手と口

👅

アオイは人の口の中を見たがったのでお互いに口を開け合い見せ合う。口の中に手を入れ、歯を数えたり調べたりする。わたしもアオイの歯の本数を数えた。上の歯は12本あった。アオイが指を舌に触れた。とても違和感を感じたがそのうちに慣れ、指はわたしが慣れたことに気づくと上顎をなぞったり頬側を軽くつついたりし、わたしは心地よくなって暖かい指に舌を絡ませた。

アオイの手がぐっと喉の方へ入り思わずえづく。感覚は気持ち良いのに体がアオイの指を異物だと認識して排出しようとするのが申し訳なかった。

アオイが続けるので、わたしは体がひっくり返りそうなほど吐こうとしてしまい、涙と涎が噴き出した。

拒否反応に抵抗を繰り返すと体は疲労する。つらくなり、目を固く閉じると、今まで眼球に溜まっていた涙がどっと顔を伝った。

筋肉を収縮させたままにしておくと体は疲労する。強く目を閉じたままでいたせいで眉間が疲れ、吐き気に耐えながら薄目をあけた。

アオイはだらしなく笑っていた。半開きの赤く濡れた唇を舌でちろちろと舐めながら。

アオイの手首はわたしの唾でどろどろだ。手によってわたしの顔が固定されているのでよく見えないが、あぶく立った唾液が手と口の接触点からのろく落ちて地面でどうにかなっている。

わたしの口を好きなようにしているこの指に噛み付けば事態は収まるだろう。でもしない。