うん、克斗君ちょっと待っててね」

「あ、はい」


 待っている間に書き込みをするが――少し悩んだ末に時間と場所だけではなく、『隣街の方は何とかする駅の方はマーキングしておくから頼む』と書き加えた。

 これでは俺がサイレントの一人だと宣言しているようなものだがしかたがない。

 なにせ801はこの街にあるショッピングセンターよりもはるかにでかい。モンスターの正確な発生場所はその場に行かなければ分からないし電車で移動するついでに発生場所だけはマーキング可能である。


「克斗何か欲しいものはあるか?」


 電話中の紫先輩が話しかけてきた。


「夜でも目立つマーキング出来るものが欲しいっす」

「分かった、ついでに手配してもらう」


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