第16話 このタイミングかよ!

 アンチなんて何処にでもいる。小説投稿サイトにも、グチッターにも。ただグチッターの『小説界隈』では少ない気がする。そして学校にも。


「振られて『』で手打つとか!」


 なんでこのたぐいの連中は聞こえるように言うかな?噂、陰口別にいいけど、家で仲間内で言えばいいだろ?


 反応見て楽しんでるんだ、そうですか。楽しめるかなぁ、実際。


 オレは立ち止まると直ぐに京子が顔を覗き込んでは、

「いいから、ね?行こうよ」


「いくない」いつぞやの京子の謎関西弁を真似する、たぶん違う。


 声の主は男子3人。オレが近寄ってもヘラヘラしてる。


で手を打ったんだよ、―」


「亮介くん、何やってんの?」


 凄んでるところ、あっ自分なりにね。不意に声を掛けられた男子の声、よく知ってる声だ。


「―公人きみとくん、なにランニング?」


「そうそう、公立『ボクシング部』ないから陸上部。亮介くん走り込んでる?」


「朝晩ちょっとかな、鈍らない程度。会長元気?」


「元気だけど『ねえちゃん説得してさっさと戻れ』って伝言。亮介くん、誰?」


「あぁ、なんか人の彼女バカにするから、って」


「あっ亮介くん、会長に言いつけたる!ボクシングは喧嘩の道具じゃありませんって怒られろ」


「あっ、やめて。ごめん。―あっ、それよか紹介しとくよ。あっお前ら逃げんなよ」


 3人のことはどうでもよくなった。途中から全然目合わさないし。じゃあ最初から止めとけばいいのに。


「京子〜紹介しとくわ。公人きみとくん。親友」

「あっ、北町京子です」


「亮介くん、呼び捨て?亭主関白?すげーな、あっ、公人きみとです。よろしく」


「あっ、駄目じゃん亮介。京ちゃんに紹介したら。品位が落ちる」


 京順が頭をボリボリ掻きながら現れた朝練の帰りだ。あっ、京順はバスケ部な。


「京くんさ、品位語るなら鏡見てからにしてよ、あっ京ちゃん大丈夫?『京』被ってるけど嫌ならコイツ改名させるわ――とりあえずお前今日から軽巡けいじゅんな?よかったな、名前だけかっこいいわ」

「はっ、お前なんだよふざけんな」




「びっくりしたよ、私」


 昼休み屋上。京順は体育館でフリーシュートの練習に行った。バスケには真面目なんだよ。


「何が?」

「いや、ね。亮介意外に『男々おとこおとこ』してんだなぁって」


「何それ?どこが」

「だって、朝なんか相手3人に。それに友達結構『男』だから」


「男だからって、意味わからんけど、なぜか伝わる」

「何か亮介と付き合わないと知合わないよ、あのふたりとは」


「そうかもな、あいつらもそうだよ京子とは。きっと何喋っていいかわからんと思うよ」


 オレは目を細めて春の陽射しの中『ろう系』の初回発表を忘れてるフリをした。夜準備して明日でもいい。


 オレはパックのコーヒー『俺オレー』を飲み干しながら京子の手にそっと手を重ねた。


「亮介さま〜〜っ」


 間延びした聞き覚えがあって、聞きたくない声。柚原詩音――


「亮介ぇ、私人生で初めてかも『!』って思った」


 京子はご立腹だ。














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