第46話 策士詩音。
「なにメソメソしてんの」
言い放つように詩音は言うが自分だって泣いてるじゃないか。
「泣いてない」
なんでそこ断定する必要あるんだろ。よくわからんが泣くと意外や意外。スッキリするもんだ。
「亮くんでいいかな。呼び方昔みたいな呼び方はちょっとだし『さま』付けも疲れるし。あとお嬢様キャラも疲れるし、飽きたからやめるけど、文句ある?」
やめるのはいい。呼び方も何だっていい。だがなぜに『半ギレ』なんだ。
反抗期か?そんなのはお父さんにしてくれ。
「学園のアイドルは?」
「あ―っ面倒くさいよ。なんであんなことしちゃったかなぁ。あっ亮くんのせいだわ。劇的な再会とか考えたから」
それってオレのせいなんだ。
そうなんだそうですか、以後同じことがないように重々きをつけないとね。
「これは考えにないかも―」
詩音はそう呟いて黙り込んだ。
自分の思考に没入した感じたんだ。何が考えにないのか。その辺は『佐々木咲乃』以外にない。
「亮くん、私の印象上げて。早くして、箇条書きで前のじゃなくて今の印象、早く!」
そんなこと急に言い出した。思いついたこと言えばいいのか。
「しっかりしてる。気が強い。芯が通ってる。思いやりがある。考えが深い。プライドが高い。引かない。意見を聞かない。やさしいところがある。でも不器用。恥ずかしがり屋。」
「かわいいが抜けてる」
何か要求された。
「今のキーワードをまとめると『かわいいけど、気が強くてプライドが高いから人の言うことは聞かない。一度決めたら引かない、不器用だから軌道修正出来ない。』みたいな感じか…」
かわいいはオレ言ってないんだけどなぁ。まぁ、別にいいっけどさぁ。
そもそもこれってなんか意味あんだろうか?よくわからん。
「つまりね、亮くんを私にぶつけたか佐々木咲乃が柚原詩音になにを求めているか、『役割』『効果』『効率』そんなことをまとめたかったの」
「佐々木が詩音にオレをぶつける」
「そうよ。誘導してる亮くんを誘導して私に連絡を取らせる。取らせた結果――ここからは亮くんの私に対しての印象から導いた結果――」
オレは生唾を飲まこんだ。
「亮くんは自分がズタボロのクセに私に手を差し伸べたる。『かわいくてプライドの高い』私は亮くんの手を払いのける――」
「更にズタボロになった亮くんは――つまりはここが狙いか」
「ここってズタボロにすること?」
「それはそんなんだ。だけど今回の目的は手段。私が亮くんの手を、差し伸べてくれた手を私に払いのけさせることが目的――っていうか私が亮くんを拒否るって既定路線にしてる」
「ココ決めつけてるのね。じゃあ『ココ』の詰めが甘い思い込みで溢れてる、つまりは柔らかい脇腹に該当するのよ」
詩音はニヤリとまだ乾ききらない頬を緩めて笑う。
「つまりは私達が手に手を取り合うことは想定してない。プライドの高い私と押しの弱い亮くんならその答えは簡単に出る」
「でもこれって大事なこと忘れてるの、私って――」
「詩音って――」
「呆れるほど『デレ』なの」
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