航海

こあ

航海

 曇天の空、お先真っ暗。


 波に揺られて網を上げるも、穴が空いてちゃ獲物もかからない。

 電球も瞬きしてる。

 魚影探知機は無口に座り込み、羅針盤は一人暴れてる。


 漂うばかりでじっと立ち、足を取られて転ぶ。

 怒り、悲しみ、泣き泣き。

 冷たく厳しい潮風と水飛沫に頭と肝を冷やされる。

 お袋も親父も、俺の船出を誇らしく思ったんだろうか。

 思い出されるのは港に佇む二人の小さな姿ばかりで顔も忘れてしまった。

 この四畳半ほどの船は、もうスクリューが回らない。


 でも。それでも。


 この船に、でっっっかい鯨を乗せることを夢見てるんだなぁ。

 

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航海 こあ @Giliew-Gnal

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