桜色ヴォヤージュ
和団子
1 ルーティーン
「それは……とある秋雨の日の、バカのお話――
◯◯◯
【1 ルーティーン】
僕は
今日も7時15分に起床。まずはひとつ背伸びして眠気を飛ばし、肩甲骨を時計回りに10回まわす。それから顔を洗って歯を磨き……おっと、まずは下の左奥歯からだった。まだ眠気が取れてないみたい。こんな時はさらに肩甲骨を10回まわしてやるのさ。
歯磨きを終えるとリビングのテレビを着ける。ニュースはもちろん毎朝同じチャンネル。ちょうど天気予報のタイミングだから、雨が降りそうならここで傘を用意するんだ。でも、今日は晴れみたいだから、このまま母さんが用意してくれたスクランブルエッグを食べよう。ひと口目は牛乳から。
7時40分に制服に着替える。左腕から袖を通し、シャツのボタンは首もとまで締める。そして50分まで時間を潰して、いよいよ登校だ。最寄りの駅まで歩いて10分弱。8時1分発の電車に乗るには、これでちょうど良いんだ。乗る車両は4号車の3番ドア。乗客は毎朝まちまちだから座れる日もあるけれど、基本は立ちっぱなし。でもたったの17分の辛抱だ。
え、しんどい? ルーティーンに縛られて? それは間違いだよ。縛られてるんじゃない。僕がルーティーンを利用して縛ってるのさ。計画して、予め決めていれば悩む時間も省略できる。人生は有限だし、僕みたいな受験生は時間との戦いだしね。
電車では英単語帳を5ページ分読む。毎日5P……ページのペースだと、2ヶ月で1周できるから繰り返しの復習にもなるし、来年1月の受験の時にはちょうど10周している計算になる。これも毎日欠かせない大切なルーティーンさ。
それに、ルーティーンをこなすことでエンジンもかかりやすい。今日も頑張れるぞ! ってね。反対に、サボると調子が出ないんだ。右足から靴下を履いた日とか、パジャマのボタンを下から留めた次の日とか。こないだは英単語帳を忘れたせいで、体育のサッカーで足を
駅に着くとすぐに改札は出ないで、プラットフォームにある売店でその日のミルクティーを買う。学食には置いてないお気に入りのパックジュースなんだ。近くのコンビニにはあるけど、休み時間は他にもやりたいことがあるからね。降りるころには151円はあらかじめ財布から出しておくのがポイント。小銭が無ければ、前日に崩してちゃんと用意しておくこともポイントなんだ。
よし、今日も時間を通り。
改札を出て南口の階段を登ったら、校門はもうすぐ。
でも、その日は、ちょっとしたハプニングがあったの――
その南口の階段でね、たぶん同じ学校の生徒だと思う。同じ制服だったから。電車には他にもサラリーマンとかたくさん乗ってるけど、この駅は小さくて、その日も学校の生徒である僕と君しか階段にいなかったんだ。
だから! だから、不可抗力というか……ごめんごめん、だからね……ミルクティーを買ってる間、僕がその階段を登るころにはその子は階段をもう登ってて……見えちゃったんだよ、パンツが、階段の下から……さ。
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