第116話 書いてくれたまえ。

 オレは望さんに、家まで送ってもらった。手を振ってサヨナラをする。


 あと、別れ間際に『帰り着いたら』メッセージを入れてほしいと、ひと言付け加えた。


 それと『今から書くから』と。返事出来ない理由を言った。


 望さんは『がんばれよ』と笑顔を見せてくれる。別にオレが時間を取れないことに苦情は言わない。


 オレは帰るなり、サッサと風呂を済ませた。時短を考えるなら望さんの家で済ませるのもありだと、今では思う。


 咲乃と書く予定のプロットの青写真的なものは出来つつある。この段階で1度送ろう。


 オレは咲乃のケータイを鳴らす。コール2回で出た。


「しもしも、あなたの咲乃だよ」


 うん、色んな意味で電話切りたい。なんだろコイツの掴みどころのなさは。


 ある時、いや大体はヤンデレ風味のサイコガールなんだが、たまにこんな風に、よくわからんキャラ設定を投げかける。


 ん?意外とキャラとして見るならありかも。人としてはなしだが、話にして登場させたら、味がある。


 少し掘り下げてみよう。


「どうオレの咲乃なんだ?」


「すべてよ、監禁させてくれたら」


 ダメだ『付け加え』られた、文言もんごんが重過ぎる、方面に広げたくない。


「初期プロット送る、そこから話しょう。駄目なら進めても意味ないし。ファイルで送るからパソコンで開いてくれ」


「ん、わかった…キタ―ッ!」


 なんか今日は懐メロな日なのか?メロじゃないか。


「ん?何これ現代ファンタジーするの?書いたことないなぁ、私が書いたことないってことは亮ちゃんもないってことよ?」


 この言葉が意味するところは『オレが書いたやつは全部パクった』という意味だ。


 開き直り早いな。


「ん!ダメ!イメージ湧かない!」


 開始早々咲乃はさじを投げる。そして『ビデオトーク』のお誘いが来た。オレは何も考えずにポップアップを押す。


「おまえ、服着ろよ!」


 オレは浮かび上がる画像の咲乃に叫ぶ。いや、服は着てる。しかしきわどめの『キャミ』だ。高校男子舐めてるだろ。


「え―っ、着てるし。この程度のキャミで叫ぶなら『下』見たら大変よ、見る?」


「み、見ない。それよか―イメージ湧かないって、なんでだよ。初期プロットにかいてるだろ?」


「あ―違うんだな、私の言うところのプロットってさぁ」


「うん」


 ヒソヒソ話がしたいのか、画面に寄ってくる。そんな必要ないのだが顔がアップになるお陰でキャミが見えない。


 こんな時間帯に高校男子を刺激しないでほしい。


「私のプロットは亮ちゃんの『地の文』なんだよ、だから遠慮せずに2話、3話と書いてくれたまえ」


「そしたいい感じに脚色して私色に染め上げるから。?」


 うん、酷いパクリの告白された。








 

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