電波拾い

津嶋朋靖

第1話

 世の中には二通りの人間がいる。古いものが好きな人間と新しいものが好きな人間。

 そして僕は後者だった。そんな僕にとって百年以上前に作られた二十世紀のレトロ映像の上映会なんて苦痛以外の何ものでもない。白い布のスクリーンに光を照射して映像を映すなどという原始的な娯楽なんて、バーチャルリアリティに慣れ親しんだ僕にとってどこがいいのか理解に苦しむ。


 え? だったら行かなきゃいいって。


 そうもいかないんだ。大事な取引先の社長からの招待なので断るわけにはいかない。それに僕はともかく、女房はこういうイベントは好きみたいだ。さっきから、会場に招待された奥様たちと談笑している。


 おや? ふいに女房が奥様たちの輪を抜けて僕の方へ近づいてきた。


 おいおい。『あなたも会話に加わりなさいよ』とでもいいたいのか? 勘弁してくれ。こういうイベントは苦手なんだ。え? 違う。あの人を見ろ。女房の指さす先で、立派な身なりの老紳士がいた。


「井上さん?」

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