第4話
「よし、今だ!使ってくれ!」
そう言ってくる、さっき会った謎の人物。なんか、ヒカリさんが私と引き合わせたみたいなんだけど……。私のスキルの話を聞いて、使ってみろだなんて本当に何言ってるんだろ、この人。
もう、どうなっても知らないからね。
「は、はい!『狂化』」
スキルを使うと、いつもどおり私のいしきはきえて……。
あれ?消えてない?
な、なんで?ちゃんと考えられる。いや、ふつうのときよりもなんとなくちゃんと考えられてないきがするけど……。
それでも、ふだん狂化をつかったときはかんぜんにいしきなくなるのに……。
「だいじょうぶか?くるぞ!」
その声で私はダークボアのほうをむく。
むかってくるのがわかる。
私はけんを手にとり、いっきにふりぬいた。しっかりと、きったかんしょくがわかる。
なんでかわからないけど、ちゃんとたおせた!!
「なんで?」
「ききたいことはわかる。だけど、ちょっとまて」
むこうの人はさっきとくらべるとすこしだけあほそう?
わたしもそんなかんじのかおしてる?
まぁいいや。たおせたし……。
しばらくして狂化が解けると私の思考もクリアになった。
あの瞬間、スキルを使った瞬間に何かを考えられるあの感覚。
初めての体験の衝撃を受けた。
今、しっかりと戻った頭で考えるとより興奮してくる。
「うん。戻ったな。しかし、ぶっつけ本番だったけどうまくいってよかった」
あっちの人も、私がスキルを使ったときの阿保そうな顔からは元に戻ってる。
けど、本当にどういうことなんだろう……?
「いや、ありがとう。君のおかげで
「え……?え……?こちらこそです。えっと……あなたのスキルですか?さっきのは?」
「あぁ。そうだ。俺のスキルは『
ん?どういうこと……?
この人のパラメータと私のパラメータが平均化されてそれぞれに振り分けられた?
それでどうして、さっきみたいなことになるの?
「君のスキル『
あ、あぁ。なるほど……。
私の賢さがゼロになった瞬間に、私とこの人の賢さの平均値が出されれば、今と同じだけ考えられるわけじゃないけど、思考はできるぐらいの賢さは取り戻せる、と。
「理解できたかな?君のゼロになった賢さを俺が穴埋めした形になったってことだね。ただ、使ってる最中は俺の賢さも減るから、終わった後すぐに説明できなかったんだ。申し訳ない」
「い、いや。そんなことありませんよ。けど、すごいですね。そのスキル。パーティー全員が同じだけの強さになれるんですよね?そんな使えそうなスキルなのに、どうしてソロで高級薬草の採集なんかしてるんですか?」
聞いたことないスキルだから、きっとユニークスキルなんだろうし、今聞いた感じだとパーティーを組んでないと意味なさそう。
別に私のスキルみたいにパーティーメンバーを危険にさらすものでもなさそうだし……。
「いや、俺もクビになったんだよ。今話した通り、俺のスキルの基本は俺を含めたパーティーメンバー全員の指定パラメータを平均化して振り分けるわけ。そうなると、俺のパラメータが低いと、俺のせいでみんなの能力が下がることになるんだよ」
あ、あぁ。そうか。さっきは私の賢さゼロを埋める形になったけど、それはこの人のパラメータの方が私のよりも高かったから。もしもパーティーメンバー全員がこの人よりも強かったら意味がないんだ……。
「最初はよかったんだ。俺も結構鍛えてたし、俺の方が強かった。けど、俺はこれ以外の能力もパラメータをいじるタイプのやつで完全に補助役。そうするとパーティーが魔物と戦っても俺だけほとんどレベルアップしなくなってさ。そのうち、パーティーメンバー全部のパラメータが俺を越えてしまってね……」
それで、クビか……。
なんか、かわいそうだな……。私のスキルみたいに完全に使えないってものでもないのに、自分より弱くなったからって切り捨てられちゃったんだ……。
「いや、俺はしょうがないと思ってるよ。実際、俺のせいでみんなの能力が元よりも下がって戦わなきゃいけないんだったら、俺は足を引っ張ってるだけだからさ」
「け、けど……私はそのあなたのスキルのおかげで助けられました。『狂化』を使った後なのにちゃんと考えられるなんて、思いもしませんでした」
そう。今日出会ったのがこの人じゃなかったら、また私は人を攻撃しちゃってただろう。
今回は、本当に殺しちゃってたかもしれない。そんなことになったら……。
「うん。けど、ヒカリさんは分かってたんじゃない?俺のスキルと君のスキルの相性がいいってこと。だから、俺をここに来るように誘導したんだと思う」
あ、そうか。この人と会えたのってヒカリさんが何かしたからだった。
「そうか。ヒカリさんが……。ずっとクビになってもったいないって言ってくれたんですよ」
「え?君も?俺もだよ。ヒカリさん、俺がしょうがないと思ってるのに、怒ってくれてさ」
「あ、そちらもですか?あの人、本当になんなんでしょうね」
ヒカリさんの顔を思い出して思わず笑ってしまう。
「ああ、そうだ。私ユイって言います。そちらは?」
「あぁ、俺はコウヘイ。よろしく」
うん。いい人そうだ。ちょっと聞いてみようかな?
「で、どうでしょう。コウヘイさん。私とパーティー組みませんか?私たち相性よさそうじゃないですか?」
「え?あ、う、うん。俺は構わないよ。けど、相性って……」
え……?あ、変な意味になっちゃう!
「あ、いや、スキルの相性って意味ですよ!私たちの相性がいいって意味では……いや、そう言うと、パーティーとしてどうなんだ?ん?あれ?」
あー、なんか意味わかんなくなった!
「ははは。分かった分かった。まぁ、ヒカリさんが取り持ってくれた仲ってことで。じゃあ、とりあえず高級薬草と
「はい!そうですね!あ……だけど、向こうの方に私が倒した
コウヘイさんと会って忘れてたけど、向こうに『狂化』で倒したのがたくさんいるはず……。
「そっか。じゃあ、それも回収して街に帰ろうか?で、どっち?」
それから、
「え……?こんなに……?」
驚いてるけどしょうがないじゃん。『狂化』使うとわけわからず斬り殺しちゃってたんだから。というか、私もここまでの数だとは思わなかった。一頭目と出会った瞬間に使っちゃったからな……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヒカリは戻ってきた二人の姿を見て、思わず微笑んでしまう。
あの二人のスキルの相性がいいことは最初から分かっていた。必ず二人が会えばいいパーティーになると信じていた。
だから、パーティーを組むことに躊躇しているようだった二人の背中を押すためにこんな策を弄してみたけれど、うまくいったようだ。
「ヒカリさん!ちゃんと説明しておいてくださいよ!」
ユイが入ってくるなりそんなことをヒカリに訴えている。
ヒカリは笑って受け流す。
「ごめんごめん。でも、うまくいったでしょう?」
ヒカリの笑顔に、ユイとコウヘイの二人はなにも言い返せない。
「まぁ、それはそうですけど……」
ユイのかわいらしい不満げな表情に、ヒカリは笑いをこらえきれない。
「で、部屋の準備はしてくれました?」
コウヘイが、真面目な顔に戻って聞いてくる。
「ええ。もちろん。この部屋を二人に紹介します」
そう言ってヒカリは準備していた部屋の説明書きを見せる。
「えーっと。パーティー用住居、一室二人部屋……って、え?」
「え?って、二人ともパーティー組んだんでしょ?それだったら、一人一部屋借りるより、こっちの方がお得でしょ?」
ヒカリはそう言って微笑む。
「「えーーー!」」
その瞬間、ユイとコウヘイの絶叫にギルド内の全員の視線がカウンターに向かっていた。
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