Alius fabula Pars 3 小説の世界にやって来た

テネブリスの管轄にある施設では魔導機械が所せましと並べられ、魂の抜け殻となったエルヴィーノが運ばれて、本体のエルヴィーノから魂の分割が行われようとしていた。


事態を知って準備を進めていたテネブリスにアルブマと二人のメルヴィが一堂に会し、作業を始めようとしたその時!!


何処からか現れたまばゆい光体に室内が占領されたと同時に異変に気付いた女性達。

ただでさえ有りえない異変に更なる衝撃が起こる。


降臨に成功した魂を飛んで追いかけるとテネブリスの管轄にある一軒家に壁をすり抜けて入った瞬間を目視できたスプレムスだ。

慌てて扉を開け中に入ると四人の女性が光り輝く一人の男を取り囲んでいた。


「あなた達何してるの!!」

スプレムスが叫ぶと同時に聖気に満ちた光体は男の中に吸収されていった。

「「「お母さま!!」」」


五人の女性が驚いた瞬間だった。

「これは一体どういう事かしら・・・」

「わたくし達にも何が何やら」

「突然室内に光が現れて」

「直ぐにお母さまの声がしました」

「ところでお母さまはこの事態をご存じなのでしょうか?」

スプレムスの問いかけに、アルブマ、メルヴィ本体担当、メルヴィ下界担当、テネブリスがそれぞれ答えた。


今度はテネブリスの質問に答える前に、本体担当のメルヴィが一連の説明をした。

「そうですか・・・」

エルヴィーノの顔を見て暫く熟考するスプレムス。

「お母さま・・・」

心配そうな下界にいたメルヴィだ。


「良いでしょう。わたくしも何故このような事態になったか分かりませんが、先ほどの光体について教えましょう」



そして語られるのは覚悟を決めたスプレムスの想いだ。

自らも他者によって生み出された可能性を求めて神を召喚したと説明した。



「お母さま、何故そのような事を・・・」

アルブマだ。

「でも貴方達も見たでしょ? そして感じたわよね? あの光の力を!」

「「「・・・」」」

「確かに感じましたが、何故この体を依代にさせたのですか、お母さま」

テネブリスだ。

「それは・・・」

全員がスプレムスを凝視する。

特に下界のメルヴィだ。

「勝手に入ったのよ・・・」

「「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」」




女性五人が騒ぐものだから、意識が戻り始めた男に気づくスプレムス。

「貴女達、しばらくは黙っていて頂戴。わたくしがこの方と対話しますから」

「「「・・・」」」

身体はエルヴィーノだが魂は別の誰かだ。

それだけは全員が理解していた。






「・・・!!」

「・・・様!!」

「・・神様!!」

「創造神様!!」

「創造神様!!」


何度も呼びかけて、指先がピクッと動きようやく身体に反応が有った。

そして騒がしいので男は目が覚めた。

「ん?・・・どこだ・・・ここは・・・」

視界に入るのは女性が五人と明るい天井だ。


何やら問いかけて来るが男は上の空だった。

病室のような雰囲気だが違った。

五人の女性は日本人では無い。

その事はすぐに解った。

何故なら容姿が違うし服装も記憶に無いものだからだ。

とは言え三人は黒髪黒目だが顔や体形が違った。


「お母さま、もしかするとわたくし達の言葉が通じないのでは?」

「そうよアルブマ。念話で聞きましょう」


エルヴィーノの体には自動翻訳魔導具を装着しているので言葉が通じない訳ではない。

単に召喚されて依代に定着した直後なので、まだ意識と体が順応していないだけなのだ。


(初めまして創造神様)

(ん? ・・・頭に響くような声は・・・創造神?)

(はい、今は念話で問いかけており、貴方様をこの"世界に召喚した”のはわたくしでございます)

(俺を・・・召喚しただと・・・)

(はい、かねてより我らよりも上位の存在を感知しておりまして、苦労の末に貴方様をお招きする事が出来ました。貴方様は創造神様でございますね?)


《何を言ってんだ? この綺麗な姉ちゃんは? いや喋ってないか。口は動いてないし念話って言ったよな》


仰向けで自分を見つめる笑顔の女性を見た。

(わたくしの事、ご存じですよね?)


はっきり言えば知らないが、お知り合いになりたかった男だ。

(誰だ?)

(わたくしです!!)

そう言われても知らない事は答えようが無かった。

(名前かぁ・・・最初の字はなんだったかな?)

(もう御冗談を・・・スですわ)

(すっ!?、すぅぅ?)

(・・・)

(・・・他の子達は)


(・・・)


この段階でスプレムスは期待が外れた事を認識した。

何故なら他の召喚者同様に自身の事が分からないからだ。


(わたくしはスプレムス。こちらはテネブリスにアルブマですわ)

(・・・)


男の魂には、スプレンス、テネブリュス、ルブマと聞こえていた。

それは何故か?

単に発音なのだ。

言葉の強弱と抑揚は例え念話でも聞き取りにくく発音表現しづらいからだ。


《スプレンス、テネブリュス、ルブマ・・・知らないなぁ。スプレンス、テネブリュス、ルブマ・・・スプレンス、テネブリュス、ルブマ・・・ん? ちょっと待てよ・・・》


それはボソッと呟くような小さな声だった。

「もしかしてスプレムス・オリゴーにテネブリス・アダマスとアルブマ・クリスタか?」


ハッと一同が男を凝視した。

「あぁ、やはり貴方様が創造神だったのですね!!」

「まさか・・・」

「信じられない・・・」

「本当に?」

「お兄ちゃんの”からだ”、どうなっちゃうのかなぁ?」


女性たちが騒ぎ出す。

それは名しか教えなかったのに全ての真名マナを答えたからだ。


ここで話しかけてみた。

「ちょっと良いか?」

「はい、何なりとお聞きくださいませ創造神様」

「その創造神って何だ? ここは何処だ?」


この時点で男はまだ”都内の病院”だと思っていたからだ。








ここは何処?

私は誰?

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