03
3人目に選んだのが
幸村いわく、一番のお勧めだと言っていた。
そう言われた事もあり、本気で攻略しようとやっきになっていた。
何度となくバットエンドをむかえながらも頑張れたのは、開始早々上目づかいで言われた言葉、
『私……貴方と一つになりたいんですの……』
が、この上なく嬉しかったからだ。
思わず、パッケージを手に取り、本当に全年齢対応版なのかを確認しちまっていたくらいである。
どうかんがえても、エロイ展開が待っているとしか思えなかった。
実物を見たことがないので実際のところは分からないが、本当に見て触れて感じると思える存在が自分の前に現れるしたなら――
例え服を脱がす事が叶わなくとも、その豊満な胸を揉みしだくことは出来るに違いない!
とっとと現実なんておさらばして、あの胸に顔を埋めたい!
気合300%増しで挑んでいたのもいたしかたなかろう! だって男の子だもん!
ところがどっこい――とんでもないイベントが発生し俺は身を震わせた。
麻里絵が一つになりたいと言っていた意味が、俺の考えるエロ展開ではなく。
――内臓の交換だったからだ‼
定期的に内臓を交換していくことで、二人の距離は限りなく近付くというのが麻里絵の言い分であり。
真っ直ぐに主人公を見据える瞳には迷なんて見られない。
でも、でも……それでも、金髪ロングの先輩というキャラは捨てがたく。
俺は主人公と共に、きっとあれは何かの間違いだ。
そう――きっと何か理由があるはずなんだ!
自分を奮い立たせて物語を進めていた。
すると真っ青な顔した先輩が、主人公の下にやって来て、
『先日は、申し訳ありませんでした。貴方が…その、甘えさせて下さるものですから。その……少々、いたずら心が働いてしまったとでも言いましょうか……お詫びにお弁当を作ってまいりましたので、ご一緒なさいませんか?』
と誘って下さったのだ!
この時に感じた主人公とのシンクロ率は、かなり高かったと思う。
なにせ、一緒になって『おっしゃー!』なんて叫んでいたのだから。
幸村の言ったとおり、彼女にするなら絶対にこの娘だとすら思った。
だって、そうだろ?
家庭的で、温厚。スタイルも抜群で美人。
ゲームのキャラなんだから当然だろ。と言われればそれまでではあるが。
ちょっと変なところを除けば、ほぼ理想通りと言えなくもない。
むしろ欠点のない人間なんて居ないのだから、後はそれも含めて受け入れてあげるだけである。
そこで、屋上のベンチに腰掛けて彼女の作ってきてくれたお弁当のフタを開けると……?
なぜか、とてもとても赤黒くモザイクまでかかっていた。
『実は、それ私の血を――』
切ったね、プチっと電源から!
ったりまえだってーの!
俺の求めてるのはエロであってグロでもホラーでもねぇんだよ!
どこが全年齢対象版だよ! ふざけやがって!
そして最後に選んだのが
空色のショートカットでスポーツ万能な超がつくほどの元気っ娘。
『索敵完了!』
どこまでも響き渡るような大きな声に反応しちまった事で彼女との物語は唐突に始まりやがるのだ!
相手…この場合、相手チームというかなんというか。とにかく手当たり次第に勝負を申し込んでは半ば無理やりエースとの勝負に持ち込むという本当にめんどくせーヤツである!
リトルリーグから始まって、名門校の門をくぐった後にバッドエンドをむかえていた。
どんな時でも古びた木製のバットを手放さず。野球をやっている連中を見つけてはキメ台詞。
『索敵完了!』
練習中ならまだしも試合中だろうずけずけと割って入りバッターボックスに立っちまいやがるのだ!
そらもう批難ごうごう雨あられ……俺は全力で無法者をなんとかしようと試みたさ。
でも無駄だった、どの選択肢ろ選んでも結局は空乃の思惑通り勝負になっちまう。
違うといったら、勝敗が変るだけで空乃の行動に変化は見られないし主人公に対する高感度が上がっているようにも見えない。
ってゆーか、主人公が空気にしか感じられなかった。
だってそうだろ?
デートイコール索敵だし……
空乃は野球以外の事は話さないのに対し――俺も主人公同様、野球に興味がない。
幸村いわく、野球に興味があれば甲子園での名勝負が目に浮かぶような歴史秘話的なものが多々あるらしく。
彼女のシナリオ目当てだけで中高年の購買層が相当あるとの話しだった。
で、だからなに?
ってのが、俺と主人公の創意だったと今も信じている。
あげくの果てに勝負に負けた相手と付き合うことにしたとかぬかしやがる始末。
そりゃ、あっそ、だったら好きにしな!
ってなかんじの選択肢をぽちっとして終了するに決まってんじゃん。
マジやってられねーっての! あれほど無鉄砲なヤツが一番人気とかありえなくね?
それともなにか?
今の世の中じゃあんなんでも普通に付き合えるって連中が多いのか?
だとしたら、やるしかねぇのか……
てな感じで麻里絵以外のルートを適当に続けた。
よく言えば行動力があるとも言えるが、悪く言えば勝手気ままでわがままなヤツら。
知れば知るほど、できる事なら一生係わり合いを持ちたくないような連中だった。
――そんな感じで5日目の朝をむかえた。
どうやら寝落ちしちまってたらしい。
「あぁ~~チキンくいてぇ……って、なんだこれ?」
電波な彼女の画面が目に焼き付いたのか夢でも見てるのか分からないが、うすいピンク色をベースにした感じのウィンドウごしにしか辺りが見渡せなくなっていたのだ。
そして、女の子の声が聞こえた――
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