第12話 このあとめちゃくちゃ──

 親がバケモノ過ぎると分かってから4ヶ月。

 俺は2才10ヶ月になった。因みに弟は7ヶ月である。


 今日もいつも通り魔法を練習していると、パピーがとある3人の人間を連れてきた。ん? なんかどっかで見たことあるような気がするが…………


 男2人と女の子1人……ああ、そうだ。ちょうど2年前に来てた人達だ。確かパピーやマミーと昔冒険者パーティを組んでたとかいう……


 女の子はドアを開けるなり、


「メルちゃーん久しぶり~! 覚えてるぅ? フィーネお姉さんだよぉ? ってああああああ!? 新たに小さいモフモフが増えてりゅぅぅぅぅ!?」


 めっちゃ元気だなこの人。なんで俺の名前を知ってるのか一瞬気になったが、来る途中にパピーが教えたのだろう。弟のことは伝えてなかったみたいだが。


「こんにちは、人間のお兄ちゃんにお姉ちゃん。昔、パピーとマミーがお世話になったみたいで」


 俺はとりあえずキリシス語で応えた。どうだ。なんたってもうキリシス語もレベル9だからな。ちゃんと言えてるだろう(ドヤ)。


「「「「「───」」」」」


 案の定、3人は驚いて絶句していた。

 思わぬ人たちパピーとマミーも黙ってしまっているけれど、一体どうしたんだろうか。

 

 まあでも、こういうことで驚かれるのは、ちょっと嬉しい。努力した甲斐があるというものだ。


「え、えっと……? ツッコミどころが3つあったよ」


 人間のお姉さんフィーネが言った。

……ん? 3つ? それもツッコミ?


「まず1つ目。メルちゃんって今3才にもなってないよね? なのに、なんでそんなに私たちの言葉を喋れるの?」


「えっと、がんばった…………から?」


「えぇ………じゃ、じゃあ2つ目。その、『ニンゲン』って云うのは、召還で呼ばれてくる、私たちと容姿がそっくりなのこと? ……私たちはその、異世界者とかじゃなくてちゃんとこの世界の種族………ヒューマンだよ」


「──!? そ、そうなんだ……」


 驚いた。この世界には異世界召還があるらしい。


 しかし、ちょっとマズったかもしれない。なんで人間のこと知ってるのって聞かれたらどう答えよう………と、その前に、このフィーネって人を鑑定しておくか。


<鑑定が阻害されました。現段階で閲覧可能な情報はこちらです>


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

種族:ヒューマン

名前:フィーナ・クライス


Lv:67

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 フィーナ・クライス? フィーネじゃなくて? それに苗字もあるし。

 もしかして、このお姉ちゃん、訳ありか。


 でも、あれだな。鑑定のレベルは上がってないのに、マミーの時より見得れる量が増えてるな。

 やはり鑑定を阻害するスキルがある線が濃厚かもしれない。


 そう考えていると、フィーネが、驚いた様子で口を開いた。


「え、今………?」


「ん? どうしたの?」


「……気のせい、かな。ま、まあいいや。今はそれよりも──」


「……?」


 一体どうしたというのだろうか。まあいいや、って言ってたから、大したことじゃ無いとは思うんだけど。


「──さっきの呼び方なんだけど、『マミーとパピー』って、シルとガルドが、メルちゃんにそう呼ばせてるの?」


「「ッッ!?」」


 あぁ、そういうことか。


「い、いや、これは違くてだな………メ、メルが俺たちのことそう呼びたいって言ったから……でな。な? そうだよな? メル!?(懇願の眼差し)」


 身に覚えのない既成事実をでっち上げようとしてますよこのタヌキパピーは。


 フフフ。ちょっと意地悪してやろう(ゲス顔)


「ううん。違うよ? パピーはパピーだよ ?だってメル覚えてるもん。パピーが自分のこと指差してパピーって言ってた!」


「ッッッ!?」

「「「ブフォッ」」」


 パピーとマミーは絶句し、ヒューマンの3人はお腹を抱えて笑っていた。


「アハハハハハ! ごめんごめん、まさかあの『怪力武神』とまで呼ばれたガルドが……ね……アハハハハハ!」

「ガルドもシルも丸くなったな、フッ……」

「俺は良いと思う! ハッハッハッハ!」


 マントで体を覆っている寡黙そうな人まで笑っている。それほど、昔はパピーもブインブインいわせてたんだろうなぁ(遠い目)。


「い、良いだろうが! 呼ばれたかったんだ!」

「そ、そうです。貴女達も可愛い子を持てば分かることでしょう」


 おっと、開き直りましたよ。

 まあ、呼び方なんて自由だとは思うけどね。俺の前世でも幼い頃はパパとママって呼んでたし。


「むぅ。なんか負けた気分だよ。でも良いもんね! 私まだ21歳だし、相手なんていくらでもいるよ!………多分」


「フィーネ。俺たちもそうだが、20歳超えるともう行き遅れに片足突っ込んでるぞ。そろそろ自覚しろ」


「うっ……」


 外套を羽織った男の人がそう言った。結構早めに結婚するのが常識なんだな、この世界。


 俺は結婚するつもりなんてないけどね。


「う、うるさいよ! そんなのは分かってるよぉ! あ、そうだ! そんなことよりさ………」


 あからさまに話題を変えたな。

 だが、この後のフィーネの発言によって、あんなことになるなんて、誰も思っていないかった。


「──メルちゃんって、人化(じんか)使えるの?」


……ん?


 この後めちゃくちゃ尋問した

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る