第47話 詩音の作戦。

『きゃあっ』


 言っちゃった的な反応だ。


 詩音は手のひらで顔を隠してモゾモゾして恥ずかしがっている。


『呆れるほど『デレ』なの』


 その自分の発言に対してなのだが、重大告知風なので水は差さないけど『知ってる』と肩を叩きたい。


 そして『何を今更』とも付け加えよう。


「亮くんは私がしたことに気が付いたらほっとけない。でもプライドの高い私は差し出してくれた、差し伸べられた手を取らない。きっと罵声と共に払いのける」


「ここまでは佐々木咲乃の計算。でもそうならないのが私。」


「そうなの?」


「そうよ。私こう見えて乙女なの打たれ弱いの。亮くんと別れた日から、まぁ自分で工作したんだけどね。毎晩泣いて過ごしたわけよ。大袈裟じゃなくてそれで今日の亮くんのトドメ」


「あれは―」

「いいの。いい聞いて」


「絶望してたのは、ボロボロだったのは亮くんだけじゃなくて私も。そんなところに手を差し伸べられて、私プライドなんかどうでもよくて。差し伸べられた手を、ただただ握り返したくて。握りたい、握らせてよ。亮くん――」


「いいよ」


『浮気者―――』


「えっ?」


 何この地獄の底からのうめき声みたいなドスの効いた声。


 しかも何か聞き覚えある。いや、ないだろ


「浮気者!!」

「うわっ!」


 スマホ画面いっぱいに限界ギリギリまでよった京子の咆哮ほうこう


 えっ、なに?何が起きた。何故に詩音の部屋に京子が!?


「浮気者、浮気者、浮気者、浮気者!あっ、信じた私がバカだった!何?何なの今の?えっ私以外でもよろしくやっちゃってる系ですか?そうですか、へ―っ、わかりました。殺す!真綿で糸巻き巻きして簀巻すまきにして美味しく頂く!」


簀巻すまきとなますごっちゃにしないの」


 詩音は呑気に湯呑であったかいお茶を啜ってる。


 えっ何で一緒にいるの?詩音のお部屋に。


「信じらんない夕方のラブモードどこいったの!自転車で来たよね、亮介!」


 罵倒された。やな気分じゃない。むしろもうちょっと罵倒されたい。


「あんた、なにええ感じの顔しとん!うちマジでゆーてんねんで!しばいたろか!」


 あぁ、なんかいい。いいんだけどやっぱり気になる何で同じ部屋にいる?


「もう遅いんだから静かにしないと家族起きてくるよ京子」


「京子いうな、何よりいきなり押しかけてきて着替えまで用意して、アレね?これ見せつけるためにやったのね」


「京ちゃんの部屋に詩音がいるの?」


「はぁ?いまった?呼び捨てなんや。裏でヨリ戻してたんやな!殺す」


 近い、近い、近い!スマホ迫力ありすぎだろ。どうすんだよ、これ。と思いながら説明する手間が省けた気もした。


 あれ?これあれだ。詩音の作戦だ。間違いないわ。



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