第99話 起死回生の一撃。

 るかるか。


「何をたくらんでる、何か仕掛ける気なんだろ?」


「『死の天使エンジェル・オブ・デス』✕『冬ノ片隅カタスミ』」


 やっぱし、コイツは天才だわ。起死回生の一撃ちゃんと用意してやがった。


 しかも『ほぼ』他力本願。


 いろんな意味ですごくて、いろんな意味でヤバい。それでもこの企画の衝撃は、破壊力は並じゃない。


 確かに少しくらいはこっそりとアイデアを出してもいいと思っていたが、ここまで乗っかってくるとは想像してなかった。


 いや、むしろやるなら話題性だ。中途半端ではなくライバルががっちりタックを組んでの連載。場合によればお互いに連動企画『if』や『パラレル』ストーリーもありだ。


 しかも、この企画をすることにより『パクリ疑惑』さえもが『演出』だったのでは。そう動きかねない。


 まさに歩く『我田引水がでんいんすい』女子。自分の田んぼに水引きまくりだ。


「手を組むってことか?」


「違うわ。私と亮ちゃんはもしくは『一蓮托生いちれんたくしょう』よ。いいことも悪いことも、運命共同体」


「オレが原案監修をするのか?」


「そうよ、毎回あなたが書いたプロットに私が肉付けするの、どう?


 オレが考えた筋書きを『死天してん』が言語化する。しかも今までみたいな『パクリ』とはまったく違う次元。


 ふたりで協力して、話し合いを重ねて作り上げる。一糸乱れぬ布陣を組める。それは言葉に出来ないほどの魅力を感じる。


「ねぇ、どうかな」


 おまえさ、どうかな?なんて顔してないよ。なんだよその自信に満ちた顔は。なに勝ち誇ってんだ。オレが乗るとでも?


「―乗った」


 それ以外の言葉がある訳ないんだ。コレは最適解だ。これがオレが探していた創作の形になるかも知れない。


「いいのね、決めて」

「何を気にしてる?」

「裏切り者のそしりを亮ちゃんに負わせること、かな」


「なに女子振ってる」

「女子だし」


「サイコパス女子」

「ギリ、ヤンデレよ」


「ヤンデレに謝れ」

「言うわね」


「亮ちゃん、大丈夫なの?ふたりには結構な裏切りよ。だけど言ったけど時間ないわ―私と来る?」


「詩音には一任されてる」


「意外。亮ちゃん『探偵ちゃん』なんだ。ふ―ん『従順じゅうじゅん』が好みなんだね」


「別に、そういう訳じゃ―」

「信頼―してるんでしょ?


「そのにお前も加われ、咲乃」


「あら、これまた意外ね。亮ちゃん―止めとくわ、茶化すの。いいよ、君の筆にも女にも何にでも。それが目的だしね」


「時間ない。『死天してん』と冬ノ片隅カタスミの共同声明出すぞ、お前のとオレの『グチッター』に同じの―」


「共同声明か、いいね。うん、カッコいい」


「咲乃、今までのやり方を変えてほしい。『中の人』発言はしないこと、出来るか?」


「『グチッター』での交流はなしってことね、別にいいよ。広報用ね、了解」


「声明出したら寝るぞ、続きは駅で」


 そう言ってオレは一息着いた。京子のことが浮かばないでもない。きっと当てつけになるだろう。


 だけど、これはオレの転換点なんだ。


 夢を夢のままにしない一歩、そんなのがあるとしたら、これもその一歩なんだ。




















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