第84話 ヌルくなったポカリ。
謝らないと始まらない。誰も京子との仲を終わらせたいとは思ってない。
京子だって意地を張って謝らないんじゃない。謝れないでいるだけ。
それでも、謝らないと。オレはそれを言いたかったんだ。
「いや、ないわ〜あの場面でさ『京子、詩音に謝んないとダメだ』ってわかってるって!」
なんだよ『リアル喉元過ぎたら熱さを忘れる、ナウ』だよ。
すったもんだもありながら『オレが背中を押した』ことがきっかけで京子は詩音に謝罪。
詩音は言いたいこともあるだろうけど、我慢して許した。
これって、あきらかにオレの『口添え』ありきだよな。それを何、ほっとしたらイジるとか。人としてどうなんだ?
「謝ったけどさ、詩音には思うよ『ごめん』って、でもさ亮ちゃんなんかした?いや、私謝りながらもさ『そこカノジョの肩持とうよ』って思ったわ」
何これ、ケンカ終わってホッとしてるのわかるけどさ突然の『イジリ』とか。突然の『ダメ出し』とか。
オレだって『2度と顔見たくない』って言われた口だよ。アレだよね、これさ今オレが我慢してるの詩音が、ようやく笑ったからだよ。
京子ってたまに『どっちかを上げる』ために『どっちか下げる』よな『シーソー』かよ。
まぁ、いいや。でもオレも高校生男子なんだよ。ご機嫌も斜めになる。
オレはここに来る前に買っておいた今日2本目のポカリを片手に部屋を出る。
「亮くん、どうしたの」
詩音は勘がいい、いや京子が悪いだけ。オレの顔色を見る。詩音に心配掛けたいわけじゃない、立ち止まって笑顔を作る。
『ちょっとトイレ』
それ以上は振り向かないけど、詩音の心配した顔が
階段を降りながら思う。この感情はなんだろ。詩音と京子の友情に対しての嫉妬?
違うよなぁ。しっくりこない。かといって、どっちかに対しての独占欲とかとも違う。
まぁ、今のは京子のオレに対する不当な扱いにオレはムッとしただけ。子供なんだろ、オレが。
そう子供なオレはヌルくなったポカリを手のうちでポンポンとはねさせながら、外の空気を吸いたくなった。
扉を開けるとガッツンとした感触。ん?ゆっくり覗くと黒い影が―
「なんか、ゴメンね。全然考えもしてなかった」
「いえっ、自分もぼ―っとしてて。スミマセン、あのいいんですか、ポカリ」
「いいよ、ヌルいけど」
「自分ヌルい方が好きッス」
京子の部屋から飛び出した、そんなに勢いよくは飛び出さなかったか。
まぁ、空気変えたくて出てきた。外に出ようとして扉を開くと外にいたこのスポーツ女子の頭部に扉が刺さった。
扉の前では家のカギをカバンから掘り出している最中でしゃがんでいたのだ。
そして今は2度目の公園のベンチ。
―ということは…
「あっ、自分。
すっと立ち上がって頭を下げる。まぁ、そうなるわな。京子の妹だよな。オレは驚きと戸惑いで京子に対する怒りをどっかに落としてしまった、
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