第98話 リアル15の夜。

「時間が時間なんでぶっちゃけて聞くけどさ―」


「いいよ、亮ちゃんのこと好きだよ。付き合いたい、むしろ付き合え!」


「ん、時間が時間だから『巻』でお願いしたいんだよな。付き合うとかそんな話してないし、しかも命令形だし」


「命令されるの好きなくせして」


 なんだよ、変なフェチあるみたいに―そうなのかなぁ?


 いや、今はいいわ、そんな自問自答。


「朝までに何か『上げない』とマズイだろ、その新作。出来てんのか?」


「うん、出来てない。だって喋ってたじゃない」


「え―っ、オレのせいなの?『罠』まで教えてあげたのに」


「ちなみにその『罠』の内容教えてよ、どんなの?」


「魔法少女」


「なにそれ、書きそう!引っかかって書きそう、私!―引っかかった私、ウケる」


 だいぶ遅い。


 徹夜まではいかないが『徹夜ハイ』が含まれつつある。


 下手するともうすぐ『ウェイ系』になるかも知れん、オレも含めて。


「何話書けてんの、ぶっちゃけ?」


「亮ちゃん『ぶっちゃけ』好きね、なの?ウケる!」


 酒、飲んでないよな?そのカップ、コーヒーよな?ちょっとテンションおかしいよ?


「発表します!ダン!プロット2枚書けました!しかも中身スカスカですが、なにか?『何か』って何よね!」


 何かツボったみたいだ、笑えないよ。確か咲乃の原稿通常アップ時間は朝の6時。


 3時間切ってる。


 プロット出来てて、連載開始後何話も書いてるなら2時間あればオレでも1話は書ける。


 咲乃ならその半分でも行けるか。だけと、気になる『スカスカのプロット』って部分。


 設定とか全然なのか?頭の中では出来てるとか―


「亮ちゃんここは私を嫁に貰ってだね、新婚旅行を理由に『初回』出せなかった言い訳にさせてよ」


「そんな言い訳で結婚できるか、何よりもオレ16歳な?結婚出来んから」


「大丈夫だって、私なんか15だよ!リアル15の夜だよ!ウケる!」


 何かどうリアルなんだ!ダメだコイツは完全に新作諦めてる。あと裁判とか大丈夫か、今のヤツ?


 確かに別に無名な書き手が『新作出す出すサギ』をしても、別に構わないだろうけどさ「死の天使エンジェル・オブ・デス」だ。


 言うなら『看板』がデカ過ぎる。出せないにしてもそれなりの言い訳がいる。


「出せるには出せるよ、意味不『エピローグ』それ出しといて1日稼ぐかなぁってとこ。その間に考えるかだけど―まったく浮ばん」


 こういう時はっきり言って『かす』のは逆効果だ。


 咲乃がどんな方法で今までの書いてきたか知らないけど、アレだけのモノを書ける書き手なんだ。


 何か『はまれ』ば爆発的にイケるはず。


「時間が時間だから逆にこっちから聞くけどさ、亮ちゃん。私のこと本気で助ける気ある?」


「冷やかしじゃないのわかってるけどさぁ、自分でも言ったよね『裏切り行為』だって」


「あのふたりに何も言わないで。相談しないでいいの?相談いるなら、私タイムオーバーだわ」


 一瞬で本気の顔を作る咲乃。


 これが「死の天使エンジェル・オブ・デス」の本気モードなのか。


 後はオレがるかるか。




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