第18話 状況整理
ケンジお手製の銃器類が鎮座している場所に、ケンジとレオナ、ケイトとウルナ、それとこの間の戦闘で部隊の整理をしてから暇になったという理由で居候になっている
『……で、ウルナ。なんでお前、降りて来た? 降りて来るにしても、なんでこのタイミングで来たんだ?』
それと、
『……暇なのは分かったから、とりあえずそこら辺に置いてあるのには触らないでくれるか? こっちはこれから整備に取り掛かろうってのに』
「……えっ? そうなの? チーフのことだからもう知ってると思ったんだけど」
『日常と戦撃の箱庭亭』の地下一階。
銃器の構造など全く知らないであろうウルナはどうなっているのか気になった様子で銃器を一つ一つ手に取ってはあちらこちらを確認するように見ているが、することがない為に仕方なく手伝っている
「分かっていると思うから、一応ってことで言っとくんだけど。この前、下で起きた戦闘ね」
『……この前の? ……あぁ、あの「
「ja。……それね、『
「………………………………………………は?」
「……うん、……だろうね」
「知ってますよ、ウルナ」
「……そう、でしょうね」
ウルナの唐突な告白にケンジ以外の四人……正確には一人だけ疑問符を付けていたが、は各々で思ったことを口にしていた。四人の反応を見てウルナはケンジの方を向いた。
「チーフは知ってた?」
『………………………………………………たまたま、な。たまたま知ったよ。運が良いんだか悪いだか、分からねぇがな』
「成る程……、ね。それじゃ、『バイオス』と手を組んだ連中が『バイオス』に『
『ああ。そこはレオナから聞いたぜ』
「……そうなの、レオナ?」
「ja。お話を伺いに行きましたところ、ご丁寧に話してくださいまして。えぇ、知ってますよ? ……と、申しましても大雑把な概要だけですが」
レオナの言葉を聞いてウルナは少しだけため息を吐いた。そして、顔を上げると再びケンジの方に顔を向けた。
「一応、確認のために訊いとくんだけどさ。……ねぇ、チーフ?」
『なんだ、ウルナ?』
「チーフは、さ」
彼女は一瞬だけ言葉を区切ると、続けて言った。
「これから、どうするの?」
ウルナの問いに、ケンジは鼻で笑うとこう答えた。
『決まってる。「
ケンジの解答を聞いてウルナと
「……成る程な。流石、チーフだ」
「……うん。……うん、即答するからね。流石だよ、チーフ」
『ハッ、何言いやがる。あのクソッたれどもに散々手を焼いてたんだぜ? それに、「旅団」の連中も何人かやられてるんだ。やり返さなきゃどうにもできんさ』
「まぁな」
「そうだね……。うん、私のマスターもきっと同じこと言うと思うよ。」
コクリと頷き合った二人であったが、そこで何かを思い出したかのようにふと
「で、だ。『バイオス』の連中が『
『どうした、
「いや、そうじゃねぇ。そうじゃねぇんだが……」
そもそもの話。
「どうやって上に上がるんだ?」
『………………………………………………』
「………………………………………………」
「………………………………………………」
「………………………………………………」
「………………………………………………」
彼女の言葉に彼女以外の五人は言葉を失った様に黙っていた。その五人の反応に彼女は慌てた様に言葉を絞り出した。
「い、いや、ほら。レオナとケイト、それにウルナは魔力が使えるからまだどうにかなるだろ? だけど、チーフを入れた他の連中は『メカノイス』で、そもそも魔力が使えねぇんだ。だったら、どうやってって話になるだろ!?」
『……
「お、おぅ。なんだよ、チーフ」
ケンジは彼女の問いにどう答えた方が良いか悩むように頬を掻いて……、頭を上に上げ……、意を決した様に顔を元あった位置に戻すと、答えた。
『あのな、忘れてるかどうなのかは俺は知らん。知らんが……』
言わせてくれ。
『魔力が無ければ打ち上げればいいだろ?』
「打ち上げる……って、どういう……?」
彼の言葉がどういった意味を含んで言われたのか分からない様に訊いてくる彼女に、ケンジはおいおい、そこからか、そこから説明しないといけねぇのか、と頭を抱えたくなる欲に駆られるが、今一歩のところで思い踏み止まることが出来、エルミアの方へ顔を向ける。
『エルミア』
「ja。……なんです、110?」
『お前は、俺が打ち上げるって言った意味、……分かるよな?』
不安に思い、エルミアにそう訊くケンジであったが、彼の思いとは裏腹に彼女は答えた。
「ja。『カタパルト・ランチャー』のことですよね? 電磁力の力を使いながら、
彼女の解答を聞いたケンジだったが、思わず確かめなければいけない気がして彼女に訊いた。
『……あの、エルミアさん? どこかご不満な点がお有りです、か?』
「nein。まさか。ありませんよ、110。例え、それを使うにしても少数しか乗せられない『コンテナ』しか移動手段がなく、再度使用するためにはある程度のリチャージが必要ですぐには使えない。とすれば、誰が誰とどんな組み合わせで上がるのか予想は出来るモノで、すぐには会うことは出来ないからということで嫉妬しているわけではありませんよ? ……えぇ、ありませんとも」
『そ、そうか』
「ja。えぇ、そうですとも。不満な点はありませんよ、110」
……誰も何も訊いてなくてそこまで言うなら怒ってると言っても過言じゃないんじゃありませんかねぇ……?
ケンジは声には出さずに胸の中でそう呟いていた。
そうなのだ。
『
元々は移動手段ではなくどうやって遠くにモノを飛ばすかと魔力を持たない『メカノイス』の遠距離兵器として作られたモノだったのだが、ただの趣味で作ったやけに頑丈でどんな攻撃でも確実に耐えうる装甲が施された箱、『コンテナ』をたまたま作ってしまったために、折角だからどうにか使うようには出来ないものだろうかと思案された結果、この『コンテナ』をその文字通りに打ち出せば、移動手段に使えるのではないのでは? と『
ただ一つ問題があるとすれば、『コンテナ』を打ち上げるためには相当のエネルギーが必要になってくる。そして、この世界にはガソリンやガスなどと言ったモノは存在しない。あったとしても、それはほんの僅かのごく少量しか存在はせず、採掘などをすれば、少しは改善されるだろうが、ないのだ。
幸いと言っていいかは分からないが、電気に関しては得られる方法を多くのモノが知っていた。故に電力を利用する『
閑話休題。
そういった経緯で電力を使い、初速を掛けて、
そうなのだ。エルミアの言う通り、これが厄介な問題だった。
誰が下で残り、誰が上に上がるのか。
まぁ、そんなことを考えなくともだいたいはもう分かっていることなのだが確認せざるを得ないだろう。事後承諾とあっては決してならないわけだし、知っているのと知らないとでは覚悟や準備なりそういったモノは変わってくる。
言わなきゃだめだよなぁ……、とケンジは若干憂鬱気味になりながらも分担を告げるのだった。
『今すぐで思い付くのは俺とレオナ、それとケイト。……上がるのは、この三人だな。エルミア、
ケンジの言葉を聞いて、エルミア達が口を開くよりも早くにレオナは片腕を胸元に置き、返事をした。
「ja。貴方の御命令であれば、それに従う所存であります、
『あっはい。……でもですね、レオナさん。そこまで気負わなくても、「
「nien。いいですか、マスター? 例え、私とケイトが行こうとも油断してはいけませんよ? 『旅団』の方々がいた当時ですら殲滅など出来てはいないのですから」
『……って言ってもな。「
ウルナ。
『そこのところ、実際どうなんだ? 全体の何割が上に居て、何割が下に居るんだ?』
何気ない様にケンジとレオナの二人は会話をしているが、話の内容を鑑みるに決してそんなに軽い話題ではないはずなのだが、軽く話す二人の会話に自身とのギャップを感じ思考が止まりかけていたウルナに対し、彼はあえて気にしない様子で訊いた。
「……えっ? 今残ってる『バイオス』の規模?」
『ああ、そうだ。俺が消える前は、確か6000ちょいは食ったと思うんだが』
「う~ん、全体かぁ……。そう訊かれてもね。今総数が何体かってのはまだ分からないかな」
『そうか。……訊いといてアレなんだが、別にどれくらいいようと全部平らげちまえばいいって話だな』
うん、と頷くケンジに対し、ウルナは何処にも向けられない怒りを感じていた。そんな様子のウルナを他所にケイトは一歩、前に足を踏み込んで彼に確認を取る様に訊いた。
「……私も上がるの?」
『……あ? ……あぁ、そのつもりに考えてるんだが。……なんか用事が残ってるのか?』
だったら行かせられなくなるんだが、と言葉を続ける彼に対し、ケイトは首を振る。
「……nein。……ううん。……そんなことない。……全然大丈夫」
彼女の言葉にケンジは不審なモノを感じてもう一度訊いてみた。
『ほんとに? ほんとに大丈夫か?』
「……ja。……全然平気」
『そうか。それじゃ、……信じるぞ?』
「……ja。……任されて」
彼女の言葉を聞いて何処をどう任せればいいんだろうかと聞いた方が良いかどうなのだろうかとケンジは一瞬、悩んだが訊かない方が良いのだろうなと思って問わないことにしたのだった。そんな二人の会話を聞いていたのか、現実に復帰したエルミアが彼に訊いてきた。
「であれば、110。私と
『そうなるな。……あ~、でも待てよ? お前ら三人がいるんだったら、もしもに備えて「ヒューマン」と「メカノイス」の生き残りを合わせて集団にしちまった方が早くないか?』
「集団……ですか……」
『ああ。集団で集まってりゃちまちま削るよりいっぺんに潰せることも出来るし、残った連中を絶望させることだって出来て一石二鳥だ。ま、罠だって思われて警戒されるかもしれねぇが、警戒されたらされたで俺らでこじ開けるから、どうになるだろ』
楽観的と思われても仕方ない彼の言葉にエルミアは納得して頷いた。
元々、『バイオス』にとっては『
であるなら、あえて全種族の連合軍を密集させ、その群れに集中している間に裏から潰すという彼の案も分からなくはない。
『
その彼の案は分かる。
分かるのだが……、これには何点かの問題がある。
「内容は理解できました。ですが、マスター。この
「そうだぜ、チーフ。事の真相は『バイオス』の連中と『エレメンタリオ』が手を組んだってのが分かった、ってなったばっかだぜ? そう簡単には、互いに手を取り合って『
『まぁ、そうだわな。この前まで互いに互いを敵同士だって思ってたら結局は味方でした~、って分かったばっかだしな』
「だったら、尚更……っ」
勢い付いて反論する
『だったら、どうした』
普段から低い声で話す彼であったが、その一瞬だけドスを利かせたか更に低い声で言った。その彼の言葉を聞いて勢い付いていた
『この前までは敵同士だったから手を取り合って「
あのな。
『んなことで「
彼はそう言うと、一旦言葉を切ると、言葉を続けた。
『「
いや。
『俺らがぶっ潰す。居場所が分かってるなら余計に、な』
いいか、
『「
そういうわけだから。
『俺は上に上がるぜ。おっと、止めてくれるなよ、
「分かった。……分かったよ、チーフ。あんたのことは止めねぇよ」
『なら、いいんだ』
ケンジの返事に
「……お前も大変だな、レオナ」
「nein。マスターほど分かりやすいお方はおりませんよ? コミュニケーションも取りやすいですし」
「………………………………………………これでか? お前の気が知れねぇよ……」
レオナの返事を彼女は聞くと胡散臭げにそう言ったのだった。そんな二人の様子をケイトとウルナの二人は何も言わずにただ眺めていた。
「んで? 何を持ってくんだ、チーフ?」
その会話からしばらく経ち、再び整備作業に入ったケンジとエルミア、
『なに持ってくって、そりゃ武器持ってく以外になに持ってくつもりだが?』
「んなこたぁ、知ってんだよ!!!」
『じゃあ、どういう意味だよ』
質問の意味が分からないという様に言うケンジに対し、彼女の言葉を継げ加えるようにエルミアが補足した。
「110。私が思うに、ここには
『まぁ、向こうの方でいちいち選んでる暇なんざねぇだろうしな。ある程度は選んでかないといかねぇだろうさ』
「ja。そうでしょう?
エルミアはそこまで話すと、ケンジから目を離して、少し拗ねてる様子の隻眼の女性、
「……と思ったのですが。間違ってますかね、
「……いや。違ってねぇ。間違ってはいねぇさ」
「そうですか、それは良かった」
ホッとした様子でそう言ったエルミアから見れていたのだが、気まずくなったのか彼女から目を外し改めてケンジの方へ顔を向けた。
「……んで? なに持ってくんだ、チーフ? あんたのことだから、『ミサイルコンテナ』と『ガトリング』はまず外せねぇだろ? ……そうなると、『
『まぁな。とは言っても、手持ちで持ってくとなれば、「
「手持ち? ……なんでいちいちぶら手に持って下げなくちゃいけねぇんだ?」
『なんでって、お前な。「アイテムボックス」を使おうにも使えねぇからに決まってるだろうが。……バカか?』
ケンジは何を分かってることを、と小馬鹿にする様に彼女に言ったが、そう言われた
「おい、エルミア。チーフはなに言ってるんだ? ちと訳してくれ」
「……
「お前ですら、分からねぇのか。ってなると、上の階に上がってチーフ語万能翻訳機のレオナでも連れてくるか?」
どうしたものか、と渋った様子の二人の会話を聞いて、ケンジはもしかすると、勘違いをしてるのは自身なのでは? と不安に思うと、二人に訊いたのだった。
『……おい、ちょっと待て。一応確認するんだが、「アイテムボックス」はまだ生きてるのか?』
ケンジの言葉を聞くと、
「まだ生きてるのかって、チーフ。……一応訊くが、あんたまさか使えないもんだって思ってたのか? …………今の今まで?」
『………………………………………………思ってたら悪いのか』
「…………………………………………悪くはねぇ。……………………………悪くはねぇ、んだが」
ケンジの返事を聞くとおかしいことを聞いたとばかりに
「おい聞いたかよ、エルミア。使えるかどうか分からなくて今の今まで使ってなかったってよ……くくく……笑えるな、おい」
「貴女は笑えるでしょう。……私は笑う気は起きませんが」
110。
「……何度も御聞きしてしつこいと思われるでしょうが、使えないと思って使っていなかったのですか?」
『……まさか使えるのか?』
「ja。……そのまさかです、110。……全然使えますよ?」
いいですか?と説明するような口調でエルミアは説明を始める。
「使い方は……110、貴方の方が知識があると思いますのである程度省くモノとして使っていた様にやって下さい。まずは『メニュー画面』をタップしてください」
と『プレイヤー』達が行っていた様にエルミアは虚空に手を伸ばし、宙を突く。その動きがケンジにも分かりやすい様にしているモノだと分かると彼も彼女と同じ動作を取った。
その瞬間。
ケンジの耳に聞き慣れた、軽いポーンという音が聞こえるのと同時に『メニュー画面』が現れた。
「出ましたか、110?」
『ああ。…………ああ、ちゃんと出たぞ、エルミア。……マジか、……まだ生きてたか。……マジかぁ……。てっきり、もう使えないもんだと思ってたんだがなぁ……。マジかぁ……』
もう使えないと思ってたものが使えると分かったことに衝撃を受けたのかケンジは少しの間、思考が止まっていた様に二人の眼には映った。……その間、
『……あっ? ってことは、だ。整備して、
突然、床を叩く音に二人は驚いてケンジの方を見た。が、ケンジはそんな二人の視線には全く気が付かない様子で作業を続けている。
『これと……これと……あと、こいつと……。それと、これもオンにしてっと。ったく、いちいちオフにしてんじゃねぇよ、クソが。飛ばされた上に勝手にオフにされたとあっちゃ、こっちとしたら何も出来ねぇっての。おかげで何かを整備しようにも作ろうにもジャンクしか出来ねぇとかどんなクソゲーだっての』
あ~、やだやだ、となにかやり遂げたのか、ケンジは虚空から視線を外し……、二人と目が合った。
『どうした、二人とも? まるで鳩がショットガン受けたような顔して』
「い、いえ。そんな、大したことでは……。ですよね、
「……あ? ……あ、あぁ、大したこたぁねぇよ、チーフ」
『……そうか? だったらいいんだが』
大したことはないという二人の言葉をケンジは特に深くは考えることはせずに再び細かい部品に向かって作業に入った。
『フヒ。フヒヒヒ。さてさて、「
細かい部品に向かい笑いながら作業を行う彼に対し、エルミアと
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