第2話 可能性
全員が同様の事を考えていた。
自分と同じ転生者だと。
どうして自分が転生したのか解らなかったが、”女神”から力を授かり要望の肉体を手に入れた事に驚いた過去を持つが、生まれてからこの場に辿り着くまでは容易な事では無かったからだ。
そして勇者と魔王が信頼する女性と、敵対する者が同じ体験をした同士だったと言う事実だ。
「ディバルよ、我ら四人が転生者である事は理解した。しかしどうしてお前がその事を知っているのだ」
「だよなぁ。みんなそう思う?」
無言でうなづく三人だった。
「まぁ話せば長くなるから簡単に言うとさぁ、訳あって女神が沢山の魂を召喚したから俺が尻拭いで転生者狩りをしてんだよ」
「「何ぃぃぃ!!」」
一瞬で四人が警戒と攻撃態勢を取る。
「まぁまぁ落ち着いて。それでさぁ何人いると思う。転生者。」
「僕たちが知る訳が無いだろう」
「だよなぁ。四桁だぜ、四桁! どんだけ召喚してんだって話だよなぁ」
勇者が答えるも自分本位に話す男だ。
「それで、ワシ等は何人目なのだ?」
「一応お前たちが最後だ」
そう聞いて更に警戒し女性たちは防御魔法に身体強化の魔法を使いだす。
「そんな無駄な事をせずに俺の話を聞けよ、お前ら」
あきれ顔の男の斜め後ろには先ほど現れた男が直立不動で控えていた。
「まぁ世界中から四桁の人探しって、マジで心が折れそうになったよ、ハハハハッ」
戦いの準備をする四人に自分勝手な男と、沈黙の男がその場に居た。
「まぁまぁ、みんな落ち着いて。それでさぁ召喚した者達の一覧をもらって驚いたわけさ。何をかって? そりゃ召喚した日だよ。古い物は1000年ほど前まで有ったかな。そんな訳でほとんどが死んでた訳よ」
その話を聞いて四人は多少ホッとした。
「まぁ六割が年齢的な死亡で二割この世界に馴染めず早々に死亡。そして残りの二割を100とすれば、その七割が年齢的に世界に影響無しと判断した者達だったよ。さぁ残りの三割だが、これの一割が魔物・・・まぁ人族以外に転生している。そして二割が人族に転生して生き残っていた者達だ。結論から言うと魔物や獣人として生存を許可している人数は18名だ。後は処理した」
「何っ、そんなに居るのか!?」
「私たちを含めてでしょう?」
「そうだ。そして人族で許可したのは25名で残りは処理した」
「処理した者と許可された者は、どのような基準ですか?」
問うてきたのは聖女だった。
「そうだなぁ、この世界に必要の無い者と、影響力の無い者達かな? だよなスクリーバ」
「はっ、おっしゃる通りです」
「質問しても良いでしょうか?」
魔女だった。
「いいよ」
「魔王様や、そちらの方たちは処理されずに残ったと認識して良いのでしょうか?」
「まぁ、そうだね」
「あと・・・処理と言うのは・・・」
「殺したよ。一応さぁ、勝手に呼びだされたわけだから、寝てる時に気づく事無く消滅してやったよ」
「「「「・・・」」」」
全員が絶句した。
「あのぉ、ここに居る全員が日本人の様だけど・・・」
「僕も聞きたいです。魔王は世界に影響しないのですか?」
「それはワシも聞きたい」
魔女っ娘と勇者が聞きづらい事を確認すると魔王が同意して来た。
「まず影響は全くない。1mmも無いな。お前たち四人は”ニホンジン”だが前世の時代は多少違うぞ。あとお前たち以外の別の国の者も居るようだな。もっとも許可した者達は世界中に散らばっているから会う事は無いけどな」
それを聞いて複雑な気持ちの魔王だった。
勇者も感慨深いものがあった。
世界に影響しない者に対して、国を挙げて全面戦争していたのだから。
「じゃ私たちの戦いは一体何だったのよぉ!!」
聖女がブチ切れた。
「戯れ? 暇つぶし? 人と魔物の殺し合いだろ?」
「魔王なのよ、ま・お・う。魔族がどれだけの事をしてきたか知りもしないで良く言うわ!!」
聖女がブチ切れ中だ。
「まぁ自称魔王と、自称勇者に、自称聖女だもんな、お前ら。それに魔物と人族が殺し合いをしても、それは自然な行為なんだよ。解る? 自然。草木が茂り朽ち果てたり、動物が生きる為に他の生命を食らう事と同じ行為なんだな、これが」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。僕らは動物とは違うぞ!!」
「その通りだ!!」
何故か魔王が勇者に賛同している。
「待ってよ、自称ってどういう事?」
「ワシも詳しく教えて欲しい」
男の言葉に問いかけた聖女と魔王。
「言葉通りだよ。本当の、本物の魔王に勇者に聖女も別に存在する」
「「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」
「「えええぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
「はいはい、落ち着いて話そうね。あっ、因みに勇者に聖女は”女神様に近い存在”が決めてるから」
「・・・勇者よ、今の話、本当なのか?」
「・・・初耳だよ、魔王こそどうなの?」
「ワシも同じだ。ワシ以外に魔王が居るとは思ってもみなかったぞ」
四人は互いの意見を交換していた。
「まぁ仕方ないよ。本物たちは別の大陸に居るからさ、交流もほぼ無いし知らないのは当たり前だな」
「「「「別の大陸ぅぅぅぅ!!」」」」
「そんな訳で、俺たちからお前たちを見ると、ちょっと力のある統制の取れた魔物達が気に入らなくて皆殺しにしろと人間達が襲い掛かっている状態かな?」
「「「「・・・」」」」
「やっぱり。勇者じゃなかったんだ。おかしいと思ったよ。転生なら当たり前のステータス表示も無いし、覚える魔法も一般的な物ばかりでさぁ・・・みんなに
「私も同じだわ。ちょっと治癒魔法が使えて毒を無効かしたら聖女様だって教会に言われたの」
「だったらワシも同じだのぉ。一族の中では一番魔力が有り強かった。それだけで魔王の玉座に座っているのだからな」
「一応言っとくが、お前たちが知る前世のゲーム的な補助機能は一切無いからな」
それを聞いて、勇者と女性二人がガックリとしたようだ。
参謀本部の魔王側近で魔女ゾフィは外部には認知されていなかった。
ただ思慮が深く、相手の望むことを考えて行動していたら、魔王直属の配下になり使える魔女、仕事の出来る魔女として重宝されていたのだ。
「それじゃ、最初の質問に戻ろうか。君たちの生きている目的は何だ? この戦いに何か意味は有るのか?」
「「「「・・・」」」」
全員が言葉に詰まっている様だった。
「じゃ僕らは何の為に戦って来たんだ!?」
「解ってるだろ、お前も。ただ認めたくないだけだよ」
「ワシらの戦う理由は・・・」
「曖昧だよなぁ。当事者は自分たちの意思じゃなくて誰かに命令されるがまま国の為だと仕方なく現地で戦っていただろうからな。善と悪だなんて言うなよ。どっちも同じだからな。魔物を滅ぼす? 人間を殺す? 誰でも、同族でもやってる事だよな? 本当の目的を隠して”こじつけて”いるだけの事さ」
「「「「・・・」」」」
「互いにいる非戦闘員の住民からすると、所詮はどっちも侵略行為だよ。政治的に力を持つ者が得をする為に権力闘争から侵略戦争しているだけさ。これが知性のある生物の行動原理だからだよ。お前たちは戦いの場で踊っているだけ。ん~利用されているって表現も有るな。あ、俺の目線だからな」
「本当の目的って・・・」
「権力を持つ者が私腹を肥やすためだよ。まぁ、逆恨みとか? 嫉妬もあると思うけどな」
「だったらどうすれば良いの?」
勇者の質問に答えると、聖女が静かに聞いてきた。
「って言うかさぁ、他に思う事は無いのか? どれだけ脳筋なんだ、お前ら?」
全員が長時間戦い、殺し合う事しか思考出来ない環境の様だったので注意するディバルだ。
「そんな事言ったって・・・」
「じゃさ・・・、女神さまには聞いて駄目だったけど前世に戻る方法は有るのか?」
「でも今更前世には未練無いし、戻る事も出来ないって聞いてたからあきらめてるわ」
聖女が愚痴を言いかけると勇者と魔女が聞いて欲しい内容を口に出してくれたようだ。
「前世に戻してやれる”かもしれない”が、条件が有るぞ」
「「「本当に!!」」」
勇者と女性達が反応した。
「お前たちを召使いにする事がこの場所に来た目的だ」
全員がディバルと名乗る男を見ていた。
均整の整った顔立ちで金髪金眼のエルフ似だが、力の脈動は一切感じられなかった。
むしろ、後ろで控えるスクリーバからは全員を見張るような鋭い眼差しと魔力とは違う力を感じる四人だった。
「召使いって・・・」
「本当に戻れるのか?」
「厳密に言えば、前世のお前たちの肉体は既に無いはずだから、今のお前たちだな」
「「「「・・・」」」」
(えっ、マジかよ。前世より顔がイケメンだし良いかも。モテモテになるかなぁ・・・)
(うそっ、どうしよう筋肉多いかなぁ、もう少し髪長くしようかなぁ・・・)
(やだっ、前世の私よりもスタイルも良いし、モテちゃうかも・・・フフフ)
(・・・ワシはもう未練は無いが、時代が違うのであればゾフィの時代も見てみたいのぉ)
「あのさぁ召使いって何するの? 詳しく教えて欲しいけど・・・」
最後に勇者が食いついた。
☆
戻れる可能性は有るのか?
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