学園のアイドルと付き合ってたオレが捨てられて地味系女子と平穏な日々を手に入れたのだが。

アサガキタ

地味系女子との出逢い。

第1話 くすん、捨てられた。

「―詩音しおんちゃん〜!なんで言っちゃうかな!?」


「だって、だって、だって!ですの。詩音、亮介さまをお慕したいしておりまして!」


「いやいやいやいや、待ってね!はい、うるうるしない!『うるうる』させたの見られたら!!男子生徒連合に遺棄される〜!!」


「―でもですよ、校内放送のインタビューで『お付き合いしてる人いますか?』ってたずねられたの。ご存知のとおりわたくしウソ付けませんの。自分にも欲望にも正直系女子!」


「―で?」

「言っちゃった、!」


「ノ〜〜〜っ!!」


 そんな訳でいきなり死地に追い込まれた、オレ!


 しかも、オレ!なぜか学園のアイドルの肉体を欲望のまま蹂躙じゅうりんし尽した鬼畜きちく系男子設定―


 噂に背びれ、尾びれ、エラまで付いた。マジピンチなオレ、冬坂とうさか亮介りょうすけ


 享年16歳、南無。


 ここは屋上へと続く階段。落ち武者狩りの様相ようそうていしてきた校内。


 隣では小さく震える小動物の様な表情の可憐かれんな美少女にして学園のアイドル。


 柚原ゆずはら詩音しおん


 ボディーは『バン!』『キュ』『ボン!』の超攻撃的布陣!!


 その上唇は『ぷるん!ぷるん!』だ!


 そうだ!捕らえられてさらし首になる前に噂どおり美少女を蹂躙じゅうりんしよう!


 このな『頂きに』オレの橋頭堡きょうとうほを打ち立てようじゃないか!


 そして色んな意味で天に召されよう…


 そん訳でベルト外して…


「亮介さま、そのここで?」


「うん、死ぬ前に思いを遂げて旅立ちたいんだ、いい?」


「亮介さま、わたくしは元より全てを捧げるつもりですわ、はじまりが『青姦』でもお慕いする気持ちは変わりません!」


「その心意気や、よし。めくるめく官能の日々へ行こう!」


「おーっ!」


「おい、何か「『おーっ!』って聞こえたぞ!」


「ヤバい、勘付かれたか。せめて『先っちょ』だけでも…」


「亮介さま『先っちょ』と言わず一気に奥まで!もう我慢出来ませんのよ!!」


「あのさ、そんなセリフ言いながらしか出来ないの、ネトゲーって?」


「ん、いや、まぁ臨場りんじょう感的にな、だよな、詩音ちゃん?」


「そうですわ『先っちょ』だけじゃこのボスキャラ倒せません。奥までしっかり攻撃しないとですわ」


「お前ら馬鹿なのな」


 そう毒を吐くのは薬師寺やくしじ京順けいじゅん。パターン的に悪友だ。


「お困りですよね、おふたりさん。1個で逃せますが?」


京順きょうじゅんさま、わたくしは亮介さまと『果てるまで』ここを動きませんわ」


詩音しおん氏、天然エロ発言だが要約するとゲームの『ライフ』切れるまで辞めねえぜ、だよな?」


「ゲームじゃないですぅ、亮介さまと紡ぐ『も・の・が・た・り』ですわ。物語と書いてストーリー!」


「亮介、この子面倒くさくないの?」


「ん?だって身体エロいし」


「もう、ホントのこと!見たことないくせして〜ぽっ」


「お前ら逃げたくないならいいけど、そろそろ『リアル死にゲー』なんだが?」 


 男子生徒連合の軍勢はついにこの階段周辺まで押し寄せようとしていた。


 万事休す。その時立ち上がる姿がひとつ。詩音…


「詩音…ちゃん?」


 なんの脈絡もなく、突然その時は来た。 


「亮介さま。ごめんなさい。わたし逃亡生活に疲れましたの。私が求めたのは平穏で穏やかな日々。今までほんとうに楽しかった。さようなら。また、いつか来世で」


 詩音は振り向きもせずにもう1度「さようなら」そう言って去っていった。


「えっとこれは?」

、お別れしましょ、ね?」


「え―っ!?今の捨てられた感じなの、京順!」


 京順は頷く。


 そして男子生徒連合に居場所をチクられたオレは、はじめて人の裏切りを知った。


 嘘のようなモノホンの別れ話だ。いや、振られ話か?


 それから2週間。陰口罵詈雑言に耐える日々だ。


 振られ男の末路。しかも相手は学園のアイドル。学校という世界すべてが『アンチ』に染まる…


 救いは悪友京順の態度が変わらないこと、それだけ。


 そして…


「きゃあ」


 小さな叫び声。 


 その先にはセミロングの少女。階段の踊り場手前で春のいたずらに舞い込んだ風。


 抑えたスカート隠しきれない黒の下着。


「み、みえた!?」


 階建の上なのに上目遣いで恥じらう少女。


 そしてオレは…


「黒色のぱんつ」


 そう、呟いた。止まったかに見えた歯車が転がりはじめた。





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